シミュレーション&ゲーミング
Online ISSN : 2434-0472
Print ISSN : 1345-1499
29 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
特集:JASAG 30周年
巻頭言
依頼論文
  • 兼田 敏之
    2019 年 29 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 2019/08/30
    公開日: 2019/08/28
    ジャーナル フリー

    本稿では,社会工学アプローチ(問題解決アプローチ)の深化として「厄介な問題」を視野にゲーミング・エクササイズを中心に据えた筆者らのアクション・リサーチについて,その方法論の背景を含めて解説する.また事例として権利変換型再開発プロジェクトゲームURPG(Urban Redevelopment Project Game)の大学間移転についてのゲーミング・エクササイズに焦点を当てて,その経緯を概説する.とくにゲーミング・エクササイズ事例については,権利変換の概説と経緯,多主体系に付加されるべき権利変換の形式化の記述を踏まえて,URPGのデザインと名古屋からカブールへの移転を述べる.またディブリーフィングとその後の議論で生じたエピソードから土地権利にかかわる社会システム(文化的慣行)の違いが明らかになり,結果としてアフガニスタン国側で準備されていた法制度案の変更修正に結びついている.エクササイズを通じて得られた見通しも示すとともに,エクササイズ成立の条件についても言及する.

  • 吉川 肇子
    2019 年 29 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2019/08/30
    公開日: 2019/08/28
    ジャーナル フリー

    本稿では,シミュレーション&ゲーミング研究と実践を行ううえで生じるいくつかの問題について,とりわけゲームの質と倫理に関する問題について,検討した.筆者がなぜこのような問題意識を持つようになったかについては,自身のゲーム体験が影響しているので,その私的な研究史も含めつつ,議論を進めた.最初にごく私的なゲーム史を紹介したうえで,ゲームを教育に活用しているユーザーの立場で注意していることについて紹介した.次に,ゲームを制作・提供した立場から注意している点について紹介した.これらの議論を踏まえ,学会としてゲーム研究及び実践のための行動規範ないし倫理規程の必要性があることを,吉川(2007)に引き続き主張した.いくつかの点については,本稿で挙げた具体的な事例をもとに,筆者が本学会で議論したい論点を3つあげた.

  • 田名部 元成
    2019 年 29 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2019/08/30
    公開日: 2019/08/28
    ジャーナル フリー

    シミュレーション&ゲーミングは,様々な領域における諸問題に対する教育や研究の方法論として用いられている.特定の方法論を用いた探求の結果を正当に評価するためには,探求者が依拠する哲学的な立場とともに理解する必要がある.本稿は,シミュレーションとゲーミングを用いた多様な領域の問題や課題を解決するための知識と方法の探求のあり方について,近年の我々を取り巻く環境変化を加味しながら考察し,ゲームの設計者,利用者,プレイヤーの共創過程としてのシミュレーション&ゲーミングという側面の重要性について指摘する.

一般論文
査読論文
  • 高橋 洋道, 中野 冠
    2019 年 29 巻 1 号 p. 24-35
    発行日: 2019/08/30
    公開日: 2019/08/28
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,サプライチェーン内で主要管理指標(KPI)の対立から生じる課題と協業の価値を考察する教育的手段として,サプライチェーンビジネスゲームCANDY OGが有効か確認することである.広くサプライチェーンにおいてパフォーマンスはKPIにより管理され,その最適化が求められてきた.しかし異なるKPIを改善しようとする組織が取る行動には対立が生じるため,パフォーマンスの最適化にはそのような対立を効果的に対処できる人材が必要である.そこで人や組織がとる行動の多様性を模擬できるビジネスゲームに着目した.個々のプレイヤが局所最適を目指す行動の相互作用を経験し,その後プレイヤが全体最適を目指す行動を対照的に経験できるゲームとしてCANDY OGを開発した.実験として3ゲームを実施し,被検者の観察,口頭によるフィードバック及びゲーム後のアンケート調査より被検者が経験した疑似体験とそれを通じて得た気づきを分析した.その結果,KPIの対立から生じる課題と協業の価値を考察する手段としてこのゲームが有効である可能性が示唆された.

  • 菊地 剛正, 國上 真章, 高橋 大志, 鳥山 正博, 寺野 隆雄
    2019 年 29 巻 1 号 p. 36-48
    発行日: 2019/08/30
    公開日: 2019/08/28
    ジャーナル フリー

    社会的・組織的な現象や問題を理解し,システムのデザインへ繋げるための手法として,エージェント・モデルとケーススタディを接地させるアプローチが提唱されている.本稿では,当該接近法がより実効性を持つよう,以下の2点を拡張した方法論を提案する:a)個々のエージェントの行動の詳細な記録を指すミクロ・ログではなく,ミクロ・ログの類型を対象とした分析を行うこと,b)抽象的記述言語を用い,ケースにかかわる解釈を自然言語と比べて形式的に記述すること.提案手法の要件が満たされることの例示のため,組織の外部環境認識にかかわる意思決定プロセスを表現するエージェント・モデルを構築し,同様の主題を持つビジネスケースとの接地を行った.示されたことは以下の通り:1)網羅的なシミュレーションを行うことで,意思決定プロセスを類型化し,それらの蓋然性にかかわる議論を行いうること,2)シミュレーションのログと実際のビジネスケースをケース記述言語により同じ形式で表現し内容の比較対照を行いうること.

報告
編集後記
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