エネルギー安全保障の確保や温室効果ガスの排出削減のため,水素社会の実現に向けた取り組みが求められている.モビリティ分野では,燃料電池自動車(FCV)や水素ステーションの普及による水素利用の拡大が進められており,FCVの量産化や低価格化に加え,水素供給コストの低減は重要な課題のひとつである.FCVに供給する水素については,コスト低減にともなう水素品質の低下により発電性能への影響が生じることを避けるため,国際的に燃料仕様が定められている.この燃料仕様は,アノード(負極)触媒の低Pt化や電解質膜の薄膜化等のFCV技術の進展にともない,定期的に見直しが図られている.
一般財団法人日本自動車研究所(JARI)では,国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業において外部有識者から助言をいただきながら燃料仕様の見直しに係る不純物成分を選定し,水素中不純物の影響評価としてFCV用水素燃料仕様の国際標準化に資するデータを,主に発電試験により取得してきた.近年では,現行の許容濃度である0.2 ppmのCOが不純物として高純度水素に混入した場合の固体高分子形燃料電池(PEFC)の発電性能とPt上のCO被覆率の関係や,カソード(正極)からの透過酸素がアノードにおいてCO酸化に重要な役割を果たすことを明らかにした.本研究では,許容濃度の見直しが進められている不純物成分のうち,ギ酸(許容濃度:0.2 ppm)が発電性能に与える影響について検討を行った.
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