ガソリンを燃料とする自動車からはテールパイプからの排出ガスの他に,ガソリン由来の燃料蒸発ガスが排出されている.燃料蒸発ガスとは,ガソリンが蒸発して気体となった蒸気の総称であり,ガソリンベーパーやエバポエミッション(単にエバポ)とも呼ばれている.燃料蒸発ガスは自動車の走行時のみならず,駐車時や給油時にも排出されており,その主成分は炭化水素(HC,Hydrocarbon)である.HCは光化学オキシダントやPM2.5の原因物質のひとつに挙げられるため,国内外において燃料蒸発ガスの排出量に対する低減対策(エバポ規制)が実施されている.
燃料蒸発ガスは発生過程別に走行時(ランニングロス,RL),停止直後(ホットソークロス,HSL),駐車時(ダイアーナルブリージングロス,DBL),給油時(給油時エバポ)の4つに分類され,それぞれの発生過程に対して排出量規制などが設けられている.また,発生要因(透過,破過,給油時エバポ)の観点から様々な排出抑制対策技術が自動車に搭載されている.
本稿では,ガソリン自動車からの燃料蒸発ガスの発生要因,発生過程の解説および燃料蒸発ガス排出量推計手法の紹介を行う.なお,日本ではVOC排出インベントリの観点から,給油時エバポは固定発生源から排出される燃料蒸発ガスとして扱われることが多いが1),本稿では米国でのエバポ規制に倣って給油時エバポに関しても自動車(移動発生源)から排出される燃料蒸発ガスとしてまとめて議論する.
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