ディーゼル排気粒子(DEP)が喘息におよぼす影響についてはこれまで数多く報告されている.呼吸により気道に取り込まれたDEPは上皮細胞やマクロファージなどの気道を構成する細胞に作用し,抗体産生増加,炎症細胞の活性化/遊走等を介し,喘息の発症・増悪を促すことが報告されている.また,喘息発作時の気道閉塞において重要な役割を担っている気管支平滑筋に対するDEPの影響については,アセチルコリンによる気管支収縮反応の亢進(気道過敏性)に関する研究が報告されている.その一方で,近年では気管支平滑筋細胞が炎症性サイトカインやケミカルメディエーター等を放出することにより,喘息に悪影響をおよぼすメカニズムが存在することが指摘され,注目を集めている.しかしながら,炎症に関連する生理活性物質の産生源としての気管支平滑筋細胞の役割の全体像,さらにはそのメカニズムに対するDEPの影響に関する知見は未だ不十分なのが現状である.
これまでの我々のヒト肺胞上皮細胞を用いたDEP影響の全体像を把握するための検討では,DEPは多くの遺伝子の発現に影響を与えること,処理時間により異なる遺伝子発現パターンを示すことが分かっている.そこで,気管支平滑筋における炎症関連の生理活性物質の産生に対するDEPの影響を明らかにすることを目的に,ヒト気管支平滑筋細胞を用い,①DEP処理条件の違いによる遺伝子発現の変動を網羅的に解析し,②DEPの処理時間の違いにより発現が変動する炎症関連遺伝子群の分析を行った.
抄録全体を表示