学生相談研究
Online ISSN : 2758-0067
Print ISSN : 0914-6512
43 巻, 3 号
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研究論文
  • 安 婷婷, 胡 実
    2023 年 43 巻 3 号 p. 233-243
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/09/15
    ジャーナル フリー

     コロナ禍において、大学生は学習面、生活面、心理面など様々な側面において影響を受けている。特に、COVID-19の発生源とされている中国からの留学生は、帰国困難、将来への不安、差別体験などによって、様々な精神的負担を抱え、特有の体験を持つと考えられる。本研究は中国人留学生のコロナ禍における体験を明らかにすることを目的に、8名の中国人留学生を対象に半構造化面接を行い、質的分析を行った。その結果、中国人留学生は経済的不安、来日・帰国困難など様々なストレスを抱えていると同時に、感染への不安・恐怖、感染が中国から始まったことへの罪悪感・責任感、将来への不安、ステイホームによる孤独感、差別による憤り・悲しみなどといった様々なネガティブな感情を抱えていることが明らかになった。これらのストレスやネガティブな感情がメンタルヘルスの悪化に繋がる可能性が示唆された。このような状況に対して、彼らの感情調整の工夫や現状を受け入れる努力といった情動焦点型コーピングが見られた。彼らへの支援として、経済支援、学習支援、メンタルヘルス面に止まらず、差別防止への取り組みも求められる。

資料
  • 伊藤 直樹
    2023 年 43 巻 3 号 p. 245-254
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/09/15
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、韓国における学生相談・学生支援に関する研究のレビューを行い、韓国における最近の研究課題に関する基礎的な資料を得ることであった。文献データベースから選択された50編の研究論文を対象としてレビューを行ったところ、これらは「学生相談・学生支援のための介入方法に関する研究」、「カウンセリングや心理的支援への態度、及びスティグマに関する研究」、「海外との比較・欧米との文化差に関する研究」、「インターネットの利用に関する研究」、「特定の特性に焦点を当てた適応に関する研究」の5つの研究課題に整理された。また、韓国における研究の特徴として、自国の社会的・文化的背景が大学生に及ぼす影響を強く意識した研究が多く行われていること、欧米で開発された方法を積極的に韓国の社会・文化に適合したものに修正し、臨床実践につなげることを目的とした研究が多く行われていることが見出された。最後に今後の課題として、学生相談・学生支援の領域における自国の文化を意識した研究、及び欧米的な方法に対する受容のあり方に関して、日本と韓国の差異を明らかにすることが挙げられた。

短報
  • 小橋 亮介, 杉岡 正典, 山内 星子, 松本 寿弥, 織田 万美子, 鈴木 健一
    2023 年 43 巻 3 号 p. 265-271
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/09/15
    ジャーナル フリー

     本論文では、2020年秋学期に実施した調査を通じて、コロナ禍にある学部2年生以上の学生のメンタルヘルスについて報告を行った。調査はオンラインにて行い、調査協力者は1,006名の大学生であった(学部2年生438名、学部3年生307名、学部4年生以上261名)。分析の結果から、抑うつと不安は大切な人のサポートと負の関連がある一方で、コロナによるストレスとは正の相関があることが明らかになった。さらに、女性の方が男性よりも抑うつおよび不安が高いこと、抑うつおよびコロナによるストレスは4年生以上よりも3年生の得点が高く、不安は2年生よりも3年生の得点が有意に高いことが示された。他方、希死念慮のハイリスク群の学生数には学年差はみられなかった。新入生だけではなく2年生以上のメンタルヘルスにも注意が必要であり、その中でも抑うつや不安が高かった3年生は、先の見えないコロナ禍で就職活動や研究室活動をしなければならず、暗中模索の状態だったかもしれない。コロナ禍において学年ごとに置かれた状況は異なるため、その特徴に留意しながら、柔軟に支援方略を検討する必要がある。

展望
  • ―海外文献レビュー―
    石井 治恵
    2023 年 43 巻 3 号 p. 272-287
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/09/15
    ジャーナル フリー

     トラウマは、学生にとって身近な現象であり、メンタルヘルス、学業、リスク行動など広範囲に影響を及ぼすとの知見が蓄積されている。本稿は、日本の学生相談におけるトラウマ研究と実践への示唆を得ることを目的として、米国で行われた研究を中心にトラウマが学生のメンタルヘルスと学生生活に与える影響に関する文献のレビューを行った。トラウマの暴露率と影響に関する研究に加えて、外傷体験への早期曝露、トラウマの反復性、複雑性および種類、PTSD症状、感情や認知に関わる自己調節機能、愛着や社会的サポート等、トラウマとアウトカムの関係に影響を与える要因を検討する研究も見られた。トラウマ臨床については、複数の職能団体からガイドラインが発表され、トラウマに配慮した実践の枠組みが構築されている状況であった。アセスメント、治療同盟、安全性の確保、代理受傷、トレーニング等臨床上の留意点について触れ、日本の学生相談における展望について議論した。

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