実環境における自動車走行時の大気汚染物質排出量の把握は,大気環境対策を検討する上で重要である.自動車からの大気汚染物質排出量は,単位走行距離あたりの大気汚染物質排出量である排出原単位に,走行台キロを乗じて算定する.排出原単位は外気温度を25℃に保ったシャシダイナモメータ (C/D) 試験結果から作成されるため,外気温度の変動による排出量の増減を表現するには,外気温度25℃時の排出量を異なる外気温度の排出量に変換する比率 (以下,温度補正係数という) を用いる.この温度補正係数の作成には環境条件を変更したC/D試験が必要となるが,実施は容易ではない.これまでの例として,JCAP (Japan Clean Air Program) およびJATOP (Japan AuTo-Oil Program) では,米国カリフォルニア州の自動車大気汚染物質排出量推計モデルEMFAC7Gで用いられている,米国の走行条件で作成された温度補正係数を,国内の限られた試験結果と比較し確認した上で用いるなどの工夫をしている.
近年,車載式排ガス測定システム (PEMS: Portable Emissions Measurement System) を用いた実路走行時の排出ガス(RDE: Real Driving Emission) 試験が行われ,外気温度や標高などが変動する中で交通状況に合わせて運転した際の排出ガス試験結果が出てきている.2017年9月にRDE規制が欧州に導入されたこと,日本でも2022年にディーゼル乗用車へのRDE規制導入が予定されていることから,今後RDE試験数は増加し試験結果の入手も比較的容易になっていくと考えられる.
本研究では,様々な環境・走行条件を含むRDE試験結果と規定のC/D試験結果から排出原単位を推定し,それらの比から温度補正係数を推定する手法を検討した.検討には,走行時の排出ガス量がエンジン負荷により決定するという考え方に基づいて開発された速度・駆動力排出マップを活用した.
実路走行試験結果を用いて作成した,より妥当な温度補正係数を用いることで,精度の高い自動車排出量算定に繋がると考える.
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