日本文化人類学会研究大会発表要旨集
Online ISSN : 2189-7964
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日本文化人類学会第48回研究大会
選択された号の論文の115件中101~115を表示しています
研究発表
  • パプアニューギニアの石油開発と「クラン」
    槌谷 智子
    セッションID: E09
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/11
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    パプアニューギニアで開始された石油開発とそれによって生じた土地紛争を通して、土地所有集団としての「クラン」とは何かを考察する。石油開発の開始以降、土地所有者は「クラン」であるとして、法人化された。「クラン」は歴史的にさまざまな理由で併合や分裂を繰り返してきた。石油開発地域を所有する「本当のクラン」をめぐって係争された裁判の事例から、問題を考察する。
  • サモア社会における障害者支援NGOロト・タウマファイの活動から
    倉田 誠
    セッションID: E10
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/11
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     本発表の目的は、サモアの障害者支援NGOロト・タウマファイ(loto taumafai)による地域巡回支援活動に対する分析から、<圏>としての「障害者」という視点を提示し、その構成原理を探ることにある。1994年にWHO・ILO・UNESCOの国連3機関が合同で「CBR(Community Based Rehabilitation)」に関する共通指針を発表して以来、新たにリハビリテーション活動が展開されるようになった地域では、国家による制度的な規定が行き届く前に、NGOなどが提供するサービスの利用を通して逆に「障害者」というものが立ち現われてくるという現象が生じている。本論では、地域巡回支援における相互行為に関する事例を、これまでのリハビリテーションや障害概念の受容をめぐる議論のなかに位置づけ、それらを通して立ち現れるようになった「障害者」を何らかの社会集団としてではなく、<圏>として捉えてゆく見かたを提示したい。
  • マオリ建築の変遷とマオリポリティリクス
    神山 歩未
    セッションID: E11
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/11
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    本発表は、現在ニュージーランド・マオリの文化的アイデンティティの拠り所とされている集会場マラエについて、建築様式上の変遷とマオリ・ポリティクスとの関連において検討するものである。マラエは西洋接触の後、様々に変化してきた。それは「伝統的」文化の再創造過程をよく示すものである。マラエの変遷から、状況にあわせて西欧文化を巧みに利用するマオリ・ポリティクスの柔軟性とダイナミズムを読み取ることができる。
  • ハワイの茶道グループを事例として
    宮内 壽美
    セッションID: E12
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/11
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    ハワイ社会で裏千家流茶道を文化活動として続ける日本人女性グループの活動の選択決定は、裏千家の持つ茶家としての文化的正統性と、家元制度組織の一員であるという帰属意識によるが、これらの要素に現地社会での伝統的文化活動への捉えられ方が加わることで、茶道は彼女たちのアイデンティフィケイションの過程においてツールとして使用され、現地社会の中での自己の位置取りを容易にしていると考えられる。
  • ハワイ人主権運動を歴史的文脈において捉え直す
    井上 昭洋
    セッションID: E13
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/11
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    本発表の目的は、現在のハワイ人主権運動を19世紀後半から現在に至るハワイ人の抵抗の歴史の中に位置づけ、主権運動に内在する問題や困難性を考察することにある。1860年代のキリスト教徒による宗教運動、19世紀末の反併合請願運動、20世紀初頭の民族主義的な政治活動から、1970年代に始まる社会運動、1980年代後半以降の主権運動や先住民の権利を巡る訴訟問題に至るまで概観し、今日の主権運動について考える。
  • 北部クック諸島プカプカ環礁の考古学的情報とその歴史人類学的解釈
    山口 徹, 棚橋 訓
    セッションID: E14
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/11
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    人間の生存にとって厳しい陸域環境の環礁社会は先史以来、その州島景観にさまざまに働きかけ、意味を付与してきた。その営為は西欧と接触してからも継起してきたはずである。本発表ではポリネシアのプカプカ環礁を事例に、年代測定結果からAD19-20世紀に比定される考古学的情報と植民地期以降の歴史人類学的情報を節合することによって、構築される景観と伝統の相互浸透的な関係を析出する。
  • ローカルヒーローにおける設定の構造
    矢島 妙子
    p. 107-
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/11
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    地域活性化の手段として近年盛んに創られているローカルヒーローは、その地域文化の体現をより展開し、その設定も広がる可能性が高い。ローカルヒーローには、地域性をふんだんに取り入れた敵/味方のキャラクターが登場し、その地域に対しての害という表面に出てくるものだけでなく、人々の内面、例えば、地域独自の精神的世界観や地域独特の価値観への問題提起までもが比喩的に表現されている構造がみられるのである。
  • 西宮神社における近現代の変遷より
    荒川 裕紀
    セッションID: E16
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/11
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     本発表では、史料、インタビュー、そして参与観察をもとに兵庫県の西宮神社で1月10日に行われる「十日戎開門神事」の歴史的変遷を述べる。改暦・産業都市化・太平洋戦争そして高度経済成長がいかに当神事に影響を及ぼしたのかを考察する。 「福男」「開門神事」という語がいかに生み出され、社会的に認知され、定着していくこととなったのかについて論じ、高度経済成長と日本の祭礼における言説の再検討を行う。
  • -北海道、豪雪過疎地域における除排雪活動に関する人類学的研究-
    小西 信義
    セッションID: E17
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/11
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    除排雪の担い手の減少と高齢化は、寒冷過疎地域では切実な問題である。この問題に対し、雪処理の担い手を地域外から調達する広域的除排雪ボランティアの取組が、豪雪地域各地で展開されている。 本報告では、2013年厳冬期に実施された札幌市発着型の除排雪ボランティアを事例として取り上げる。そこでは、現金の返礼に当惑する支援者や雪処理に不満足げな被支援者というような両者の非対称性が、参与観察や語りで浮かび上がった。
  • 腐女子のメディア利用と対面コミュニケーションを事例として
    大戸 朋子
    セッションID: E18
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/11
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    本発表では、男性同士による恋愛を主題とするフィクションや想像などを嗜好する、腐女子と呼ばれている女性とそのコミュニティを対象に、対面状況というコミュニケーション場面において、匿名性を重視する同一の嗜好によって参集するコミュニティメンバーがどのような実践を行っているのかを、コミュニティ内部からの微視的な記述を提示し、純粋な関係だけでは回収しきれない彼女らの関係性について明らかにする。
  • グローバル化する日本の性文化
    田中 雅一
    セッションID: E19
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/11
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    本発表の目的は、緊縛(rope art)の海外への普及を取り上げることで、グローバリゼーションの文化人類学や性の文化人類学、文化の真正性についての議論に寄与することにある。現在、緊縛はkinbakuやshibariとして世界各地で受容されている。日本の伝統的な性の実践とみなされてきた緊縛のグローバル化の経過や「kinbakuは本当に日本文化なのか」といった論争を取り上げる。
  • ペルー、チャンタ・アルタ村落におけるITDGの影響を事例に
    古川 勇気
    セッションID: E21
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/11
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     ペルー、カハマルカ県、カハマルカ郡の山地ではケシーリョを生産し、都市部ではケシーリョをもとにマンテコッソを生産するという交流が約100年前から行われてきた。本発表で扱うチャンタ・アルタ村落では、昔からケシーリョを生産し、またケシーリョ市場が立つことでも知られている。 そこで同村落で行われたITDGによる地域開発の影響を手がかりに、酪農家たちのケシーリョに関する生産技術の変化と生存戦略を発表する。
  • 山本 睦
    セッションID: E22
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/11
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    本発表は、アンデス文明形成期(紀元前3000-50年)のペルー北部ワンカバンバ川流域における神殿をめぐる人々の活動とその戦略、およびそれらと社会変化との関係を論じるものである。流域で最大規模を誇るインガタンボ神殿の発掘調査と、遺跡分布調査にもとづいて、人々が、所与の社会的状況およびとりまく環境を、積極的かつ戦略的に利用しながら、周辺地域社会の影響をうけつつも、神殿をめぐる諸活動を能動的に行っていたことを明らかにする。
  • 三社祭における芸者衆の一考察
    陳 王玉勲
    セッションID: E23
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/11
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    本発表の目的は、浅草の三社祭における公的領域に位置づけられる女性としての芸者衆の役割や活動を鮮明にすることである。そこで、祭りにおける女性たちはいかなる伝統文化を守り続けて、支えてきたのを考察する。本発表では、浅草の芸者たちに注目し、女性の視点による祭の意味や三社祭及び地域社会との関係について考察する。女性は祭りの中でどのように意味づけられているのかという問いと立てて、祭りの中に見出されるジェンダーの構造についても論じる。
  • あたらしい社が造られるとき
    関 一敏
    セッションID: E24
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/11
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     福岡市西部の一公園内に新たな神社が発生しつつあり、近隣の神主の助力を得て、月例祭に50名ほどの参詣者を集めている。きっかけは龍神の夢を複数の人々が見たことによるが、古代・中世・近世と重層的な史実と伝承の濃厚な場所でもあり、参詣者たちは甦った聖地であるかのようにふるまう。とくだん劇的な出来事をともなわない場所に、自然発生的に来参する人々の心性を追う。
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