日本テスト学会誌
Online ISSN : 2433-7447
Print ISSN : 1880-9618
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一般研究論文
  • 加藤 剛, 宇佐美 慧
    2026 年22 巻1 号 p. 1-27
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,認知診断モデル(Cognitive Diagnostic Models; CDM)における逆説的なスコアリング(Paradoxical Scoring; PS)の発生率と生起条件を理論的分析とシミュレーションで検討した。CDMは有用な方法であるが,多次元項目反応理論で従来指摘されている「特定の項目を誤答にすると,ある次元の潜在特性推定値が高くなる」というPSがCDMでも生じる可能性がある。本研究では,一定の条件下で,ネストした関係にある習得パタン間の変化を指す特定のタイプのPSは生起しないことを示した。さらにDINA,DINO,G-DINAモデルを用いて,アトリビュート間の相関,項目の質,サンプルサイズ,項目数などの要因がPS発生に及ぼす影響を評価した。その結果,項目の質と相関が低い場合,アトリビュート習得確率の観点でPSの影響を受ける個人は一定数生じることが明らかになった。

  • 南元 篤史, 岡田 謙介
    2026 年22 巻1 号 p. 29-44
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/30
    ジャーナル フリー
    電子付録

    本研究では,代表的なIRTモデルである2パラメタロジスティックモデル (2PLM) と2パラメタ正規累積モデル (2PNOM) によるテストスコア(個人パラメタ推定値)の差異を,回答パターンの網羅的なシミュレーションにより検討した。全体的には両モデルによるテストスコアは近い値をとったが,個人適合度の低い回答パターンに対するテストスコアは,モデル間での差が大きい場合があった。特に低困難度の項目における高得点者の誤答や,高困難度の項目における低得点者の正答に対し,2PLM は比較的頑健である一方で2PNOMは強く影響を受け,両モデルによるテストスコアの差が大きく開いた。さらに,このような回答パターンにおけるテストスコアの差は,項目数を増やしても縮小しないことが示唆された。また,テストスコアの平均的な差を小さくする観点からは,従来の尺度因子D=1.702が必ずしも最適ではないことが明らかになった。

  • ―有効性認知,興味,学習困難度の認知に着目した検討―
    橋本 真一, 鈴木 雅之
    2026 年22 巻1 号 p. 45-69
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,学習者が内容の異なる複数の課題に取り組む際に,テスト内容や学習内容によって使用する学習方略を変化させるのか検討した。また,方略の有効性認知,学習内容への興味,困難度認知の間接効果も検討した。大学生44名が,6種類の数学の公式に関する学習と各学習内容に対応するテスト(同型テストと転移テスト)に取り組み,学習内容ごとに方略使用や有効性認知,興味,困難度認知の測定が行われた。マルチレベルSEMによる分析を行った結果,学習内容の意味理解が必要なテストを予期すると,有効性認知を媒介して公式の意味理解を行う方略の使用が高まり,例題を繰り返し解く方略の使用が低下する傾向がみられた。また,特定の学習内容では,有効性認知を媒介して公式の意味理解を行う方略の使用,テキストを再読する方略の使用が高まる傾向がみられた。さらに,間接効果がみられず直接効果のみみられた方略や学習内容も確認された。

事例研究論文
  • 高校生対象のアンケートから
    永野 拓矢, 寺嶌 裕登, 橘 春菜, 石井 秀宗
    2026 年22 巻1 号 p. 71-92
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/30
    ジャーナル フリー

    高校生等を対象とする改訂・学習指導要領が2022年度より実施されている。同年度入学の1期生は,生徒指導要録に「観点別学習状況の評価」欄が設けられた。本稿では,大学進学への意欲が高い生徒を対象に,2024年度末にかけて同評価に関するアンケート調査を行った。質問項目は,同評価に関する全般的な質問と大学入学者選抜への活用可能性,及び各観点に関する質問である。その結果,同評価の評価方法や大学入学者選抜への活用に対して,多くは批判的であった。各観点については,「知識・技能」「思考・判断・表現」は肯定的だったものの,「主体的に学習に取り組む態度」は他観点と比較して肯定度は低く,これは著者らが教員対象に実施した同調査と類似した傾向がうかがえた。

  • ―受験環境準備・事前接続テストと試験当日の対応事項に着目して―
    寺尾 尚大, 宮本 友弘, 西郡 大
    2026 年22 巻1 号 p. 93-122
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,日本の大学入学者選抜のうち個別大学の学力試験の場面を想定した遠隔リアルタイムによるBYOD型CBTの実験を通じて,受験者自身による受験環境の事前準備,事前接続テスト,試験当日における対応事項やトラブル等の側面から,遠隔BYOD型CBTの実行可能性を検討するための基礎的知見を得ることであった。大学生の受験者49名に対し,マニュアルに沿って自身の端末や通信環境の確認,ロックダウンブラウザのダウンロードを実施し,その受験環境の確認を行うための事前接続テストに参加した上で,指定された日に試験を受けるよう求めた。その結果,受験者自身での受験環境準備は一定程度円滑に実施できたが,事前接続テストが準備不足のある受験者の問題点を解決し,必要な受験環境準備を当日までに完了させる機会となったため,準備不足による当日のトラブルを防ぐ効果をもった。また,本方法が自宅から遠く離れた国内外の大学の試験として受容されやすいことも明らかとなった。

展望論文
  • ―技術強化型項目Technology-Enhanced Items 研究に着目して―
    渡邊 智也, 堂下 雄輝
    2026 年22 巻1 号 p. 123-150
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,CBTの特徴を生かした技術強化型項目(TEIs)の研究動向を概観するとともに,その可能性と課題を整理した。TEIs の「定義と分類」「大規模学力調査での活用実態」「測定上の付加価値」「妥当性への影響」「項目作成上の考慮事項」の5点について,先行研究の知見を体系的に検討した。TEIsをドラッグアンドドロップ等の操作性とシミュレーション等のインタラクティブ性を特徴とする項目に焦点化し,PISA・TIMSS・NAEP等での活用事例を分析した。先行研究のレビューから,TEIsは受検エンゲージメントの向上や回答効率性の改善といった利点が確認された一方,得点化推論の透明性低下や領域代表性の不足などのTEIs特有の課題も明らかとなった。今後の課題として,総括的評価場面を超え,学習支援のための形成的評価への利用拡大に向け,学習理論に基づき妥当なプロセスデータを取得できる項目設計の必要性を指摘した。

  • ―College Board によるAdmissions Models Project 報告書の分析から―
    江幡 知佳, 澤田 彬良, 木村 拓也
    2026 年22 巻1 号 p. 151-172
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/30
    ジャーナル フリー

    米国の大学アドミッションにおける入学審査の実態は,これまで十分に明らかにされてこなかった。これは,従来の研究が主に個別大学の事例紹介を中心に蓄積されてきたことに起因する。ゆえに,個別大学のアドミッションの実践を根底で支える思想的基盤や実践をめぐる議論についての体系的理解は深まっていない。そこで本稿は,College BoardによるAdmissions Models Projectの報告書4編を分析し,米国における入学審査をめぐる議論と体系化の過程を明らかにした。分析の結果,米国の実践は多様でありつつも,①各機関が自らのアドミッション実践を構築,省察する際に参照しうる共通指針・枠組みが提示されていること,②多様な評価要素が,出願者に与えられた機会や環境に基づき文脈づけられること,③出願者を全人的に捉えようとする実践が選抜性の高い大学に必ずしも限定されず広く採用されていることが示された。

  • 山口 一大, 宇佐美 慧
    2026 年22 巻1 号 p. 173-205
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/30
    ジャーナル フリー

    本稿ではマルチレベルモデルの観点から,項目反応理論モデルを捉え直し,1パラメタロジスティック項目反応理論モデルの定式化を行った。項目反応のもつ交差分類構造から,潜在特性値および項目パラメタを固定効果または変量効果として扱うのかを明確に区別した4種類のモデルのほか,発展的なモデルを紹介した。それぞれのモデルに対する尤度に基づく推定法との対応関係を整理した。また,これらのモデルに対するベイズ推定に伴うモデル上の仮定を明確化した。加えて,マルチレベルモデルのための分析ソフトウェアにおけるモデルと推定法の対応を概観した。最後に,個々の研究目的やデータ収集デザイン等を踏まえた,これらモデルと対応する推定法の選択について議論を行った。

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