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イメージからフィールドへ
東 賢太朗
セッションID: A01
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/10
会議録・要旨集
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本分科会では、「楽園」についての表象やイメージを「楽園観光」の現場から再考する文化人類学の試みを提示する。「楽園」イメージや表象の歴史的な構築過程に加え、「楽園観光」の現在における成立状況に着目する。既存の観光研究におけるイメージ、まなざし、アイデンティティ、文化に関する議論から、観光の現場における物理的構成、体験、交渉や駆け引き、経済を中心に据えた議論への移行を試みる。
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バリ島ウブドの日本人観光ビジネスを中心に
吉田 竹也
セッションID: A02
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/10
会議録・要旨集
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本発表は、インドネシアのバリ島ウブドの日本人移住者の観光ビジネスに関する状況を取り上げ、楽園観光論とリスク社会論を架橋しようとする。リスク社会の中にある現代人は、生活圏のかなたに存在する楽園に癒しを求めて訪れる。しかし、それによる楽園観光の発展は、楽園観光地に生きる人々の生をさらなるリスク化へと巻き込みつつ、再帰的に作動するメカニズムを形成していると考えられる。
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フィリピン・ボラカイ島の「楽園」の喪失をめぐるノスタルジア
東 賢太朗
セッションID: A03
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/10
会議録・要旨集
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フィリピン・ボラカイ島では、大規模な観光開発によって環境破壊が継続的に進行している。本発表では、ボラカイ島の「楽園観光」の現場で流通する、過去へのノスタルジアを対象とする。「楽園」の喪失を継続的に嘆き続ける人々が、一体何を語り、行い、求めているのかを明らかにする。その上で、従来の観光のイメージや表象研究で用いられてきた「まなざし」や「虚構」という概念を、観光の現場から再考することを試みる。
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タイ・アンダマン海の「楽園」観光地における視覚をめぐる様相
鈴木 佑記
セッションID: A04
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/10
会議録・要旨集
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観光現象を成立させている重要な要素の一つに、人間の見る行為がある。これまでにも、「まなざし」論を中心として、人間の視覚に焦点を合わせた研究が行われてきたが、そのほとんどがツーリストの視点―多数のまなざし―を中心に据えた議論に終始している。そこで本報告では、タイ・アンダマン海に浮かぶ「楽園」観光地を舞台として取り上げ、同地に昔から暮らす少数民族の視点―少数の目―から観光現象を捉え直すことを試みる。
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ヴァヌアツ・アネイチュム観光からみるグローバリゼーション
福井 栄二郎
セッションID: A05
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/10
会議録・要旨集
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本発表は、観光という現象が人々の生活に与えた影響を考察するものである。その際、キーワードとして「類化(generification)」という概念を用いる。具体的には、ヴァヌアツ・アネイチュム島における観光の事例を通じて、①彼らが自分たちの文化を、異文化と比較しながら「創出する」プロセスと、②カヴァ飲み慣行という土着の文化が「類化」され、異なるコンテクストに位置づけられる現状を分析する。
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プーケットの日系ダイビング・ガイドの事例にみる「楽園」の裏側
市野澤 潤平
セッションID: A06
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/10
会議録・要旨集
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本発表は、タイのビーチリゾートであるプーケットにおける、日本人によるダイビング観光を対象として、そこでの「楽園」体験がいかにして構築されているのかを、子細に検討する。ホストとゲストの(さらにはもっと多様なアクターの関係の網の目における)相互作用による構築物として観光経験を捉える視座において、日本人観光ダイバーに加えてダイビング・ガイドの活動に焦点を当てて、考察を進める。
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二風谷アイヌ語教室の分析から
吉本 裕子
セッションID: A07
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/10
会議録・要旨集
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本発表では、語学を学ぶ場として開設された二風谷アイヌ語教室がその企図を超え創発的に生起した「相互依存の場」として機能していることに着目し、地域社会における本教室の存在意義を他の関連諸団体との関係性を考慮に入れつつ考察することを目的とする。教室の活動は語学学習の場という役割を超え、被傷した主体がレジリアンスを高める効果を持ち、民族の境界を越えて行政等へ働きかけるベクトルを包含していることを指摘する。
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北海道教育大学札幌校の事例から
百瀬 響
セッションID: A08
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/10
会議録・要旨集
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北海道教育大学では北海道出身者が多数を占め、学生は学校教育において副読本等からアイヌ文化・歴史を既習している。学生のアイヌイメージは、自然共生型の太古の文化、近世・近代における日本人による差別等に大分されるが、近年では縄文文化に比定される「孤立文化」「日本人による虐殺」が増加傾向にある。本発表ではこれらのイメージ形成の要因を分析し、アイヌ文化・歴史理解に必須と考えられる学習項目等について論じる。
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全体趣旨説明
瀬川 昌久
セッションID: A09
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/10
会議録・要旨集
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宗族は文化人類学的な中国研究の成立以来の古典的研究テーマであったが、中国社会の変動の中で、宗族自体が大きく変容するとともに、宗族を研究する研究者の視座も大きく変遷してきた。本分科会は、これら2つの変化を総括し、客観化して記述することを目指すとともに、現代中国におけるフィールドワーク事例をもとに、宗族研究の現代的意味と、新たな展開の可能性について展望する。
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―「分裂」か、あるいは「複製」か―
小林 宏至
セッションID: A10
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/10
会議録・要旨集
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本発表の目的は、福建省永定県客家社会における円形の集合住宅、客家土楼を調査対象とし、居住者による各部屋の所有形態を整理・分析することで、これまで宗族研究で一般的とされてきた「不均衡に発展した宗族の一分節が独立して新たな宗族を形成していく」という見解を再考することである。
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広東省東部汕尾の事例から
稲澤 努
セッションID: A11
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/10
会議録・要旨集
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福建省福州市郊外の移民母村の事例から
兼城 糸絵
セッションID: A12
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/10
会議録・要旨集
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本発表の目的は、福建省福州市のある移民母村でみられた宗族の「復興」と「新興」現象の分析を通して、現代中国において宗族であり続けることを選択する意味について考察を行っていくことである。特に、もともと地域社会における宗族のプレゼンスが高くない上に、移民からの経済的支援が衰退しつつあるというある種の危機的状況においても、なぜ彼らが宗族としてあり続けようとしているのかという点について検討していく。
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親族研究の新たな可能性に向けて
川口 幸大
セッションID: A13
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/10
会議録・要旨集
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本発表では、中国における父系出自集団としての宗族に着目し、その形成から今日にかけての国家の政策、および当事者たちによる意味づけと関わり方の変遷を明らかにする。そして、親族と国家との相互的な関係性と、社会の中でのその布置のされ方に着目した親族研究についての新たな可能性を提示する。
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競合論から整合論へ
河合 洋尚
セッションID: A15
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/10
会議録・要旨集
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1990年代以降、英語圏では景観人類学という領域が注目を集めるようになっている。本分科会では、日本では知られることの少ない景観人類学の研究史を整理するとともに、その主要な理論モデルの一つである競合論を再考する。さらに、日本、中国、アメリカ、サウジアラビアの事例より、政府、企業、学者、定住者、移民などにより紡ぎだされてきた異なる景観が整合する側面を描き出し、新たな理論モデルとして整合論を提示する。
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京都・嵐山における景観保全のための住民組織の活動を手がかりに
岩田 京子
セッションID: A16
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/10
会議録・要旨集
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景観の生成は、地域で生活する「内部」と権威的な「外部」の対立や差異を重視する観点から注目されてきた。しかし雑多な内部の意志が統一される過程には検討の余地がある。本発表では京都嵐山における、外部資本による建築計画への地域住民の抵抗や、1930年代以降の風致保全策に関して分析し、外部と内部を行き来する専門家の活動が大きな機能をはたすこと、議論の場を通じてローカルな「場所」性がつくられていくことを示す。
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ザムザム・タワー建設とマッカ宗教景観論争をめぐって
安田 慎
セッションID: A17
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/10
会議録・要旨集
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本発表は、サウジアラビア・マッカにおけるアブラージュ・アル=バイト(通称ザムザム・タワー)をめぐる宗教景観論争を論じながら、世界各地のムスリムたちがこの新たなマッカの姿をいかに他人と共有しようとしてきたのかを論じるものである。特に、マッカの新たな姿に対する承認や批判を行い、他人と宗教景観を共有していく場が多様な場面で出現し、その場での作業を通じて「共有の連鎖」が生み出されてきたことを示していく。
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ビバリーヒルズ市におけるデザインレビューのプロセスから
椿原 敦子
セッションID: A18
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/10
会議録・要旨集
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本発表は、景観をめぐるコンフリクトの調停を、集団間のまなざしの相互作用の過程として考察する。このためロサンゼルスにおいて移民たちが建てた「パージャン・パレス」の俗称をもつ建築をめぐる議論を事例とする。具体的には、市の定める家屋デザイン計画の審査(デザインレビュー)における行政側と建築家の直接交渉の場で、デザインの改善を求めるコミッションのメンバーの間でどのようなやり取りがなされているかを分析する。
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中国客家地域における文化的景観の競合と整合
河合 洋尚
セッションID: A19
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/10
会議録・要旨集
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本発表は中国広東省梅州市における文化的景観創出のポリティクスを考察する。客家の故郷として知られる梅州市では近年、政府の指導下で「客家らしい」景観が建設されているが、その景観は地域住民ではなく、海外華僑のイメージに沿ったものとなっている。本発表では、それに対し、地域住民が外部者によりつくられた景観を領有すると同時に祖先から伝えられた景観を存続させてきた過程を、構造色の景観という概念から考察する。
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比較民族誌研究
西本 太
セッションID: A20
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/10
会議録・要旨集
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本分科会は4つの民族誌的事例の比較に基づき、動物殺しに向けて特定の人間と動物個体とが殺す側と殺される側の役割関係のなかに組織、配置されていく過程を明らかにすると同時に、人間の自己定義に動物殺しがどう関係しているのかを考察する。4つの事例は2本の軸で比較検討される。第一の軸は狩猟か儀礼的屠畜かという舞台設定に関わり、第二の軸は外部エージェントとの関わりの濃淡に関係する。
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パプアニューギニア、アンガティーヤ社会における狩猟が成功するための条件
吉田 匡興
セッションID: A21
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/10
会議録・要旨集
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パプアニューギニア、アンガティーヤ社会では、「動物を殺す」行為は「肉を得る企て」として、現代日本を含む(ポスト)産業社会とは異なり、多くの人びとにより平然とかつ巧みに行われている。「われわれ」にとっては困難な「動物殺し」の担い手を作り出す日常生活の構成と狩猟の現場での経験を明らかにしつつ、人が「動物殺し」の担い手になるしくみを描出し、「担い手」であることと人びとの自己認識との関係を検討する。
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バリにおける家内的屠畜の衰退と専業的屠殺人の成立
中野 麻衣子
セッションID: A22
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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インドネシアのバリでは、家内的・自家消費的屠畜が急速に衰退・消滅しつつあり、代わりに専業的屠殺業が発展している。この過程を「殺さない主体」と「見えない殺し手」の出現という視点から考察し、動物殺しに対する人々の意識や態度をどのように変化させていくのかを論じる。
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サラワク・プナンにおける狩猟の組織化
奥野 克巳
セッションID: A23
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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マレーシア・サラワク州のプナンの狩猟者は、一方で、野生動物の行動特性を把握し、模倣するという、動物との間で感覚的な連続性を保ちながら、他方で、狩猟場面では、動物を自己から断絶し、客体化した上で、獲物としてしとめる。本発表では、そうした一見すると矛盾するような二つの態度の往還の先に、狩猟が組織化される舞台へと接近して、「殺される動物」と「殺す人」が立ち現われるさまを民族誌のなかに描きだす。
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南部エチオピアの牧畜民ボラナ・オロモにおいて殺しの担い手となること
田川 玄
セッションID: A24
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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本発表の目的は、エチオピア南部からケニア北部にかけて居住するオロモ系牧畜民ボラナ(Borana Oromo)の儀礼的な殺害行為の民族誌的な報告と考察を行うことである。北東アフリカ地域では敵の殺害によって男性性と豊饒性がもたらされるという観念が報告されているが、本発表では敵の殺害だけでなく儀礼的な動物殺しをも視野に入れる。そのうえで儀礼的な殺害について、殺される対象、殺しの担い手、殺すプロセスという三点に注目し、ボラナにおける儀礼的な殺害行為について民族誌的な報告を行い、男性としての主体形成のあり方について検討を加えたい。
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開発実践・援助実務・政策研究の「現場(フロンティア)」より
佐藤 峰
セッションID: B01
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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如何に人類学者は「開発援助の最終受益者のリアリティ(当事者目線)」を開発援助の枠組みに反映していく仕組みを作ることで「変化(住民主体で包摂的な社会の実現)」」をもたらしていけるのか。本発表では、筆者の経験してきた開発援助の様々な「現場」(①途上国での社会開発の実践、②先進国での社会開発・人材育成に関係する援助実務、③政策研究)の振り返りより考察し、その課題と展望を整理する。
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コミュニティーガーデンボランティアの視点
池田 陽子
セッションID: B02
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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本発表では、マンハッタンの二つのコミュニティーガーデンで行った参与観察やインタビューを基に、ニューヨーク市の緑化に貢献してきたコミュニティーガーデン運動の長期に渡る継続と成功を可能にしたのは何かを問う。特に、この住民主導の環境運動の根幹を担っているガーデンボランティアの日常の活動や運営委員会の様子に着目する。また、彼らの視点を通し、「共同」の緑地作りとその維持の意義について考察する。
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「失敗」の意義の相違について考える
渋谷 節子
セッションID: B03
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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教育の現場でもグローバルな競争が繰り広げられる現在、「失敗」をどうとらえるかという違いが、日米の教育の現状、そして社会のおける若者によるチャレンジの違い大きく影響しているのではないか。この発表では、教育の現場である学校に焦点をおきながら、家庭、またビジネスや政治の世界での調査研究をもとに、「失敗」に対する日米における捉え方の相違について考え、それがいかに現在の日本とアメリカの社会のあり方に影響しているかを考える。
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財産相続と養老にみる合同家族化
杉本 敦
セッションID: B04
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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社会主義政権の崩壊から20年以上を経、EU加盟も果たした現在のルーマニアでは、グローバル化に伴う産業化と商業化が農村部にも及び、農民の離農が進み、伝統的な牧畜業を継ぐことを望む子どもが急速に減少している。本発表は、このような状況下で、ルーマニア農村家族が直系家族による牧畜経営体ゴスポダリエの形態から、両親とすべての子ども夫婦を含む合同家族的なファミリエの形態へと移行しつつある現状を考察する。
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後藤 正憲
セッションID: B05
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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近年の社会科学の分野では、ロシアや他の旧社会主義諸国において経済活動を行う主体のアントレプレナーシップ(起業家精神)を扱った研究が多くなされている。その中で、個人や団体から成る企業的主体のアントレプレナーシップは、強権的な国家や社会主義的な文化の対立点に置かれている。報告では、ロシアのチュヴァシ農村における個人経営者と消費者協同組合の活動を事例として、こうした議論の妥当性を検証する。
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イギリスのグラストンベリーでのフィールドワークを事例として
河西 瑛里子
セッションID: B06
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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本発表では、発表者によるイギリスでのフィールドワークを事例として、文化人類学における調査者と被調査者との関係性について考える。特に、調査者が当事者意識をもちやすいオルタナティヴ・スピリチュアリティという、新しい形で宗教的な事柄を実践しようとする人々を対象とする。そのうえで、ヨーロッパを人類学の対象とする意義について、欧米人の被調査者と非欧米人の調査者という観点から考察したい。
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現代美術と作品の位置づけに関する一考察
登 久希子
セッションID: B07
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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本発表ではニューヨークの非営利芸術組織フランクリン・ファーネイス・アーカイヴ(Franklin Furnace Archive, Inc.)を事例に、設立の直接的なきっかけとなったアーティスト・ブック(Artist’s Book)を取り上げ、あるモノが現代美術の作品として位置づけられる、または位置づけられない様について、作品自体のはたらきに着目して考察する。
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現代キューバのクラシック音楽実践をめぐるモノとヒトの動態
田中 理恵子
セッションID: B08
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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本発表は現代キューバのクラシック音楽実践を事例とした芸術人類学的研究である。近年の研究では実体としての「モノ」から芸術を理解する傾向にあったのに対し、本研究では音楽の問題にとりくむことにより、芸術作品の「存在」よりも「生成する」諸相に焦点を当てる。「物がない」「人がいない」といわれる当該社会状況において、いかにモノ・ヒトを媒介として音楽が生成する(=「音楽になる」)のかを検討する。
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現代ブエノスアイレスのタンゴ・シーンにおける男・女・音楽
武田 優子
セッションID: B09
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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南米アルゼンチンの首都ブエノスアイレスでは、一般の人々がタンゴを踊るミロンガと呼ばれる社交場が、週に百以上開催されている。本発表の目的は、ミロンガで共有されている暗黙の了承事項(códigos)を解きほぐすことを通じて、音楽と身体を媒介とした、人と人のふれあい過程における情動的なものについて具体的に考察することにある。
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現代における日本刀の継承と創造
青木 啓将
セッションID: B10
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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本発表は、日本刀製作者刀匠(刀鍛冶)にとっての「生きるための刀」、すなわち自身の生計を維持していくために製作される刀と刀匠各々に目指される刀の違いと、これらの違いを生む社会背景に焦点を当て、日本刀の現代的な創造のあり方について検討する。 それを踏まえ、日本刀のどのような価値・意味が継承され、また現代において創造されようとしているのかを考える。
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日本における葬儀業の活動事例を通じた現代的ライフエンディングの探究
田中 大介
セッションID: B11
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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本発表は日本におけるライフエンディング、すなわち「人生の終末や近親者との死別に備える準備行動」に焦点を当て、その関連サービス業である葬儀業の活動を題材に用いながら、ライフエンディングの中核にある「死の設計」という思考の社会的浸潤を探究することを目的とする。また、現代的ライフエンディングの多様性・多元性を捕捉し、それに対応した民間職能サービスのありかたについても試論的考察を与えたい。
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墓の建立と維持、そして日常に復するということ
鈴木 洋平
セッションID: B12
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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本発表は、死者と残された者が、互いの理解と論理を調整していく場として墓をとらえ直す。死者への対処を通じて日常に回帰して行くための場として墓を見出すことにより、維持される場所としての墓の連続的な性格をとらえることが可能となる。死という事態が「納得」され、日常へ回帰するプロセスの中で連続的に再定義が繰り返される墓のあり方を、日本および台湾の事例に基づくマルチケース・スタディから試みる。
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道信 良子
セッションID: B15
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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日本では小児医療における医療技術の進歩で、病気で亡くなるこどもの数は少なくなった。世界に目を向けると、状況は大きく異なる。本分科会では、こどもたちの生きる場である、まわりの生態系や社会環境、そこで発達した子育ての方法や医療の技術などが、互いにどのように関係し合いながら、こどもとおとなとのかかわり方に影響を与え、それぞれの場に特有のこどものいのちの時間を生み出しているのかを考える。
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荒木 奈緒
セッションID: B16
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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看護学は、看護の対象である人間(患者)を健康および自立、あるいは平和な死を獲得するために支援を必要としている者と捉える。また、病いは常に健康への回復過程であり、健康とは生活の質そのものであるとしている。つまり、いのちとかかわるということは、患者の生活とかかわることである。こうした看護学の視座から、周産期医療の中で生きる子どものいのちと看護師のかかわりを、事例を通して考察する。
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子どもの生きる力を育む関わり
西方 浩一
セッションID: B17
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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本発表では「食べる機能」に困難をきたした子どもたちと、その子どもたちを取りまく介助者・道具などの環境との関わりについて作業療法の観点から論じる。作業療法では、障害・発達段階に対応した子ども・環境の評価および支援を通じて、子どもの環境への働きかけである、能動的・主体的な食行動を促していた。子どもは、この主体的な行動を増やしながら成長し、生きる力の源を作ると考えられた。
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子どもとのコミュニケーションを中心に
幅崎 麻紀子
セッションID: B18
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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ネパール・バフン社会において、子育ては家族や共同体が積極的に関わって行われてきた。しかし、近年の子どもの健康・栄養等の啓発教育の下、育児の担い手として母親にその「役割」と「責任」が集中し、共同体の支える育児から母親による育児へと育児観が変容しつつある。母子保健政策を通して育児の主たる担い手として同定され責任を課された女性たちは、就労のために常に子どもの傍にいて育児ができない状況を憂うこととなった。
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身体と資源利用に注目して
亀井 伸孝
セッションID: B19
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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開発途上国・地域における障害をもつ子どもに関わる理論的課題を整理し、そのいのち・暮らしと向き合おうとする際の、生態人類学的観点、手法の有用性と、それがもたらしうる効果を示す。セネガルやカメルーンの事例を検討し、障害をもつ子どもたちの資源利用のありかたを例示するとともに、開発途上国・地域の障害をもつ子どもたちと向き合うことは、障害をめぐる本質主義的な言説を相対化する効果をもちうる側面を指摘する。
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台東県太麻里渓域の有機アワ栽培プロジェクトの事例
林 麗英
セッションID: B20
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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台湾の台東県太麻里郷においてあるパイワン族、アミ族、漢族といった混住村落において、政府機関と民族・宗教の境界を超えたNGO・NPOが取り組んだ有機アワ栽培プロジェクトの実践経過に焦点をあてる。彼らの実践に伴って、それまでは民族・宗教を超えた協働活動が強まった過程、その結果生じたエスニシティの自他意識と、国策に左右されるパイワン族の主体性のはざまに見いだしたソーシャルキャピタルの特徴を考察することにある。
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現代台湾の多文化主義とその集合的実践
田本 はる菜
セッションID: B21
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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多文化主義政策において、「個人」とは別に配慮の対象となる「集団」は、異なる利害をもった人びとのあいだで状況的に取り結ばれ、切り離される紐帯を想定していないのではないか。本発表では、多文化主義的政策が進められる台湾において、オーストロネシア語族系先住民(「台湾原住民族」)による伝統的・知的創作と位置付けられるようになった、織物・服飾とその商業的展開の事例をもとに、この問題について検討したい。
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ソロモン諸島ガダルカナル島北東部の日常生活から
藤井 真一
セッションID: B22
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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ソロモン諸島では1999年から2003年にかけて「エスニック・テンション」と呼ばれる武力紛争があった。ガダルカナル側武装集団の排斥対象は主にガダルカナル島内に暮らすマライタ島出身者であったが、ガダルカナル島民もまた武装集団を恐れて自身の集落を離れて別集落へ島内避難していた。本発表では、紛争に際して島内避難したガダルカナル島村落部の人びとの生活実態と生存戦略を明らかにし、平和と紛争の関係を考察する。
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バヌアツ共和国エロマンガ島の事例より
大津留 香織
セッションID: B23
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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葛藤解決のプロセスにおいて、RJ分野で想定されている「修復」の内容と「時間軸」について、エロマンガ島ポンツツ地方における一連の葛藤事件の事例から明らかにする。
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コソボにおけるアルバニア系住民の紛争の記憶を事例にして
吉村 美和
セッションID: B24
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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コソボでは、1996年から1999年にかけて、コソボ独立をめぐる紛争が勃発しセルビア系住民とアルバニア系住民の対立が深まる中、虐殺や空爆が行なわれることで多くの死者が生じた。本発表では、紛争時に被害を受けたアルバニア系住民家庭への参与観察から得た記録をもとに、紛争によって人々は何を失ったのか、また、紛争が喪失をもたらしながらも、彼らの生がその喪失の想起と共にある様子を考察する。
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ナイジェリアの都市イレ・イフェにおける「アート」の市場と「アーティスト」の実践
緒方 しらべ
セッションID: C01
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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本発表は、ナイジェリアの都市イレ・イフェで暮らす「アーティスト」を事例に、彼らの作品の市場、そして作品制作・生活・語りにみられる彼らの実践を検討する。これによって、これまでの芸術の人類学においてほとんど議論されてこなかった、地域社会を生きる「アーティスト」が西洋近代の言説としてのアート/芸術とどのように関わっているのかについて、「アート」のつくり手である「アーティスト」の視点に注目して考察する。
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エチオピア南西部カファ地方におけるエコ信仰の盛衰
吉田 早悠里
セッションID: C02
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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本発表は、エチオピア南西部カファ地方における在来宗教であるエコ信仰の盛衰について、エコ信仰の中心的役割を担う霊媒師アラモの実践に焦点をあてて考察する。そして、エオピアの政権交代や社会・経済・政治的変化のもとで、エコ信仰がどのように変化してきたのか、そのときアラモはどのように対応してきたのかを明らかにし、今日、エコ信仰が信者を失って社会・政治・宗教・道徳面で周縁化しつつある要因について論じる。
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ケニア海岸地方ドゥルマのキリスト教と妖術
岡本 圭史
セッションID: C03
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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ケニア海岸地方のドゥルマの間では、隣人に紛れ込む妖術使いや、多様な霊的存在が不幸の原因として知られている。ドゥルマのキリスト教徒は、主に祈りや断食を通じて妖術や霊から身を守ろうとする。改宗の経緯をめぐる信徒達の証言においては、妖術使いや霊といった霊的リスクへの対処法として改宗が捉えられている。本発表の目標は、想像された世界の内部におけるリスク回避戦略としての改宗の在り方を捉えることである。
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村尾 るみこ
セッションID: C04
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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アンゴラでは2002年までの約半世紀にわたって独立解放闘争と内紛が続き、国民経済が壊滅した。その後今日までに高い経済成長を遂げるなか、東部農村では隣国ザンビアからの帰還民や国内避難民らが農耕を基盤におく生計活動を再開している。本発表では、フィールドワークで得た情報資料をもとに、研究蓄積の希薄なアンゴラ東部農村における農民らの生計活動を明らかにし、今後の展開について検討したい。
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ニジェール西部ソンガイ系社会の土地制度をめぐる所有と情動
佐久間 寛
セッションID: C05
発行日: 2014年
公開日: 2014/05/11
会議録・要旨集
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ニジェール西部ソンガイ系社会の土地制度が、土地の惜しみない贈与者への畏敬や、その呵責なき収奪者への恐怖といった情動に下支えされている点を明らかにし、排他的な権利主体の実在を想定する西欧近代的所有観の再考を試みる。
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