学生相談研究
Online ISSN : 2758-0067
Print ISSN : 0914-6512
43 巻, 2 号
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資料
  • 安 婷婷
    2022 年 43 巻 2 号 p. 148-158
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/05/19
    ジャーナル フリー

     本研究は、留学生の援助要請についてレビューを行った。留学生は一般学生より多くのストレスを抱え、抑うつや不安などのメンタルヘルス問題に陥りやすいため、問題が深刻化する前に積極的な援助要請が大切とされているが、留学生の学生相談機関の過少利用が問題となっている。そこで本研究は、これまでの日本国内外の研究論文25 編に基づき、留学生の援助要請に関連する論文の動向と得られた知見を整理し、留学生の援助要請をより的確に捉え、実践に活かすために今後の課題と研究の方向性を示した。留学生の援助要請研究において、地域や国単位で扱われる傾向、アジア留学生を一括にされる傾向とその限界が指摘され、留学生の援助要請を捉えるためのパラダイムの転換が期待される。また、留学生の援助要請は彼らの生まれ育った文化とホスト文化の両方の影響を受けており、その影響が流動であることが指摘され、これらの点に配慮した理解のモデルの提案が期待される。さらに、日本の留学生相談の支援現場に役立つためには、日本の留学生の特徴を踏まえた日本独自の留学生の援助要請の知見の蓄積が求められる。

  • 藤原 祥子, 伊藤 理紗
    2022 年 43 巻 2 号 p. 171-181
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/05/19
    ジャーナル フリー

     新型コロナウイルス感染症拡大前の2017年度~2019年度と感染症拡大後の2020年度において、その年度に初めて大学学生相談機関に来談した学生の主訴の変化についてKH-Coderを用いて分析した。頻出語の共起ネットワークからコーディングルールを作成し、19のコードを感染症拡大前後のそれぞれのデータに適用し、コード同士のJaccard係数が0.1以上の共起ネットワークを描画した。各サブグラフ内の頻出語の特徴を検討したところ、感染症拡大前に比べて感染症拡大後では中心的な主訴が「研究」から「感情的苦痛」に変化していた。変化の要因としては感染症拡大前後で主訴の記入方法が変わったことの影響が否めないが、コロナ禍において大学生の悩みが質的に変化した可能性もある。コロナ禍の学生相談においては、このような主訴の変化を踏まえた来談勧奨や介入が求められる。

  • 堀田 亮
    2022 年 43 巻 2 号 p. 182-193
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/05/19
    ジャーナル フリー

     本研究では信頼性と妥当性が確立されているCounseling Center Assessment of Psychological Symptoms日本語版(CCAPS-Japanese)を用いて、ウェブ上で学生が精神的健康状態を回答できる「CCAPSウェブ回答システム(CCAPS-Internet based Quick Assessment System: CCAPS-iQAS)」を開発した。本システムは回答学生への結果の即時フィードバック機能と、結果の推移を確認できるプロフィールレポートの作成機能を搭載した点に特長があった。これにより、回答学生は自身の精神的健康状態への理解を深めることができ、必要に応じた援助要請行動の促進につながると考えられる。また、支援者にとっては要支援学生の早期発見、支援体制の構築と、カウンセリング効果の可視化が期待できる。定期健康診断と学生相談での機能実証を行った結果、システムの安定性と実用性が確認された。今後、本システムを複数校で展開することで、大規模データベースが作成でき、学生の精神的健康の実態把握や今後のアクションプランの策定に貢献できる。

展望
  • ―2021年度の文献レビュー―
    慶野 遥香
    2022 年 43 巻 2 号 p. 194-204
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/05/19
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は、2021年度に我が国で発表された学生相談に関する文献レビューを行い、近年の研究動向を展望することであった。選定された41編の文献を、『学生相談ハンドブック新訂版』の目次に従い、(1)総論、(2)相談・援助活動、(3)連携・協働活動、(4)大学コミュニティのなかでの活動、(5)学生相談を支えるもの、の5つのカテゴリに分類して整理した。
     その結果、以下のことが近年の特徴として挙げられた。(1)学生相談機関における遠隔相談の実施状況や、コロナ禍の大学生の心理や精神的健康に関する研究が報告され始めていた。(2)留学生の相談体制に関する調査や、様々な症状を持つ学生の相談事例など、多様な特性や困難を持つ学生への支援に関する研究が行われていた。(3)グループ活動やピア・サポートなど、個別相談にとどまらない多彩な学生支援活動の文献レビューや実践報告が増えていた。これらを踏まえて、今後の研究課題について考察した。

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