燃料電池自動車(FCV)は,従来の内燃機関の代わりに燃料の水素を格納する高圧水素タンクと駆動電力を発生させる燃料電池スタックを搭載した自動車である.四輪車のFCV(FC四輪車)は世界に先駆けて2014年12月15日に日本で量産型の市販が開始された.同様の駆動機構を概念とした燃料電池二輪車(FC二輪車)に関しては,ここ数年で国内の技術基準に関する法整備が着実に進められ,市販が待ち望まれるところである.FC二輪車の技術基準の基本的な部分はFC四輪車と同様であるが,二輪車は四輪車よりも小さくて軽く,事故時に転倒することなどの特徴を考慮した技術基準の整備も必要である.
この二輪車特有の考慮が必要となる事項の一つに高圧水素タンクに付属する安全弁(PRD)がある.このPRDは車両火災時にタンクの破裂を防止するため,高圧水素を短時間で排出してタンクの圧力を下げる装置で,火災時の熱に反応して作動する熱作動型の安全弁(TPRD)である.二輪車の事故では転倒していることが一般的であるので,直立状態だけではなく転倒した状態でのPRDからの排出を確認する必要がある.
火災によってPRDが作動し,大量の水素が短時間に排出される方向は,危険な状態になりえる.従って,排出方向を特定し,消火および救助活動に携わる方々に周知しておくことが安全上望ましい.特に転倒しやすい二輪車では,排出方向を特定することが重要であり,二輪車業界および関連機関等で検討が行われ,二輪車の底面から底面に対して垂直下方向とする案が示された.そこで,本研究ではPRD作動時の安全性を評価するため,FC二輪車の転倒時と直立時における周囲への影響を調査した.数値シミュレーションでFC二輪車の転倒時と直立時における適切なPRDの排出口径を推測するとともに,実験で実際の排出時の火炎の影響を評価した.
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