本発表の目的は、サモアの障害者支援NGOロト・タウマファイ(loto taumafai)による地域巡回支援活動に対する分析から、<圏>としての「障害者」という視点を提示し、その構成原理を探ることにある。1994年にWHO・ILO・UNESCOの国連3機関が合同で「CBR(Community Based Rehabilitation)」に関する共通指針を発表して以来、新たにリハビリテーション活動が展開されるようになった地域では、国家による制度的な規定が行き届く前に、NGOなどが提供するサービスの利用を通して逆に「障害者」というものが立ち現われてくるという現象が生じている。本論では、地域巡回支援における相互行為に関する事例を、これまでのリハビリテーションや障害概念の受容をめぐる議論のなかに位置づけ、それらを通して立ち現れるようになった「障害者」を何らかの社会集団としてではなく、<圏>として捉えてゆく見かたを提示したい。