日本テスト学会誌
Online ISSN : 2433-7447
Print ISSN : 1880-9618
3 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
論文
  • 柳川 浩三
    2007 年 3 巻 1 号 p. 3-13
    発行日: 2007年
    公開日: 2022/06/08
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、多肢選択式英語リスニングテストの問題文と選択肢の提示時期が項目困難度と項目識別力に与える影響を検証することである。目的を達成するため、印刷された問題文と選択肢の提示時期のみが異なる3種類のリスニングテストを作成した。3種類とは、本文を放送する前に受験者に(1)問題文と選択肢の両方を提示する形式,(2)選択肢のみを提示する形式、(3)問題文のみを提示する形式である。

    実験の結果、印刷された問題文と選択肢の提示時期は項目困難度に影響を与えることが示された。具体的には、形式(2)の平均点が形式(1)および(3)よりも有意に低くなった。これは、形式(2)の9項目の困難度が形式(1)および(3)のそれよりも有意に高くなったからだと考えられる。また、用意した3形式によって項目識別力に有意な差はなかった。

  • -テスト情報関数の問題点-
    岡本 安晴
    2007 年 3 巻 1 号 p. 35-47
    発行日: 2007年
    公開日: 2022/06/08
    ジャーナル フリー

    まず、適応型テストにおけるテスト情報関数の問題点をシミュレーションによって示した。適応型テストにおいては、データが独立に同じ確率分布に従う(iid)という仮定が成り立たない。また、データ量もテストの開始時では情報関数でパラメタ推定値の分布が推測できるだけ十分に多いというわけでもない。これらのため、テスト情報関数によるパラメタ推定値の標準偏差の推測が、真の標準偏差とかなり異なるものとなりうることがシミュレーションによって示された。情報関数を用いない適応型テストとして、エントロピー最小化基準による方法が提案された。エントロピー最小化基準は、精神物理学的測定においてKontsevich and Tyler(1999)によって用いられており、その方法はΨ法と呼ばれている。このΨ法を適応型テストに適用した場合を、シミュレーションによって調べた。事前分布として正規分布を用いた場合は推定値に保守的バイアスがかかるが、一様分布を事前分布とした場合は情報関数を用いるものと同じ性能であることが確認された。エントロピー最小化基準による方法の検討をさらに進めることの意義が述べられるとともに、多次元因子モデルにも適用可能であることが指摘された。

  • 熊谷 龍一, 五島 譲司, 中畝 菜穂子, 柴山 直
    2007 年 3 巻 1 号 p. 91-97
    発行日: 2007年
    公開日: 2022/06/08
    ジャーナル フリー

    新潟大学では2005年度より新しい英語教育カリキュラムを導入し,1年生を対象に全学的にTOEIC IPテストを実施した.本稿では,TOEIC IPの結果,センター試験ならびに「共通英語」の成績との関連を検討した.TOEICの成績とセンター試験,共通英語の成績の関連については,TOEICの合計点とセンター試験の得点間に.62の相関,共通英語とTOEICの合計点間に.32の相関があったが,共通英語とTOEICの各技能(或いは合計点)との相関は,教員や習熟度別クラスによりばらつきがみられた.またセンター試験を独立変数,TOEIC合計得点を従属変数とした回帰分析では,教員別で.85,クラス別で.81の決定係数が得られた.教員の特性や学生の習熟度などに関して,特徴的なクラスをピックアップするための資料としてこれらの結果を利用できることが示された.

  • 宮崎 康夫
    2007 年 3 巻 1 号 p. 123-146
    発行日: 2007年
    公開日: 2022/06/08
    ジャーナル フリー

    階層線形モデル(HLM)は、入れ子構造をもっている教育・発達研究データに対して、最も頻繁に使われる統計分析手法のひとつであり、それを大規模教育調査データの分析に対して用いることにより、これまでの方法では得られない有益な情報を与えることが知られている。しかしながら、残念なことに、わが国においてはこの手法はまだあまり知られておらず、応用研究もあまりないのが現状である。そこで、本論文には、2つの目的がある。一つは、階層線形モデルをその研究に利用しようと考える研究者に対して、米国全国教育縦断研究(NELS)のデータを使って組織研究と成長モデルでの分析例を示すことにより、その手法を紹介し、その考え方に精通し、実際に自分の研究に役立ててもらうこと、もう一つは、分析結果をどう教育政策の立案に利用するかについて研究デザインの統計学的見地からみたいくつかの観点を提供することにある。

  • -「AO入試」に関する分析-
    西郡 大, 倉元 直樹
    2007 年 3 巻 1 号 p. 147-160
    発行日: 2007年
    公開日: 2022/06/08
    ジャーナル フリー

    我が国の大学入試は「ハイステークス」な選抜であると考えられてきたため,その公平性への関心は高い。しかし,一言に公平性と言っても,実はその概念は一様ではない。本研究では,個人や立場の違いによって公平性の捉え方が異なることを前提に,受験当事者の主観的な公正知覚について社会心理学的視点より探索的に分析した。その結果,大学入試の文脈における公平性概念の構造について,分配的公正における分配原理や手続き的公正における基準などから整理できる可能性を見出した。中でも,現実的な大学入試の文脈において,誰もが納得する公平性を担保することが不可能だという事実は重要である。この視点からは,如何に個人の公正感を高めていくかという議論の必要性が示唆される。また,その手段として,個人の公正感に関する社会心理学的研究から得られる知見の有用性が示された。

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