環境問題に対する意識の高まりから,排ガスを出さない電動車両の普及が進められている.なかでもリチウムイオン電池を搭載した電気自動車は有力候補の一つであるが,普及の課題の一つとしてリチウムイオン電池の劣化による航続距離の低下が挙げられる.リチウムイオン電池の性能(容量,出力)は充放電を繰り返すことによって起こるサイクル劣化と電池を使用しなくても起こる保存劣化がある.車両では走行期間より駐車期間の方が長い場合が多く,駐車中の電池の性能低下(保存劣化)抑制による寿命の向上は重要な課題である.
リチウムイオン電池の保存劣化の原因としては,電解液の分解等の副反応により充放電に関与できる電気化学的に活性なリチウム(有効リチウム)の消費が知られている.これは主に電池を高SOC(State of Charge)で保存している場合に進行する.一方,正極活物質にスピネル型マンガン酸リチウム(Li1-xMn2O4)が使用されている場合,電解液中にマンガンが溶出する劣化が知られている.これは主に高温(約45°C以上),低SOC(x = 0.1 ~ 0.4)で保存している場合に進行する.劣化しやすいSOCが異なる2つの劣化要因の影響を正確に把握することが電池の耐久性を向上するために重要である.
近年,出力と価格のメリットから,正極活物質にスピネル型マンガン酸リチウムと層状岩塩型酸化物の混合正極を用いたリチウムイオン電池が実用化されている.しかし,混合正極のリチウムイオン電池の保存試験の実施例は少なく,さらに電解液の分解と正極からのマンガン溶出を同時に議論した例はほとんどない.本研究では,スピネル型マンガン酸リチウムと層状岩塩型酸化物の混合正極リチウムイオン電池について保存試験を実施し,充放電曲線を微分して得られるdV/dQ曲線の解析により,試験温度とSOCが電解液の分解と正極からのマンガン溶出に及ぼす影響を調査した.
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