日本文化人類学会研究大会発表要旨集
Online ISSN : 2189-7964
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日本文化人類学会第47回研究大会
選択された号の論文の208件中101~150を表示しています
D会場(527 教室) 第二日目 6 月9 日(日) 9:00-16:55
個人発表
E会場(526 教室) 第二日目 6 月9 日(日) 9:00-16:55
  • 照山 絢子
    セッションID: E03
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    本発表では、近年において医療や教育の分野で急速に注目されるようになっている「発達障害」をとりあげ、診断基準や疫学的なデータの曖昧さからその実体性を疑問視する見方があることを指摘しつつ、当事者による身体感覚に根ざした障害経験のナラティブの意義を問い直し、両者の理論的接合を目指す。
  • 薬を通して感覚を比べる
    モハーチ ゲルゲイ
    セッションID: E04
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    本発表では、差異化における論理と感性の相互関係の視点から創薬の実践を描き出す。具体的な事例として、ハンガリーの治験センターで行われた調査を紹介し、病気における科学的真理と、身体感覚との関係性について明らかにする。臨床試験は、様々な流動的な状況において、薬の科学的な理性を追究するなかで、感性的な患者が出現するという過程である。ここでは、この治験における感覚と差異化の問題を分析の中心課題とする。
  • フィンランドの親族介護支援制度にみる個と範疇
    高橋 絵里香
    セッションID: E05
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    本発表は、供給主体の複数化という形での分業を推し進める現在の社会制度が、多様なアクターをどのように理解しているのかという問題について、フィンランドの親族介護者支援制度の実施過程を通じて考察する。親族介護を職業として遇することで、ケアワーカーの専門性や家族の意義が問い直される事態が生じている。その分析を通じて、家族・介護・支援といった概念を再考し、社会政策を人類学的に記述する方法と可能性を模索する。
  • フィリピンの末期腎不全患者による苦痛の語りに関する一考察
    島薗 洋介
    セッションID: E06
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    多くの解釈(学)的アプローチを志向する研究者たちは、生理学的・生物学的な記述と説明の対象としての「疾患から人間的な経験としての「病い」を区別し、後者を独自の理解・解釈の対象とした。こうした研究において、特に重要な意義を持ってきたのは「語り/物語」の概念である。医療人類学におけるこうした「物語(論)的アプローチ」の意義は疑いえない。しかし、そこでは、疾病体験の身体性が軽視される傾向がある。それでは、他者の身体体験としての「病い」へのアプローチとはどのようなものか。「語り」を手がかりに他者の疾病経験の身体的次元にどのように接近しうるのか。本発表では、自らのフィリピンにおける末期腎不全患者の疾病体験に関する調査の成果をふまえながら、その一つのあり方を提示することを試みる。掻痒感、疲労感、喉の渇き、吐き気、関節の痛みといった具体的な感覚的経験についての語りを提示しつつ、レヴィナスの「糧の享受としての生」「生の享受」「感受性」「情動性」などについての洞察を参照にしつつ、感覚的経験の意味について考察する。
  • 死をまぢかに控えた人間はなぜリハビリテーションを受けるのか
    松岡 秀明
    セッションID: E07
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    死が近づいてくると、身体的機能が低下してきて生活を営む上で不可欠な基本的動作を行なうことが困難になってくる。そうした時、彼らにとって最も切実な問題となるのは、歩行と排泄である。寝たきりになること、排泄行為を自分の意志でコントロールできなくなることは、大きな精神的苦痛となりうる。本発表は、死に近い人々が衰えていく身体に対してどのように抗うのかを、緩和ケア病棟の患者、医療従事者の体験にもとづいて検討する。
  • ガーナ南部のヘルスセンターを事例として
    浜田 明範
    セッションID: E08
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    本発表の目的は、ガーナのヘルスセンターにおけるドキュメントの取り扱い方を素描することにより、<複数の統治実践の連鎖>という視角を提示することにある。ドキュメントは、権力を作動させる必須のテクノロジーとしてたびたび言及されてきているが、ドキュメントの作成は未来における自己の行為を現在において方向づける実践でもある。本発表では、ドキュメントを通じた自己統治と他者の統治が干渉する様子を描きだす。
  • カンボジア王国プノンペン市にある精神科外来での診断過程から
    吉田 尚史
    セッションID: E09
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    本発表では、カンボジア人精神科医師の患者診断プロセスに関して考察する。精神医学教育は英語で行われるが、診察場面において使用される言語はクメール語である。そのため彼らは、診断過程においてクメール語から英語に翻訳をして、英語で思考している。もともとあるローカルな精神疾患概念が、グローバルに拡大しつつある欧米起源の精神医学概念を通して、どう解釈されるのか。現地で得たデータをもとに発表する。
  • 「生命倫理法」にみる卵子売買防止策の医療人類学的考察
    渕上 恭子
    セッションID: E10
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    女性の不妊が離婚の要件となり卵子売買が絶えない韓国で、2008年に卵子の有償提供を禁じた「生命倫理法」が改正され、不妊女性間でエッグ・シェアリングを行う際の実費補償が認められた。この法改正は患者達の「同病相憐」の精神に訴えて不妊治療に必要な卵子を分かち合い、卵子売買を防止することを意図したものである。本報告で同法の卵子売買防止策を医療人類学の視点から検討し、韓国社会になじむ卵子提供の方策を考えてゆきたい。
  • 既婚女性の乳がん患者の事例
    澤野 美智子
    セッションID: E11
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    韓国では否定的感情の蓄積が乳がんの原因として認識されている。特に既婚女性の患者は、家族内で担ってきた自己犠牲的なケア負担を病因と関連づける。病いを治すための女性患者たちの行為は家族成員をまきこみ、家族内のケアを変化し再構成させる。しかし婚家に対しては接触を避けるなどの消極的な対処を行い、〈家族ならざるもの〉として区分する。ケア要求をめぐって相互に働きかける範囲で家族が再構築されている。
  • 生活障害を抱えた釜ヶ崎の結核患者に対する服薬支援の取り組み
    西 真如
    セッションID: E12
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    本報告では、生活障害(日常生活の質を保つのに必要なスキルの広範な欠如)を抱えた釜ヶ崎の結核患者に対して服薬支援の活動をおこなっている、医療NPOスタッフや共同住宅経営者の取り組みについて検討する。またそのことを通して、既存の家族制度や会社組織に統治されない者として生きてきた元日雇労働者が、ケアされる身体を抱えた者として釜ヶ崎の地域社会に受容される過程について考える。
個人発表
F会場(531 教室) 第二日目 6 月9 日(日) 15:00-16:55
個人発表
H会場(533教室) 第二日目 6月9日(日)
  • ジャーティヤ概念を生活の場に差し戻すこと
    鈴木 晋介
    セッションID: H09
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    スリランカの「ジャーティヤ」という語は、従来「民族」や「カースト」等を指す多義的な概念として捉えられてきた。だが、それはもはや「ひとの種類」としかいいようのない曖昧さをもって生活の場に姿をみせる。本発表は、このジャーティヤという概念を、生活の場のひとの種類の実践的編成の水準に遡って捉え直すことで、スリランカ人類学における民族論、カースト論を発展的に継承していく道筋を議論する。
  • インド、ブータン国境地帯の事例から
    脇田 道子
    セッションID: H10
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    会議録・要旨集 フリー
     インド北東部に位置するアルナーチャル・プラデーシュ州のタワン県、西カメン県、そして地続きの山岳国境を隔てたブータン東部のサクテン、メラ地区は、両国の中でも開発の遅れた辺境地域である。その主たる住民であるインド側のモンパ、ブータン側のブロクパは類似の文化を共有し、民族的にも近縁関係にあるが、いずれもそれぞれの帰属する国家の中では少数派の集団である。 1959年のダライ・ラマ14世のインド亡命、それに続く1962年の中印国境紛争は、チベットとの文化的、経済的関係が濃厚であった両地域をそれぞれの国家との関係強化へと向かわせる大きな転換点となった。それから半世紀経ち、両地域とも、近年になって外国人ツーリストの入域禁止が緩和され、逆に観光開発の対象地として注目されはじめている。本発表では、インド、ブータンの国境地帯に住むモンパとブロクパとが迎えつつある近代化の諸相を始まったばかりのツーリズムを軸に考察する。
  • ヒンドゥー女神寺院における贈与に関する調査研究
    國弘 暁子
    セッションID: H11
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    本発表は、南アジア地域における贈与に関する先行研究を踏まえて、インド、グジャラート州のマヘサナ県に位置するヒンドゥー女神バフチャラー寺院に巡礼する人々と、その巡礼者を寺院で待ち構える女神の帰依者ヒジュラとが係わり合う契機となる贈与の意義を明らかにすることを目的とする。
  • 南インドの村の女神の高級化とホラーなものの力を事例として
    内山田 康
    セッションID: H12
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    人類学は哲学の概念を応用して民族誌に記述された問題を説明しようとしてきた。応用人類学が時の公共政策を受け入れて公共政策が既に対象化した社会の問題の解決を目指したのと同様に、人類学が既存の哲学の諸概念を使って社会現象を説明することの限界を本発表は取り上げる。このような哲学と人類学の非シンメトリックな関係をシンメトリックな関係にするために、人類学は何をしなければならないのか。私は南インドの不可触民を起源とするある女神寺院の高級化を事例に使い、ハーバーマスの公共圏の議論を応用して高級化の説明を試みる人類学的説明の限界を示すと同時に、民族誌的なデータを使って、公共圏の拡大の議論に内在する限界に光を当てることを試みる。
  • ムンバイにおける市民社会団体の選挙活動から
    田口 陽子
    セッションID: H13
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    本発表は、インドにおける政治社会とモラル社会の概念を参照しつつ、ムンバイの市民社会の代表性を検討する。現代インドの市民社会は、都市のミドルクラスの利益団体として政治社会の要求の政治に参入しているのか?あるいは、新たな関係性を求めるモラル社会における代表性が提示されているのか?彼らは誰を代表していて、それはいかに正当化されるのか?本発表では、市民活動家の選挙運動を事例として、これらの問いに取り組む。
  • 松川 恭子
    セッションID: H14
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    本発表では、19世紀から現在のインドにおけるナショナルな大衆文化の系譜のなかに西部インド・ゴア社会の演劇ティアトル(tiatr)の発生と展開を位置づける。新たな大衆文化と想像力のかたちが、インドのネーション意識形成だけでなく、地域アイデンティティの再編に果たしてきた役割を明らかにする。さらに、新たな想像力の形式を通じて、地域社会が現在のグローバル化された公共圏にアクセスする可能性について考える。
  • 左地(野呂) 亮子
    セッションID: H15
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    本発表では、フランス南西部のマヌーシュ共同体における死者に対する沈黙の敬意を、口に出されない死者の名前、語られない記憶、所有者の死に際して廃棄されるキャラヴァンを事例として考察することで、沈黙や所有物の処分という死者の痕跡をめぐるマヌーシュの態度が、単に死者の忘却につながるのではなく、死者の個別性や代替不可能性の保護と結びつき、独自の死の社会的解決を導くことを示す。
  • ――プロパガンダ表現の中に隠された「国民」を演じる「庶民」像――
    横田  吉昭
    セッションID: H16
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    第二次世界大戦中の日本においては、漫画は総力戦遂行のプロパガンダを担うマスメディアの一部として利用された。しかしその漫画には、生活の中に持ち込まれた戦時という非日常を、生活者が道化的に提示する構造が見られた。それは、国家体制にとって望ましい「国民」像を演ずる「庶民」という重層性を示すものである。これらの漫画構造からは戦後にも続く日本人の「国民」意識と普遍的な庶民像が見出される。
  • 英国カントリーサイドにおける観光案内所をめぐる動きから
    塩路 有子
    セッションID: H17
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    会議録・要旨集 フリー
     本発表は、コミュニティと観光のあり方に関して、コミュニティにおける観光案内所(TIC)をめぐる動きに着目し、英国カントリーサイドの1つのコミュニティにおいて、TICがどのように設立、運営されてきたのか、さらにTIC、観光に対する住民の認識や姿勢の変化について明らかにする。それらを通して、コミュニティと観光のあり方に関してコミュニティ側から考察し、TICや観光とコミュニティをつなぐ関係性の確立を模索する。
  • トルコ地中海地方パターラにおける遺跡保存と観光開発
    田中 英資
    セッションID: H18
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    本発表の目的は、トルコ地中海地方のパターラ遺跡を事例に、特に所有の観点から考古遺跡の遺産化と観光開発の関係の変化を検討することによって、文化遺産に利害を持つ人々の遺産に対する理解・関わり方を、その変化も含めて明らかにすることである。特に、遺跡発掘と復元作業の進展によって、パターラの地元住民や彼ら以外の利害関係者の間で、文化遺産保護を前提にした観光開発がどのように理解されてきたのかを考察する。
個人発表
I会場(513教室) 第二日目 6月9日(日)
分科会
8日(土) 14:30-17:25  D会場
分科会PDa 「映像の共有人類学 ―映像をわかちあうための方法と理論」
代表者:村尾静二(総合研究大学院大学)
分科会
8 日(土) 10:00-12:25 E会場(526 教室)
分科会PEa 「サファリングとケア、その創造性」
代表者:浮ヶ谷幸代(相模女子大学)
分科会
8日(土) 13:30-16:25 E会場(526 教室)
分科会PEb 「自己と〈異物〉の見えない関係 ―身体と外部との「境界」をめぐる不確実性」
代表者:市野澤潤平(宮城学院女子大学)
  • 身体と外部との「境界」をめぐる不確実性
    市野澤 潤平
    セッションID: PEb0
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    病気を引き起こす原因としての〈異物〉の身体内部への侵入および身体組織との相互作用は、しばしば当事者にとって「見えない」過程となり、大きな不確実性を生み出す。本分科会は、生物医学の知識・制度・技法を介した身体との関わりにおいて見いだされる不確実性への着目を通じて、身体と外部の「境界」というテーマを、不確実性やリスクをめぐる問題系において再構築することを、試みる。
  • 減量がはらむ不確実性を事例に
    碇 陽子
    セッションID: PEb1
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    本発表は、肥満が人口全体の健康問題とされ、減量への志向が強まるアメリカ(カリフォルニア州)でのフィールドワークをもとに、減量とそれに関連する行為の背景にある複雑で多様な問題群を明らかにする。そのうえで、「科学」が示す極めて単純なはずの減量が、当事者にとっては、自己の身体と食物の関係にかかわる不確実な事象として立ち現れてくる様態を描き出すことを目的とする。特に、当事者たちが太った原因と結果をいかに結びつけ、そのことが不確実性としていかにして経験されるのかを整理する。減量をめぐる不確実性に着目することによって、目的合理的であろうとする行為が、結果的に不可避に不確実性をはらむという問題をあぶり出す。
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