自動車がもたらす利便性は極めて大きい一方で,交通事故や交通渋滞による甚大な社会的損失が生じる側面もあり,政府は「2020年を目処に交通事故死者数を2,500人以下とし,世界で最も安全な道路交通社会を構築する」との目標を掲げている.ただし,既存の取組だけでは目標を達成することが難しく,新たな取組である自動走行システムへの期待が大きい.自動走行システムの早期実用化・普及を促進するためには,導入による交通事故低減効果が大きいことを数値的に提示することが重要である.そのためには多様な普及戦略の効果の大きさをコンピュータシミュレーションによって定量的に評価・比較することが有効である.
一般財団法人日本自動車研究所(JARI)は,戦略的イノベーション創造プログラム(自動走行システム)の「交通事故低減詳細効果見積もりのためのシミュレーション技術の開発及び実証」研究事業を受託し,中立,公平な立場を生かして,産官学連携の中核として本事業を推進している.本事業の中で,我が国の交通事故において死亡事故件数が最も多い歩行者事故の低減効果を評価するために必要な「歩行者エージェントモデルの構築」を東京理科大学に再委託を行っており,本稿でその成果を紹介する.
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