2015年にパリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)にて,各国の2030年における温室効果ガス削減目標を設定し,この目標を5年毎に見直すこととなった.日本もこれに合意しており,2030年の温室効果ガス削減目標を26%(2013年比)とし,運輸部門においては28%と全体よりも高めの目標を設定しており,早急な対策を実施する必要がある.CO2削減施策の評価を行う上で,費用対効果の視点が重要であり,筆者らも自動車の単体対策による燃費改善や次世代車普及の効果を評価できる手法の開発を中心に取り組んできた.これまでは,従来車の燃費改善と次世代車としてハイブリッド車普及によるCO2排出量および次世代車普及台数の効果評価を中心に行ってきたため,比較的定量化が容易であるコストやラインナップ数などを用いた評価が可能であった.近年は,次世代車の定義がゼロエミッション車にシフトしてきており,今後は電気自動車や燃料電池自動車の評価を精緻化していく必要がある.しかし,これらの評価を行う上では,燃料供給インフラや一充電航続距離などの非金銭的価値の影響や年間走行距離帯によるユーザ層の細分化などを考慮可能な手法が必要となる.また,大気汚染物質等の排出ガス対策も温暖化対策と並行して行われており,排出ガス対策の影響も次世代車普及に影響がある.そのため,大気汚染物質の評価手法も同時に考慮する必要があるが,大気汚染物質の費用対効果を考慮した検討は,特に今後の規制に対するものは見られなかった.
本報では,既往の将来自動車技術進化および消費者選好を考慮した場合のCO2排出量を推計する手法に,インフラや一充電航続距離などの非金銭的価値を消費者効用に加え,さらに,年間走行距離帯別に推計可能な技術選択モデルを検討した.また,多様な温暖化・排出ガス(NOx, NMHC, CO, PM)の費用対効果が考慮できるように,これまでのテールパイプから発生するTank to Wheel(TtW) CO2排出量データに加えて,燃料製造時(WtT:Well to Tank)のCO2排出量や将来の排出ガス低減技術のデータを整備することで,将来の自動車技術進化および非金銭的価値を考慮した2050年までの長期CO2排出量(TtW,WtW:Well to Wheel)および各種排出ガス量の推計モデルを開発した.これらの手法の実用性を検討するために,筆者らが想定した計画規制ケースと技術進展ケースの2つのシナリオにて,両シナリオの車両台数,エネルギ消費量,CO2排出量,NOx排出量,年間総費用(年間あたりに換算した車両価格と走行時の燃料価格)を推計した.
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