中山間地域では,高齢化や人口減少の進行に伴い,日常生活を支える移動手段の確保が地域社会の持続性に関わる課題となっている.前報では,既存の移動手段や制度では未充足の領域を「移動需要の隙間(MDG: Mobility Demand Gaps)」として概念化した.本稿では,MDG解消に向けた制度的手段を交通制度の観点から検討する.とくに,日本の交通制度において,低速小型四輪車カテゴリーが明確に位置づけられてこなかった背景を,交通主体の変遷,高速交通重視の政策,車両制度と運転資格制度の分離という制度構造から整理した.その結果,生活移動ニーズと制度との未整合が生じていることを示し,速度条件,運転資格,走行空間指定の組合せによりMDGを包摂し得る制度枠組みを提示するとともに,安全性を含めた一体的な制度設計の必要性を示した.