電動車両に搭載されるリチウムイオン電池パックには,電池の電流や電圧,温度の監視,演算及び制御などを行うBattery Control Unit(以下,BCUという)が備わっており,仮に異常を検知した場合には,安全性の低下などを避けるために,回路の遮断などを行う.このBCUは,電池の外部に取り付けた回路で異常を検知して作動し,一度安全装置が作動すると,通常は電池が危険な事象に至ることは無い.一方,内部短絡による異常は電池の単セルそのもので生じる事象であることから,例え異常を検知しても,制御できずに内部短絡が継続し続けるため,発煙または発火に至ることも考えられる.近年,内部短絡によるスマートフォンの電池からの発火事故も発生している.
このような内部短絡に対する安全性を評価する標準試験法は強制内部短絡(Forced internal short circuit.以下,FISCという)試験として, IEC 62660-3(自動車用リチウムイオン電池単セル安全要件)に規定されている.FISC試験は単セルを解体して電極体の正極合材と負極合材の間にNi片を入れた後,その部位に圧力を印加することで内部短絡を発生させて安全性を評価する方法である.この試験は,単セルを解体する必要があることから,技術面及び安全面において実施が難しい場合がある.そのため,より容易かつ解体をせずに安全に実施できる代替試験法として全セラミック釘または先端Niチップ付きセラミック釘を用いた方法が提案されている.しかし,セラミック釘を用いた試験では短絡後に釘位置を保持し続けるためラミネート形電池において短絡後に電池が膨張しやすく,FISC試験に対して短絡層数(正極合材と負極合材間のセパレータを貫通した数)が増加する傾向にあるという課題があった.
そこで,先端Niチップ付きセラミック釘刺し試験において,FISC試験より容易に実施でき,かつラミネート形電池において単セルの膨張に影響しない代替試験を考案し,本手法の妥当性を検証した.IEC 62660-3のFISC試験を実施することにより,本手法の妥当性を評価したので報告する.
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