日本テスト学会誌
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一般研究論文
  • ―センター試験から共通テストへ―
    内田 照久, 橋本 貴充
    2022 年 18 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    大学入試センター試験から大学入学共通テストへの,転換期の受験者動向の変化を分析した。共通テストに係わる動向としては,特に首都圏で,新卒の私大専願者の減少が顕著であった。そこでは,試行調査で明らかになった新傾向問題の極端な変化を嫌って,共通試験を回避する行動がとられたとみられる。また,令和3 (2021)年には非新卒者が急減した。彼らはセンター試験世代であったため共通テストの受験を控えたと考えられる。さらに地方の18歳人口減少の深刻化も相まって非新卒者全体の減少に繋がった。なお,コロナ禍で当日の未受験者は倍増した。新卒の成績未利用層だけでなく,私大専願層の欠席も多かった。このことから,平時には見えないが,本質的に共通試験を必要としない志願者が一定数いることが浮き彫りとなった。

  • 光永 悠彦
    2022 年 18 巻 1 号 p. 17-38
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    項目反応理論に基づく標準化テストを実施する際、どのテストでも項目の再出題を行わないようにすれば,公平性に最大限配慮することができるが,そのようなデザインの一つに「本試験同時モニター受験者」がある。このデザインでは,本試験同時モニター受験者の能力分布が,本試験受験者と同等であることが求められるが,実際のテストでは難しい場合もある。本研究では,本試験同時モニター受験者集団の能力分布が本試験受験者集団と比べて異なる場合に,本試験受験者の能力値や本試験受験者向け項目のパラメタ推定にどのような影響を与えるかを,複数の等化方法間でシミュレーション研究により比較した。結果,能力分布が大きく異なる条件やモニター受験者が極端に少ない条件においては,個別推定に比べて同時推定を併用した方法や項目パラメタ固定法を用いた場合に真値に近い項目パラメタの推定結果が得られた。あわせて,本試験同時モニター受験者によるデザインのための等化手法について議論した。

  • ―情報収集活動を中心に―
    林 如玉, 倉元 直樹
    2022 年 18 巻 1 号 p. 39-55
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    日本と中国では高等教育の大衆化が進み,大学進学を目指す両国の多くの若者にとって合理的な進路選択を行うことが重要な課題となっている.日本では長年の改革を経て,入試制度の多様化が実現した.一方,中国では大学入試制度の多様化が日本ほど進んでいない.「多様化」の進み具合が違う日本と中国で,高校生の大学進学における進路選択行動に異同が見られるか否かは興味深い.本研究は2019年時点における日中両国の高校生の大学選択行動の実態比較を目的とする.両国の進学校で学ぶ高校生の大学進学に向けた情報収集行動に焦点を当て,質問紙調査を行った.その結果,日中高校生の進路選択における情報収集活動の行動パターンには質的な違いがあることが分かった.日本の高校生は中国の高校生より頻繁に情報収集活動を行い,志望大学の決定面では進路決定をより早い段階で行うことが分かった.背景要因として,両国の大学入試制度とともに進路指導体制の違いが考えられる.

事例研究論文
  • ―パネルデータによる分析―
    佐々木 俊一郎, 山根 承子, マルデワ グレグ, 布施 匡章, 藤本 和則
    2022 年 18 巻 1 号 p. 57-71
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    本稿では、大学生を対象としたアンケート調査によるデータと大学から提供を受けた学生の学業データを紐づけることによってパネルデータを構築し、大学生の学業成績の規定因について分析した。固定効果モデルによる分析結果では、取得単位数は交友関係に正の影響を受けるが、学習姿勢から受ける影響は限定的であることが確認された。一方、履修科目の平均点は交友関係には負の影響を受けるが、意欲的な学習姿勢には正の影響を受けることが確認された。こうした結果は、履修科目の平均点は意欲的な学習姿勢に裏付けられているものの、取得単位数は必ずしもそうではないことを示唆しており、大学生の知識・技能の総量を正確に評価する場合には、取得単位数よりも平均点を使用する方がより適切であると考えられる。

  • ―厚生労働省編一般職業適性検査のWeb簡易版開発へ向けて―
    深町 珠由, 松本 真作
    2022 年 18 巻 1 号 p. 73-102
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    職業適性検査結果を活用した職業情報の検索は,キャリアガイダンスの質を高める上で重要である。本研究では,厚生労働省の要請を受け,職業情報提供サイト(日本版O-NET)上の職業情報を検索するための職業能力検査機能と,職業情報への接続方法の試験的検討を報告する。厚生労働省編一般職業適性検査(GATB)から,空間判断力,言語能力,数理能力に関連した下位検査をWeb化したシステムを試験的に開発し,一般就業者の解答データで尺度化を行った。信頼性・妥当性の検討を行い,GATBとの一定の整合性を確認した。検査結果と職業情報との接続方法を試験的に検討し,日本版O-NETのダウンロードデータのクラスタ分析によって8つの職業グループを構成した。検査結果と職業グループとの結びつきに関して検証を行い,一定の整合性を確認した。今後の課題として,検査の継続的改善や職業情報への接続方法のさらなる改善,品質向上へ向けた論点について述べた。

展望論文
  • ―Psychometrika誌を中心として―
    山口 一大
    2022 年 18 巻 1 号 p. 103-131
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    本稿では,項目反応理論モデルのパラメタ推定法について,Psychometrika誌に発表された論文を主たる対象として,最近の展開を概観した。その結果,項目因子分析モデルや多次元因子分析モデルといった,因子数が多い状況で生じる計算量の困難に対処する様々な方法が提案されていた。具体的には,モンテカルロ積分法や,周辺尤度の近似の積極的な利用,最適化計算の工夫および機械学習領域で用いられている方法の導入が見られた。また,理論的な拡張として,サンプルサイズ・項目数を無限大にするという新しい漸近的状況が考察されていた。さらに,最尤推定・ベイズ推定の枠にはとどまらない方法の提案もなされていた。個人の潜在特性パラメタの推定に関しても,高い精度の信頼区間を保証する理論的な方法が提案されていた。

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