現在,自動車の燃費は,国土交通省による燃費基準の策定や自動車メーカによる燃費改善技術の開発により,着実な改善が図られている.一方で,カタログ等の諸元表に記載されている「カタログ燃費」と実際にユーザが路上を走行した際の「実走行燃費」には二割程度の差があるとの報告1)もあり,カタログ燃費と実走行燃費の差をできるだけ小さくすることが望まれている.カタログ燃費と実走行燃費に差が生じる要因のひとつとして,エアコン(冷房)の使用があげられる.カタログ燃費は,自動車の燃費性能を比較するための指標として,試験室内でシャシダイナモメータを用いて,一定条件下(標準大気状態,エアコンや電気デバイスの不使用など)において試験法で定められた走行パターンを走行して測定されている.しかし,実走行では,エアコンを使用するなど様々な条件が異なり,一定の条件下で測定したカタログ燃費とは差が生じる場合がある.これまで筆者らは,シャシダイナモメータを用いたエアコン使用時の燃費測定方法を検討し,試験室の温湿度や日射強度などの外気環境,あるいは車室内温度設定や風量設定などのエアコン設定条件がエアコン使用時の燃費に及ぼす影響を整理し,試験室空気の比エンタルピやエアコンの風量設定が高くなるに従い燃料消費量が増加する傾向にあることを明らかにした.なお,エンタルピとは,空気のもつ全熱量をあらわし,乾き空気の熱量と空気に含まれる水蒸気の熱量の合計である.また,比エンタルピとは,単位質量あたりのエンタルピをあらわし,0℃の乾き空気を基準としている.比エンタルピの単位は,kJ/kg(DA)である.
エアコン使用時に燃料消費量が増加すると考えられる夏季環境条件におけるエアコン使用時の燃費を測定するためには,試験室内の温度や湿度を夏季環境条件に設定可能な環境型シャシダイナモ設備が必要となるが,既報の試験室空気の比エンタルピとエアコン風量を考慮することにより,現状の一般的な常温型シャシダイナモ設備により測定できる可能性がある.
そこで,本研究では,夏季環境条件におけるエアコン使用時の燃費の推計手法として,試験室空気の比エンタルピを変えることによる推計手法およびエアコン風量を変えることによる推計手法を開発し,実験結果と比較することで,その推計精度を調査した.試験室空気の比エンタルピによる調査では,常温型シャシダイナモ設備において設定可能な,試験室空気の比エンタルピが異なる二つの環境条件にて,八台の車両を用いてエアコン使用時の燃料消費量を測定し,測定値の変化量から夏季環境条件の比エンタルピにおけるエアコン使用時の燃料消費量を外挿補間して推計する方法を調査した.エアコン風量による調査では,四台の車両を用いて,風量の異なる二つの条件におけるエアコン使用時の燃料消費量を測定し,夏季環境条件と同等のエアコン冷房負荷における燃料消費量を外挿補間して推計する方法を調査した.推計した結果は,環境型シャシダイナモ設備にて実測した夏季環境条件でのエアコン使用時の燃料消費量と比較し,推計精度を検討した.
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