JARI Research Journal
Online ISSN : 2759-4602
2015 巻, 6 号
JARI Research Journal 2015年6月号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
研究速報
  • 田中 睦美, 佐々木 左宇介, 伊藤 剛
    原稿種別: 研究速報
    2015 年2015 巻6 号 論文ID: JRJ20150601
    発行日: 2015年
    公開日: 2025/12/11
    研究報告書・技術報告書 フリー
    自動車排気ガスの健康影響はこれまで動物曝露実験を中心に評価されてきた.この手法では生体への影響を直接評価できるため,重要かつ説得力のある情報を得ることができる.しかしながら,多大な費用と時間がかかること,実験動物使用に関する倫理的な問題などから,動物曝露実験は欧州を中心に減少傾向にある.  このような背景の中,「試験管内で」を語源とするin vitro試験に対する関心が高まってきている.健康影響評価のin vitro試験では培養細胞を使用することが多いが,細胞単位の評価となり,得られた結果をヒトの健康影響に直接反映させることは困難である.しかしながら,その簡便性により,化学物質などの安全性,有害性評価には優れた試験法として認識されており,様々な分野で適用されつつある.したがって,in vitro評価法は排気ガスの影響評価においても,有効なスクリーニング法として期待されている.  排気ガスは主に呼吸により体内に取り込まれる.そのため,排気ガスの健康影響に関する報告では,最初の標的器官である呼吸器(鼻,気管,気管支,肺など)への影響に関するものが多く占めている. in vitroでの曝露評価においても,ヒト呼吸器系細胞(特に上皮細胞)を使用したものが多い.呼吸器系上皮細胞は呼吸器表面を構成する細胞であり,外気と接触している.そのため,呼吸により取り込まれた排気ガスは上皮細胞に直接影響を与えると考えられる.これまでのin vitroでの曝露評価には液体培地に評価物質を添加する方法が取られていたが,生体により近い環境を提供可能な気液界面培養下での細胞曝露評価が近年増加している.  気液界面培養とはセルカルチャーインサートの多孔メンブレン上に細胞を播種し,上側を気相とし,下側よりメンブレンを介して培地を供給する培養法であり,呼吸器系や皮膚,角膜など,外気と接触している器官の細胞などに活用されている(Fig. 1).培養と同時に,気相を介しての曝露が可能であり,ガス成分や揮発性物質,粒子状物質の細胞曝露に適していると考えられる.CULTEXRなどの気液界面培養を活用したin vitro細胞曝露装置も開発されており(Fig. 2),それらを活用した有害性評価の報告数も増加している.  しかし,ここで留意しなければいけない点は曝露時の気相の湿度である.通常,ヒトが自然呼吸する場合,吸入された空気は上部気道を通過していくうちに気道粘膜から加湿され,気道分岐付近では相対湿度100%になる.したがって,曝露時の気相の湿度が低い場合は,乾燥による時間依存性の細胞傷害が生じ,評価物質に有害性がない場合でも見かけ上,有害性があるように見誤ってしまう可能性がある.実際に,気液界面培養下での細胞曝露試験では2時間以内の短時間曝露のものが多くみられるが,この乾燥による細胞傷害の限界を考慮しているのかもしれない.一方,評価物質によっては,長時間の曝露評価が重要になると考えられる.しかしながら,上記のような細胞表面の乾燥が課題となり,長時間の曝露評価法はいまだ確立されていない現状である.   そこで本研究の目的は,気液界面培養下での細胞への長時間での曝露を実現するための乾燥対策として,1)水分を直接細胞に供給可能な,組織培養用コラーゲンゲル培地上での細胞培養,2)試料ガスの加湿,を実施した.上記の乾燥対策を施すことにより,in vitro細胞曝露装置において培養細胞を安定して維持可能であるかを観察し,乾燥対策の有効性を検討した.
  • 橋正 好行, 沼田 智昭, 大徳 浩志
    原稿種別: 研究速報
    2015 年2015 巻6 号 論文ID: JRJ20150602
    発行日: 2015年
    公開日: 2025/12/11
    研究報告書・技術報告書 フリー
    エネルギー供給の安定化や地球環境保全などの課題解決に向けて,水素を利活用する「水素社会」の実現を目指すことがエネルギー基本計画(2014年4月閣議決定)で示された.固体高分子形燃料電池は水素エネルギー利用の重要なアプリケーションの一つであり,我が国では家庭用は2009年に,自動車用は2014年に,各々世界に先駆けて商用化,市販化を実現している.今後の燃料電池自動車の一層の普及には,燃料電池スタックの大幅な低コスト化,ロバスト性向上が必要であり,そのためには燃料電池材料の性能と耐久性を大幅に向上させる新規材料開発が重要である.  特性向上が求められている電解質膜材料についてはフッ素系の膜が標準的に使用され改良も進んでいるが,非フッ素系の高分子膜についても種類や構造の多様性を生かした機能設計による高性能化に向けた研究開発が行われている.ここでは,芳香族炭化水素をスルホン化処理して作製したスルホン化ポリエーテルスルホン(Sulfonated Poly Ether Sulfone(SPES))膜から触媒層つき電解質膜(Catalyst Coated Membrane)(SPES膜CCM)を作製し,フッ素系電解質膜ナフィオン(Nafion211)で作製したCCM(Nafion膜CCM)と比較することで,SPES膜の性能の位置づけと開発課題を調査したので報告する.
  • 前田 清隆, 山崎 浩嗣, 田村 陽介
    原稿種別: 研究速報
    2015 年2015 巻6 号 論文ID: JRJ20150603
    発行日: 2015年
    公開日: 2025/12/11
    研究報告書・技術報告書 フリー
    既存のガソリン車よりもエネルギー効率に優れる燃料電池自動車(以下,FCEVという)は,2014年に世界初の量産車が市販され,今後,他メーカーからも発売される予定である.通常,FCEVは,衝突事故による衝撃や水素漏洩を検知すると,水素容器からの水素の供給を停止する構造になっている.しかし,本研究では仮に故障が生じて水素が連続的に漏洩した事故シナリオを考えてみる.  このような場合に水素の漏洩を認識するため の方法としては,水素漏れ検知器があるが,必 ずしも傍にあるとは限らない.そのため,人間の五感の一つである聴覚によって,水素漏洩音の認知により危険性を判断できれば,有力な情報源となる.しかし,気体の漏洩音に関する研究は,空気のノズルからの噴流音のみであり,水素では行われていない.  そこで本研究では,人の聴覚によって安全に救助活動を行う手法を検討するために,水素漏洩車両からの水素漏洩音の特性および交通騒音環境下での水素漏洩音の弁別閾値の流量と車両からの距離の関係を調査する.  実際に街中の交差点で車両から水素を漏洩させて聴取実験を行うことは,騒音レベルが絶えず変化していることから,一定の騒音レベルでの評価が困難であり再現性が悪い.そこで,交通騒音環境下でFCEVから水素が漏洩した状況を再現するために,1) 交通騒音を録音し,2) 無響室内で安全な水素漏洩音代替ガスを漏洩させると同時に,1)で録音した騒音を再生させて聴取実験を行う.配管単体における水素漏洩音の代替ガスとしてはヘリウムが最も水素の音響特性に近いことが著者らの報告によって明らかにされていることから,水素漏洩音の代替ガスとしてヘリウムを用いた.  本報では,車両からの水素漏洩音の特性から漏洩音を聞き取りやすくするための方法について考察するとともに,無響室で聴取実験を行うために,水素漏洩音の騒音レベルと等価となるヘリウムの流量の関係および車両からのヘリウム漏洩音の水素漏洩音に対する妥当性を調査した.
  • -交通安全学習状況下における観察調査-
    大谷 亮, 橋本 博, 小林 隆, 平尾 保
    原稿種別: 研究速報
    2015 年2015 巻6 号 論文ID: JRJ20150604
    発行日: 2015年
    公開日: 2025/12/11
    研究報告書・技術報告書 フリー
    日本では他の先進国に比べて,人口構成率に対する65歳以上の高齢者の交通事故死者数の割合が高く,特に,歩行中の死者が多い現状である.このような状況の中,第9次交通安全基本計画(平成23 年度から27 年度までの5年間に講ずべき交通安全に関する施策の大綱)には,道路交通安全対策の3つの視点が示されており,「高齢者及び子どもの安全確保」が明記され,これらの人員を対象にした交通安全の取り組みが各所で実施されている.  茨城県警察本部交通部は,高齢者の交通事故低減方策の一つとして,茨城県下の交通安全関係諸団体の協力のもと,平成25年度よりシルバー歩行者・自転車セミナーを開催している.本セミナーは,65歳以上の高齢者を対象にして,安全な道路横断方法や自転車の乗り方などを再確認することを目的とした体験型の学習を主とした内容となっており,茨城県下の自動車教習所内において実施されている.また,一部のセミナーでは,講習に参加した何人かの高齢者に,自動車教習所内に設置した見通しの悪い箇所を日常と同様の方法で横断するように求め,その行動をビデオに記録し(観察データ),講習の最後に参加者全員に示し,各横断事例の良い点と不適切な点を解説する教育手法を導入している(以下,「フィードバック法」という).フィードバック法はミラーリング法の一種として位置づけられ,自他の実際の行動を観察して自らの行動を再認識するための手法である.  このフィードバック法では,教育担当者や他の参加者が存在する学習状況下で高齢者に横断を求めており,いわゆる見物効果が生じ,最適な行動を示そうとする動機づけが働くものと推察される.したがって,フィードバック法の中で取得した歩行行動を分析することで,高齢者自身が認識している最適な行動や,高齢者が理解していない,もしくは遂行できない行動を把握することができると考えられる.  本研究では,フィードバック法による学習状況下で取得した観察データを解析することで,高齢者の横断行動の特徴を把握するとともに,得られた結果から,高齢歩行者対象の交通安全教育について考察する.
技術資料
  • 田中 睦美, 佐々木 左宇介
    原稿種別: 技術資料
    2015 年2015 巻6 号 論文ID: JRJ20150605
    発行日: 2015年
    公開日: 2025/12/11
    研究報告書・技術報告書 フリー
    近年,自動車排気ガスを含む大気汚染物質の健康影響評価において,培養細胞を用いたin vitro評価系への関心が高まってきている.自動車排気ガスは主に呼吸によって体内に取り込まれるため,その最初の標的器官は鼻腔,気管,肺などの呼吸器である.また,呼吸器は外気と接触している器官であるため,気液界面培養された呼吸器系細胞を使用した曝露評価の報告が近年増加している.一方,気液界面培養を活用したin vitro細胞曝露装置に関しても,技術開発・改良が欧米を中心に進んでいる.  CULTEXR装置はドイツのFraunhofer InstituteのDr. Aufderheideらにより開発されたin vitro細胞曝露装置である.培養細胞へのガス状物質の曝露に適したシステムであり,ディーゼル排気,タバコ煙など,浮遊粒子およびガス成分の培養細胞への曝露方法として数多くの研究で使用されている.この装置はドイツのCULTEX Laboratories社から市販されており,また,同じタイプの装置がドイツのVITROCELL SYSTEMS社からも市販されている.よって,入手・導入が容易であることが利点である.  これまでCULTEXR装置は加湿不要の細胞曝露法として報告されている.しかし,実際にこの装置を使用して培養細胞に乾燥空気を送気した場合,その有害性に関係なく細胞傷害が生じる.実際の生体において,吸気は気道で速やかに加湿される4).また,気液界面培養での細胞曝露に関するいくつかの研究では加湿装置を用いて湿度条件が調整されており,さらにVITROCELL SYSTEMS社からは専用の加湿ユニットが販売されている.そこで,CULTEXR装置への加湿装置の導入を目的に,試料ガスの加湿方法の調査を実施し,そのうち2種の加湿方法について,基礎データの収集・検討を行った.
研究活動紹介
  • 深澤 竜三
    原稿種別: 研究活動紹介
    2015 年2015 巻6 号 論文ID: JRJ20150606
    発行日: 2015年
    公開日: 2025/12/11
    研究報告書・技術報告書 フリー
    自動車の電気/電子(E/E)システムにおける機能安全について規定した国際規格ISO 26262が,2011年11月に発行された.自動車の機能安全とは,機能に故障が発生しても,フェールセーフなどの安全機構を設けることにより,ドライバや乗員,交通参加者等への危害を及ぼすハザードを,許容可能なレベルまで低減する考え方を言う. 一般財団法人日本自動車研究所(以下,「JARI」という)では,自動車業界各社がISO 26262に基づく製品開発を導入する際の支援を目的として,規格知識を習得するための教育事業,及び実際の開発現場でのサポートを行なうコンサルティング事業を,2012年から開始した.本稿ではその経緯と成果について紹介する.
  • 金子 金子 貴信, 中村 英夫
    原稿種別: 研究活動紹介
    2015 年2015 巻6 号 論文ID: JRJ20150607
    発行日: 2015年
    公開日: 2025/12/11
    研究報告書・技術報告書 フリー
    高度運転支援システムは,自動化のレベルに応じて,高速道路での定速走行・車間距離制御(ACC),車線逸脱防止システム(LKAS)などから自動運転システムを含むものまであり,これらのシステム開発が世界各国で盛んに進められている.一方で,高度運転支援システムを構成する電気/電子システム(以下,E/Eシステムと略す)に故障が発生し,走行中に前方障害物に衝突するなどの事故(危害)によるリスクを低減するための安全設計が必要と考えられ,自動車用E/Eシステムの機能安全規格ISO 26262 (2011年11月発行)の適用が考えられる.この規格は,E/Eシステムに故障が発生してもフェールセーフなどの安全機構を設けることにより,ドライバ,乗員や交通参加者等への危害となるハザード(危険)を許容可能なレベルに低減する考え方である.3章で述べるが高度運転支援システムの場合は,システムに故障が発生した場合でもシステムの動作を正常に継続すること(フェールオペレーショナル)が求められる.そこで,本調査では,ISO 26262 のベースとなったプラント,発電所,鉄道などの安全規格IEC 61508(電気/電子/プログラマブル電子安全関連系の機能安全)に規定される安全アーキテクチャ(冗長構成など)について整理し,宇宙航空などを含む他分野での安全アーキテクチャの事例の調査を行い,今後の課題について検討した結果を報告する.
解説
  • -自動車機能安全(ISO 26262),セキュリティ関係の国際標準化動向-
    福田 和良
    原稿種別: 解説
    2015 年2015 巻6 号 論文ID: JRJ20150608
    発行日: 2015年
    公開日: 2025/12/11
    研究報告書・技術報告書 フリー
    Googleによる自動運転カープロトタイプが2014年5月に公開され,自動運転実現への機運が高まっている.こうした状況の中,2014年9月に開催されたITS World Congressでは,協調ITSシステム(C-ITS)に関する標準化作業についての議論や,自動運転,Connected Vehicle(つながるクルマ)に関連する議論が活発に行われた. ここでは,今後の自動運転の議論に欠かすことができない自動車機能安全規格(ISO 26262:自動車機能安全規格)とセキュリティに関連するセッションの概要を中心に報告する.
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