日本文化人類学会研究大会発表要旨集

「鬼」への祭祀にみる現代中国の儀礼と信仰

広東珠江デルタにおける盂蘭節の事例から

川口幸大

p. 119
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.119.0

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本発表では旧暦の7月に行われる「鬼」への祭祀を事例として取り上げる。そして、とりわけ行為者たちは鬼をどのようなものとして認識し、いかなる儀礼を行っているのか、また共産党政府はそれに対してどのような政策のもと、いかなる関わり方をしているのかについて検討し、現代の中国社会における儀礼と信仰の諸相の一つを明らかにする。

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現代モンゴルの地方社会における牧畜経営

草原と定住地の関係を中心に

冨田敬大

p. 121
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.121.0

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本発表の目的は、モンゴル国北部ボルガン県オルホン郡を事例に、草原と定住地における牧畜民の牧畜経営の関係を明らかにすることである。具体的には、まず、草原と定住地における牧畜経営の特徴について説明する。次に、草原と定住地に暮らす二つの家族のライフヒストリーを取り上げ、彼らがどのような葛藤のなかで居住地を選んできたのかを示す。そして、こうした彼らの選択を可能にした背景に何があったのかを考えたい。

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日系修道女と宗教的共同体の変容

―ブラジル日系社会で活動したＡ修道会を事例に―

佐藤悦子

p. 122
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.122.0

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本発表では、ブラジル・サンパウロ市郊外にあるＡ修道会の修道女たちに焦点を当て、布教する側と布教される側の高齢化や日本語による布教の必要性がなくなったことから日系社会での役割を終えつつある日系修道女たちが宗教的共同体の中でいかにして共同生活をし、自立しようとしていくのかを明らかにする。

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ダンスホール・ゴスペルで表象される「ラディカル」なキリスト教徒男性のイメージ

二宮健一

p. 123
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.123.0

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本発表では、近年ジャマイカで成長しているダンスホール・ゴスペルに注目し、そこで表出される「ラディカル」なキリスト教徒男性イメージが現地の人々の間に引き起こしている多様な反応を整理する。さらにその男性イメージをジャマイカをはじめとするカリブ海地域の男性性研究で用いられてきた理解枠と関連させながら考察することを試みる。

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茶馬古道の木地製作

田畑久夫, 金丸良子

p. 124
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.124.0

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茶馬古道とはチベット自治区、四川省、雲南省の間をつなぐ古代より発達した交易ルート。チベット族、イ族、ナシ族は茶馬古道沿いに分布している。これらの少数民族の一部は食器などに用いる木製の椀を製作し、茶馬古道を使用して販売している。発表では、これらの３少数民族が製作する木地製品についてその用途、販売、流通などに関して、それぞれの特色をスライドや図表を用いることで多面的、具体的に考察する。

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代謝を生きる

動く標的の人類学へ向けて

モハーチゲルゲイ

p. 125
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.125.0

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近年、グローバルな空間への関心が高まるとともに、知識形成のプロセスをめぐる質的研究の焦点は、村や島を模範とした「現地」から、工場や実験室の「現場」へと移っている傾向がある。そこで当然、こうしたグローバル（全体）と現場（部分）という次元の異なる知識がいかに関係しているか、という問題が浮上してくる。本発表では、代謝を取り巻く政策課題や科学研究を中心に、人類学の古典的なテーマである「身体」が、この疑問に鮮明な光を投げ掛けることを示したい。

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中国の大学生における「秘密」の捉え方

大田千波留

p. 126
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.126.0

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大学生が入党するという意図的な行為をおこなう中で、秘密になること、することは実際に共産党が決定したものではなく、学生自身が「共産党のコード」なら、これは秘密にすべきだろうと読み込んだものである。入党に関する内容が秘密になるときは、いつもであり、しかし、いつもではなく、その場や対象によって臨機応変な変容を見せ、学生が無意識に、そこに共産党の「秘密性」を読み込み、創り上げている。

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カンボジア村落部織物業における生産組織の変容

市場経済化以降の村落内・村落間の分業化を中心に

朝日由実子

p. 127
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.127.0

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本報告では、カンボジアを代表する高級絹織物「ホール」の主産地のひとつである、プレイ・ヴェーン州シトー・コンダール郡PL村における報告者の調査結果に基づき、手織物業の生産組織の在り方について、分業化の問題を中心に検討する。特に1990年代半ば以降本格化する市場経済化を背景として、家族労働を超えた村落内・村落間の分業化が加速している背景と要因について、社会関係などに焦点を当て考察することを目的とする。

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精霊と結婚しない「男」

ビルマ精霊信仰における夢とセクシュアリティの変容

飯國有佳子

p. 128
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.128.0

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これまでミャンマー（ビルマ）の精霊信仰における霊媒については、当人のセクシュアリティが守護霊との関係性を決定し、精霊からの招命の証拠として夢に反映されるというフロイト的分析がなされてきた。本発表では精霊からの招命としての夢を、霊媒個人の心理に還元せず社会的な行為として捉えながら、夢が語られる／語られない状況の変化が、精霊信仰という文化的システムにいかなる変容をもたらしているのかを分析する。

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カンボジア村落部の仏教的知識に関する一考察　―老人と若者との関係から―

武田龍樹

p. 129
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.129.0

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本発表はカンボジア村落部における仏教的知識の断絶と持続について報告するものである。1970年代から1980年代にかけてのポルポト時代や内戦によって、老人と若い世代とでは仏教的知識やその認識に関して大きなギャップが存在する。こうした老人と若者とが仏教実践をめぐってどのような関係にあるのか、そこにおいて仏教的知識はどのように伝達されるのかについて検討する。

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訃聞にみる台湾漢族の親族観念の変遷～女性をめぐって

上水流久彦

p. 130
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.130.0

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漢族を対象とした研究は親族制度を社会構造の中心と捉え、主要な研究対象としてきた。だが、その多くの研究が変容そのものは問題としてこなかったた。そこで台湾の訃聞（葬儀・告別式の案内通知）を通時的に検証した。台湾の植民地期の訃聞にはほぼ男性子孫のみが掲載され、女性子孫の名前は見あたらなかったが、光復後の台湾の訃聞では女性子孫の掲載率が非常に高い。その変化からは漢族社会を父系社会と捉える限界が明らかになる。

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文化資源の変容

西南中国の少数民族・トン族の事例から

兼重　努

p. 131
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.131.0

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西南中国の少数民族トン族が母語で演じる劇の演目をとりあげ、中国共産党の文芸政策の推進に伴い、それが局所的文化資源から、トン族という民族を代表する民族文化資源に変換され、さらに貴州省という地域を代表する地域文化資源へと変容していった経緯をあとづけることにより、文化資源が、だれによって、どのように生み出され、どのように変貌を遂げ戦略的に活用されていくのかという問題を明らかにする。

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心と社会を媒介する身体：「ひきこもり」からの洞察

堀口佐知子

p. 132
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.132.0

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「ひきこもり」は男性の若者をめぐる日本特有の社会問題と近年されてきている。本発表では支援現場における、「ひきこもり」をめぐるさまざまな解釈を起点として「ひきこもり」という営みの媒介としての身体について、特に心（精神）と身体との交差、及びその外にある家族空間・社会空間における身体性の問題やジェンダーとのかかわりに注目し、考察することで、新たな「ハイブリッド」な身体観を提示していきたい。

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アメリカ社会におけるファット・アクセプタンス運動

碇陽子

p. 133
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.133.0

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保健医療により定義される「過体重」と「肥満」者が人口の6割を超えたアメリカでは、肥満の予防が重要な政策的課題となっている。そこでは、太っていることは様々な病気のリスクとされ、同時に自己管理の欠如の現れとみなされ、差別や糾弾の対象となる。本発表では、人はサイズに関わらず健康でいられると主張する、肥満受容運動を取り上げる。反肥満という社会的潮流の中で彼らがどのように生を見出しているのかについて検討したい。

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複数愛における関係性

ポリアモリー実践に伴う「葛藤」の語りから

深海菊絵

p. 134
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.134.0

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「ポリアモリー（polyamory）」とは、複数の者を同時に「誠実」に愛する恋愛実践、とその実践者たちを指す。本発表の目的は、ポリアモリー実践者たちの葛藤の語りに注目し、偶発的で予測不可能な日常の中で、彼／彼女たちがいかに他者との関係を築いているのか、という問いを探究することである。具体的には、（１）ポリアモリー理念を共有する仲間たちの関係性、（２）ポリアモリー関係にある者同士の関係性、の二方向から検討を試みる。

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「多文化共生」研究批判

「混線」する文化の民族誌から

岡田浩樹

p. 135
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.135.0

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本分科会では、今日的状況として認識される「多文化状況」が、それ以前の近代の地域社会、特に都市的空間にその萌芽を見いだされる点に注目し、各地域社会における「混線」する文化のダイナミズムを、民族誌的、社会史的手法で明らかにする。その上で、今日の「多文化共生」研究を批判的に再検討、相対化する。

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先住民の土地権と「カラーブラインド」の対立

アメリカ領グアムを事例として

長島怜央

p. 136
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.136.0

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本報告は、アメリカ領グアムのチャモロの土地権要求を事例として、アメリカの人種に関する「カラーブラインド」思想がグアムに移入されるなかでいかなる問題が生じているかを考察するものである。具体的には、チャモロ土地信託法を支持する動きと、同法をアメリカ合衆国憲法に照らして違憲であると主張する動きの対立の構図を分析する。そのなかの「白人性」などレイシズムや植民地主義の問題に焦点を当てる。

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シャーマニズム治療実践をめぐる地域的偏り

北インド、ラダックの事例より

宮坂清

p. 137
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.137.0

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本発表では、北インドのラダック地方のシャーマニズム治療実践をとりあげ、急激に近代化が進む都市部と取り残されつつある周辺部のあいだにある、ジェンダーの偏り、および吸い出しという特殊な「治療」が重視される度合いの偏りについて検討を行い、社会変容とシャーマニズム実践の関係について考察を行う。

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「伝統芸能の担い手」としての芸者イメージに関する一考察

東京芸者の語りより

中岡志保

p. 138
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.138.0

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　本報告は、発表者が芸者としてフィールドワークを行ったA花柳界における、近年の変化に注目する。A花柳界ではほとんど仕事が無かった時代もあったが、現在では芸者が不足する日もあるほどに座敷数を増やし、また舞台イベントをこなしている。こうした変化の背景には、芸者自らによる、日本の伝統芸能を担う存在であるという語りが欠かせない。そこでこのように芸者が語ることが、どのような意味を持つのかについてみていく。

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地域史の中の帝国日本と植民地

鳥取県旧Ｓ町周辺地域の移住者たち

鈴木文子

p. 139
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.139.0

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本発表では、主として鳥取県西部、旧S町とその周辺地域を事例に、日本の地域社会からみた植民地、庶民のなかに流布していた植民地の風景や、「内地」における<植民地>経験の一面を報告する。そして、戦前の地域社会における海外ネットワークの存在、＜植民地>経験が、その後の日本の多文化状況を検討する上で、重要な問題であることを検討する。

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引揚者が生み出した戦後の社会空間と混淆する文化

島村恭則

p. 140
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.140.0

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本発表の目的は、敗戦後の都市に出現した「引揚者」に焦点をあて、かれらをめぐる社会空間とハイブリッドな文化について報告することにある。引揚者」は広義の「移民」とも位置づけることができるのであり、かれらが生み出した文化は、それまでの日本社会にはなかった異文化とのハイブリッドな文化である。引揚者の生活実践とそれが構築してきたハイブリッドな文化の問題は、戦後日本の多文化状況を検討する上で看過できないものであり、これについての検討を行う。

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私の自由、他者の政治：在外イラン人の政治参加についての一考察

椿原敦子

p. 141
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.141.0

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2009年6月にイランで実施された大統領選挙の結果をめぐり、国内外で不正を指摘し、選挙のやり直しを求める声が高まった。イランでは路上で抗議する市民と警察との衝突が繰り返され、死傷者が続出した。抗議は民主化や人権擁護の要求へと発展し、在外イラン人も各地で抗議行動を展開した。本発表は米・ロサンゼルスでの街頭デモの参与観察を中心に、ディアスポラ状態にある人々を「祖国」の政治へと駆り立てるものは何かを考察する。

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祖先祭祀とエスニシティ

水上居民の新たな儀礼の試みを例に

長沼さやか

p. 142
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.142.0

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本発表の目的は、かつて水上居民であった人々が、近年新たに行うようになりつつある祖先祭祀に着目し、現代中国における儀礼的行為とエスニシティの関係を考察することである。正統な漢人として自己を同定しようとする水上居民たちの試みを通して、宗族の人々とのエスニックな境界、およびその跨越と儀礼との関連を検討し、現代中国におけるエスニシティと宗教的な営為との関係について議論する。

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周縁の民族誌

大阪府堺市の在日コリアン・コミニュティの事例から

宮下良子

p. 143
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.143.0

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本報告は、大阪府堺市の「被差別部落」に混住する在日コリアンに関して行ったインタビューおよびフィールドワークに基づく実証的資料をもとに、ひとつの地域社会における在日コリアンの生活世界や社会的ネットワークについて明らかにすることを目的とする。そして地域社会において在日コリアン、「被差別部落民」が構築する生活世界と、その社会空間の動態的な社会史の一端を示す。

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在日コリアンの民族芸能の継承

高正子

p. 144
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.144.0

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本発表の目的は、在日コリアンがその「民族芸能」をいかに伝承してきたのかを明らかにすることにある。そのことにより、在日自身が行うマイノリティ文化の本質化のプロセスに着目し、これと、在日が単なる「移住者」から「在日」、さらには「在日コリアン」と日本社会における「配置」の問題を検討する。

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「混線」する文化の民族誌

「多文化共生」以前の神戸・長田

岡田浩樹

p. 145
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.145.0

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本報告の目的は、現在の多文化状況の基盤である地域社会の近代において、どのような形で多文化が「混線」していたかを報告することである。このことは、そのまま多文化共生研究において、しばしばそれ以前の地域社会の社会文化空間の複雑なダイナミズムが捨象され、結果としてあたかも1990年代のグローバル化以前の日本社会を「単一民族国民国家」のイメージで捉えていることの批判を試みる。

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福祉国家に埋め込まれた贈与

高橋絵里香

p. 146
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.146.0

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本発表は、社会福祉の議論の中に見られる人類学的アプローチの検討を通じて、福祉国家を初めとする現代世界の現象を語るための新たな着眼点を探る試みである。具体的には、社会政策学者リチャード・ティトマスの献血に関する研究を糸口として、福祉国家における連帯とボランタリズムについて考察を進め、_丸1_ 全体論という分析手段そのものに含まれた道徳性 _丸2_ 近代という対象の分別困難性という問題について考察していく。

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憑依における主体帰属をめぐって

高橋慶介

p. 147
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.147.0

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本発表は憑依の振る舞いと言説に関する試論である。まず、ブラジルのカンドンブレの憑依を事例に、憑依霊が明確に憑依霊として言及される一方、憑依霊の振る舞いからは、ミディアムと憑依霊のどちらに主体が帰属するか曖昧になるという事実を指摘する。次いで、憑依霊の現前の仕方を確認し、振る舞い上の曖昧な主体帰属という現実と言説上の明確な主体帰属という解釈に基づく認識を考察する。

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エドゥアルド・ヴィヴェイロス＝デ＝カストロとは誰か

ペルスペクティヴィズモの思想を中心に

佐々木剛二

p. 148
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.148.0

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本発表では、ブラジルの人類学者エドゥアルド・ヴィヴェイロス＝デ＝カストロの略歴、及びその仕事の概要を紹介した後、彼の理論の核心となっている「ペルスペクティヴィズモ（perspectivismo）」の考え方について詳しく論じることによって、その思想的背景や理論的射程に言及し、関心を持つ日本語話者の研究者たちの議論の発展に資することを目指す。

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国際退職移住の商品化

ロングステイ・ツーリズムと日本人高齢者

小野真由美

p. 152
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.152.0

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本発表では、日本人高齢者の海外移住・長期滞在と観光産業の関連を分析し、国際退職移住の商品化について考察を試みる。近年、少子高齢化の進展する日本を離れ、老後を海外で暮らす日本人が増加の傾向にある。本発表では、「ロングステイ（海外滞在型余暇）」として知られるロングステイ・ツーリズムにおける日本人高齢者の国際退職移住の商品化の過程を、観光産業、メディアの表象、受入国マレーシアの政策の三点から考察する。

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“牧畜”の行方と「チベット文化」

青海チベット、黄河源流域の「生態移民村」を事例として

別所裕介

p. 153
発行日: 2010年
公開日: 2010/12/20

DOIhttps://doi.org/10.14890/jasca.2010.0.153.0

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中国青海省の黄河源流域に暮らすチベット牧畜民は、躍進する中国経済の安定的発展に資するため、数十年に及ぶ放牧活動の休止を余儀なくされている。本発表では、「生態移民村」に定住を余儀なくされた人々自身の移住後の資源獲得戦略に目を向けることで、対面的な日常世界の文脈を離れたグローバルな政治空間で展開される「文化保全の正当性」をめぐる攻防を相対化しつつ、移住先での生活圏の再構築に資する視点の提示を行う。

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