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上杉 妙子
セッションID: A0
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
近代西欧において形成された市民社会概念は非西欧的文脈にも適応され、分析概念として用いられてきた。しかしながら、先行研究は非西欧諸国から/への人の移動がもたらす市民社会の越境的動態について十分な注意を払ってこなかった。本分科会では、①非西欧社会から/へ越境する人々の市民社会の諸様相や②非西欧諸国から/への人の移動が送出/受入国の市民社会の生態系に与える影響などについて発表を行う。
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石川 真作
セッションID: A1
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
本報告では、非西欧世界から西欧世界へ移動する人々が形成する市民社会の越境的動態の事例として、イスラーム世界からヨーロッパへの移民に着目する。具体的にはドイツ在住のトルコ系移民によって形成されるイスラーム関連の団体を取り上げる。対象とするのは、トルコで多数を占めるスンナ派ムスリムによる諸団体、少数派であるアレヴィーの団体、イスラーム改革運動であるヒズメット運動関連の諸機関である。
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市野澤 潤平
セッションID: A19
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
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本分科会は、国立民族学博物館共同研究「確率的事象と不確実性の人類学――『リスク社会』化に抗する世界像の描出」(2015.10-2019.3 代表者:市野澤潤平)による成果公表の一環として開催されるものである。既存の「リスク社会」論を批判的に照らし返すために、人類学者の研究意図に適合するような「不確実性」への構えを提案するとともに、不確実性と人間との関わりの新たな相貌を提示することを目指す。
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在外ネパール人協会(Non-Resident Nepali Association)とネパール
上杉 妙子
セッションID: A2
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
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本発表は、市民社会の越境的動態の一側面を明らかにするために、移民の自発的団体である在外ネパール人協会(Non-Resident Nepali Society, NRNA)を取り上げ、ネパール政府との関係について考える。結論として、NRNAとネパールの間にはコーポラティズム的関係が国境を越えて構築されていることを指摘する。コーポラティズム的な関係はネパール国内の市民団体とネパール政府との関係にも見られるが、NRNAとネパール政府との関係には、国内のコーポラティズムには見られない特色がある。それは、ネパール政府が政治的権利を持たない移出民から構成されるNRNAに対して優越した立場にあり、両者の権利義務関係は概ね片務的であるということである。市民社会と国家の関係は、関係の越境性や政治的権利の有無により異なると考えられる。
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渡邊 日日
セッションID: A20
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
本報告では、「不確実性(uncertainty)」を主題として論じた主に英文の民族誌(的議論)を(日本語文献は補助として)概観し、概念としての「不確実性」の有効性と限界とを考えていく。その際、対概念として想定されがちな「リスク」について簡単にその論じ方が振り返られながらも、未来に向けて人類学を開放/解放するためにも「不確実性」概念とセットで「デザイン」概念について若干の考察が加えられる。
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「リスク社会化」における不確実性
阿由葉 大生
セッションID: A21
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
近年、様々な不確実性が操作可能な「リスク」に置き換えられつつあるという「リスク社会化」が謳われて久しい。本発表は、インドネシアにおける社会保険の設計・運営にかかわる当事者たちの実践の分析によって、リスク・マネジメント技術へのロマン主義的、イリイチ的な批判を回避しつつも、「リスク社会化」という時代診断を相対化し、技術導入の場面における「リスク/不確実性」がないまぜになった局面を描きだそうとする。
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日本の女性不妊治療における患者の実践
吉直 佳奈子
セッションID: A22
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
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不妊治療は妊娠確定以前の、身体内での卵子と精子の成育から身体外での受精までを治療対象とし、患者は月経周期に基づく治療によって繰り返しその過程に関与する。本発表は不妊治療中の女性患者が、自らの不妊の状態のなかに不確実性を見出し、医療における自らの身体のリスク化に抗する実践を取り上げる。この事例の分析を通して、リスク回避を目指す医療において、志向される不確実性について論じる。
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不確実性の認識主体についての試論
碇 陽子
セッションID: A23
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
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本発表は、軽度認知障害の人たちや認知症の人の始まりについての語りを紐解きながら、不確実性の概念を問い直すことを目的としている。より詳しく言うならば、発表者の問題意識は、不確実な状況を前に、それに向き合い、対処する人々の有り様を描くことにあるのではなく、不確実性を認識するとはいかなることか、また、主体にとって不確実性はいかに生起するのか、ということを考えるためのとっかかりをつかむことにある。
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在日ベトナム人支援を目的とするアソシエーションを事例に
野上 恵美
セッションID: A3
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
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本発表の目的は、1995年に起こった阪神・淡路大震災を契機として活発化した在日外国人支援活動のひとつとして位置づけられる「在日ベトナム人支援団体」の設立から現在までの系譜を提示し、日本社会における多様な文化的背景を持つアソシエーションのあり方を考察することである。多文化共生社会を志向するアソシエーションにおける意思決定の事例をとおして、多様性を消去することのない新しい社会的価値を規定する実践を明らかにしたうえで、そのような実践を作り出す論理的背景を考察する。
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岡田 浩樹
セッションID: A4
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
本報告は、東アジア諸社会、特に韓国と日本の事例を取り上げ、本分科会のテーマである「越境市民社会」が成立するのか、成立するとすればどのようなcontext、要因において可能なのかを韓国における朝鮮族、日本における「ニッケイ」(日系ブラジル人)の事例を比較検討し、考察する。
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香港・中国南部の東アフリカ系住民による組合活動を事例に
小川 さやか
セッションID: A5
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
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本発表では、香港・中国広州市在住のアフリカ系居住者たちが、出身国や言語、宗教(宗派)および「アフリカ(性)」を基盤に重層的にアジア諸国とアフリカ諸国をつなぐ組合を結成していることを明らかにし、彼らの組合運営の論理と実践を市民社会論と認知資本主義をめぐる議論の接点から探る。それを通じて「信頼」や「互酬性」に対する期待を伴わない市民社会組織活動のあり方を提示する。
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ヒマラヤ山間部を運転することについての試論
古川 不可知
セッションID: A6
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
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本発表は、ネパール東部のソルクンブ郡における車道と運転することについての報告である。まず山間部で建設の進められる車道が人々によってどのように認識され、日々の生活にいかなる影響を及ぼしているのかを報告する。次に山中を運転するという実践とそこに付与される意味について、乗り合いジープのドライバーに焦点を当てて分析する。本発表では山中における運転を、歩くことと類似性をもった身体的実践として捉えてゆく。
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風景は文化の反映か
片桐 尉晶(保昭)
セッションID: A7
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
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日本において風景を作る現場をフィールドとした。風景は文化や社会を反映した行動の結果とされてきたが、この現場では行動を想定しないデザインもされる。ここでは風景は主体にとって文化や社会(あるいは抵抗)をなぞったものではなく、これらを社会生物学的に「保留」し、選択する機能があった。文化や社会は行動を想定するが、主体にとって、風景は行動を保留し選択する枠組みとして豊かな可能性を持つといえよう。
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杉田 映里
セッションID: B17
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
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近年、国際的にUNICEFや途上国の政府によって月経衛生の必要性が唱えられている。それがローカルにはどう影響しているのか、生理用品の受容や月経観について考察する。本分科会は、科研「グローバルなアジェンダとなった月経のローカルな状況の比較研究」の一部についての中間発表と位置付けられる。特に、本分科会では、月経観にまつわるケガレ、禁忌、羞恥心の差異にも目を向けながらウガンダ、ケニア、PNG、インドの事例報告をする。
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ウガンダの事例から
杉田 映里
セッションID: B18
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
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月経に向けられる視線は、現在、グローバルな規模で大きな変化の波の中にある。本発表が対象とするウガンダもその例外ではない。本発表では、そのグローバルな波を受けて、ウガンダのナショナルレベルでMenstrual Hygiene Management (MHM、月経の衛生的な管理)が推奨されるようになった動きについて明らかにする。さらにローカルなレベルではどのような変化が起きているのか、特に農村部の女子生徒の月経観や月経への対処に着目して考察したい。
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ケニアとウガンダの事例から
椎野 若菜
セッションID: B19
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
本報告では、西ケニアと西ウガンダの村落における小学校での性教育の在り方をおさえたうえで、とりわけ月経について、男女生徒はそれぞれ誰からどのように月経について教わり、認識しているか、女子はどのように処置しているのか。また学校側はどのように生理中の女子に対処しているのか、トイレの環境、教室、授業の受け方、男性/女性教員の対応はどうであるか、誰に相談しやすいか等、ケニアとウガンダ、都市と村落の現状を比較する。
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保健教育を受けた世代に焦点をあてて
新本 万里子
セッションID: B20
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
パプアニューギニアにおいて、保健教育の場で語られる月経をめぐる言説が、若い女性たちの月経観やセクシュアリティにどのような影響を及ぼしているのかを検討する。保健教育を受けた世代の月経に対する羞恥心を検討し、農村部の女性たちと都市部の女性たちの月経をめぐるケガレ視への対応を比較することによって、グローバル化時代における若い女性たちの月経観とセクシュアリティについて考察する。
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就学経験との関わりから
菅野 美佐子
セッションID: B21
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
インド社会において月経は不浄視され、月経中の女性には社会文化的な禁忌や規範が課される一方、初潮は女性の身体の成熟と生殖能力を保証し、婚姻の時期を決定するメルクマールともなってきた。本報告では、急速な変化を遂げる現代インドの農村社会を対象に、種々の社会文化的コードを包摂する月経をめぐる宗教的観念や慣習的実践を明らかにし、それが現在どのように変化しているのかを就学との関わりから考察する。
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内堀 基光
セッションID: C0
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
「老いてある」という存在様態を人の全生涯の中に位置づける。「老い」という様態は少なくとも二重に関係的に論じられる。第1にある社会における「老いていない」様態との時間的推移と個体間の関係の中で、第2に異なる文化・社会間の対照関係の中で。そこでの「老い」がもつ正負の価値を人類学的に秤量するために、年齢(世代)間の交渉に見る行為の側面、生活と生命に関わる諸観念、生涯の集合としての人口構造から接近する。
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コミュニケーションから文化を記述する
梶丸 岳
セッションID: B0
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
人類学において中心的なデータとなっているのは言語的な相互行為である。これまで言語人類学では、ヤコブソンの言語理論とパース記号論を基礎にしつつ、言語実践の研究を通して、相互行為の組織化や、言語と社会や環境の関係性を明らかにしてきた。本分科会ではこうした展開を踏まえ、多様な言語実践を例示しながら、言語使用の詳細にまで立ち入った記述・分析が従来の民族誌的議論に新たな洞察をもたらしうることを示したい。
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グイ/ガナの道探索実践の事例から
高田 明
セッションID: B1
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
本発表では,グイ/ガナの道探索実践において,どのような文脈で近接と遠隔を示す指示詞が現れ,それが「環境に連結したジェスチャー(Goodwin 2007)」とどのように組み合わされ,それによりコミュニケーションにおいてどのような働きを担っているのかについての相互行為分析を行う.さらにこれらの分析に基づいて,近年関心が高まっている「身体-精神-環境の感覚的な連関(Howes 2005)」のグイ/ガナにおける特徴的な実現のされ方について論じる.
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フィンランドにおける住宅、親子関係、ケア
高橋 絵里香
セッションID: C1
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
本発表は、フィンランド南東部の一自治体を舞台として、生涯を通じた居住形態の変遷と住居をめぐる世代間の扶助を記述から、住むことと老いることの連動する様態を把握することを目的とする。「社会に埋め込まれた住宅」という視角を取ることで、自立/依存という老いの測定基準とインフォーマルなケア、福祉国家の関係としてエイジングを理解していく。
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ラオスの掛け合い歌カップ・サムヌアを事例に
梶丸 岳
セッションID: B2
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
本発表は記号論と民族詩学を理論的基盤として、ラオスで歌われる掛け合い歌「カップ・サムヌア」がどのように場に埋め込まれているのかを、言語的・音楽的パフォーマンスの分析から明らかにする。具体的には掛け合いの歌詞が何を指標しているのかを分析するとともに、場のフレームを設定する「一定の音響」について検討する。これによって、カップ・サムヌアにおいて場の一般性と個別性が併存し結びつけられていることを示す。
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沖縄の小規模多機能型居宅介護事業の展開を事例に
加賀谷 真梨
セッションID: C2
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
2005年の介護保険法改正で誕生した小規模多機能型居宅介護事業の伸展に伴い、家族の再モデル化が生じている。発表者はこうした現象をドンズロが描いた「家族に介入する社会」の一例と捉え、その具体的様相を描出し、さらに社会に介入される家族の側の変容も示す。福祉国家において「老いてある」という存在様態は、法や家族をはじめ種々の文化的制度に規定されている。こうした人類学的視座の導入を老年学の課題として提起したい。
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マレーシア半島部オラン・アスリ定住村落における人口人類学的研究
小谷 真吾
セッションID: C3
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
本研究は、マレーシア半島部オラン・アスリにおけるケアシステムの変容について、定住化政策による人口構造の変化と関連付けて分析することを目的とする。バテッ及びメンドリッは、遊動的な狩猟採集活動によって生計を維持してきた集団であるが、近年の定住化に伴い人口構造、若年者及び老年者に対するケア役割が大きく変容しつつある。直接センサス、行動調査、参与観察によるデータから、その変容について分析する。
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メラネシア民族誌におけるヤコブソン詩学の所在
浅井 優一
セッションID: B3
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
本発表では、マリリン・ストラザーンによるメラネシア研究の基調をなす「図と地の反転」という視座が、ローマン・ヤコブソンがパース記号論を取り込んで展開した詩的言語に関する洞察に類似することを指摘する。さらに、フィジーで行われる儀礼的発話を取り上げ、メラネシア的社会性の生成原理が、儀礼的発話が喚起する詩的効果として顕著に示される点を示唆し、メラネシア民族誌の存在論的転回へ「言語」という問題系の接続を試みる。
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シフトする場と文脈の概念を用いて
宮崎 あゆみ
セッションID: B4
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
本発表では、日本の中学校における長期のエスノグラフィをもとに、どのように生徒たちが、場や文脈を解釈したり利用したりしながら、学校における日常実践を通じて伝えられるジェンダー・言語・身体の規範とダイナミックな交渉を繰り広げたのかに関して、言語と権力と場や文脈がどのように連動するのかに関する欧米の理論を用いて分析する。
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呼称と「老い」にかんする語の使用に着目して
河合 文
セッションID: C4
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
本発表では、半島マレーシアの狩猟採集民バテッの社会における「年を取ること」(エイジング)について、それが位置付けられる社会構造とともに考察する。とくに呼称や「老い」にかんする語の使用に着目して「ケア」の実践とともに分析することで、近年の日本における呼称からみた「老い」をめぐる状況を考える参照点としたい。
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アマゾニア民族学と言語人類学の接合にむけて
金子 亜美
セッションID: B5
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
キリスト教化後の地域社会をいかにとらえるか。アマゾニア民族学では、キリスト教化後にもなお存続する現地に固有のコスモロジーが強調される傾向があるが、その分析手続きに対する批判は根強い。本発表はアマゾニア民族学のそうした諸問題を言語人類学的分析を援用することによって解決し、キリスト教化前後におけるローカリティの連続性/不連続性の関係を民族誌的に捉え直す方法を模索するものである。
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内堀 基光
セッションID: C5
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
ボルネオ島西部に住むイバン人はロングハウスと呼ばれる集住家屋での居住で知られる。この居住空間は日常的な協働と、弱者に関わる扶助の舞台であるとともに、生命の消長を映し出す濃密な象徴空間でもある。建築物としてのロングハウス全体が死に対する生を表し、その構成部分が生命の遷移様態を表す。人の生命は植物の生と相同であり、老、病、死もしばしば植物的な隠喩で言い表される。この生命観の社会的特質を論じる。
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アジア・アフリカにおけるミクロヒストリーの視点から
王 柳蘭
セッションID: C19
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
本分科会は、日常的な他者関係が累積される場とその記憶の在り方を通時的にみる視点をミクロヒストリーと定義し、アジア・アフリカにおける移民・難民を対象に、①可視化されてきたマクロなヒストリーをふまえつつ、②移民・難民自身の内側の視座にもとづく他者関係の通時的変遷の可視化、③ミクロとマクロなヒストリーの相互規定性とそこから生まれる現象、④移民・難民と地域のダイナミックな関係性と生存戦略などを比較研究する。
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王 柳蘭
セッションID: C20
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
日常的な他者関係が累積される場とその記憶の在り方を通時的にみる視点をミクロヒストリーと定義し、タイの雲南系ムスリム、とりわけビルマで在地化したパンロン人の離散を事例とする。ディアスポラに生きる人々の柔軟な開かれた他者との関係性とその共同性構築のありかた、移民が異郷においてどのように故地を想起するのかその社会的営為を越境の歴史的経験をふまえ、家族関係と宗教実践の展開を通して可視化させる。
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ベトナム南部メコンデルタ多民族社会における差異の認識
下條 尚志
セッションID: C21
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
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本論はベトナム南部メコンデルタ沿岸地域において、クメール人、華人、ベト人との「混血」化が進んできた多民族社会を対象とする。そこで民族間の通婚と文化的混淆が生じてきたにもかかわらず、民族の差異が強調される背景を考察する。具体的には、そのミクロな空間で過去に流入してきた移民・難民と在来住民の関わりの歴史経験を踏まえた上で、現在、住民達が自己と他者をいかに差異化しようとしているのかという問題を検討する。
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南北スーダンにおける移住者家族の帰還を巡るミクロヒストリー
飛内 悠子
セッションID: C22
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
植民地期―現代に至る南北スーダン間の移住の歴史を背景に、2005年の和平協定、2011年の南スーダン独立によるハルツームに住む南部スーダン出身者の帰還の実際を見ていくことを通して、国境や年代、そして避難・移住経験の違いという境界が移住する人にいかに作用しているのかについて論じる.
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ウガンダの難民居住地における難民と「ホスト社会」
村橋 勲
セッションID: C23
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
本発表は、ウガンダの難民居住地を含むローカルな地域社会において、南スーダンからの難民や、ウガンダの国内移民がどのように難民居住地と「ホスト社会」との境界を越えて、社会経済的な関係をつないでいるかを考察する。いくつかの南スーダン難民の家族世帯の移動史や生計実践をとりあげながら、彼らが、他の難民やウガンダ人と新たな関係をどのように創出しながら、彼らが置かれた強制立退きという現在の情況に応答しようとしているかをミクロなレベルから明らかにする。移動する人々それぞれが、紛争に伴う偶発的で不安定な社会状況の下、自らの生存と生活の安定を求めて、さまざまな戦略を用いて暮らすことで、難民と「ホスト社会」を分ける境界は曖昧にされ、新たな関係性が生みだされている。
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文化固有性・産業化・異業種ネットワーク
風戸 真理
セッションID: D0
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
本分科会では食を集団的な文化と個人的で自然な身体の交差点に位置づけ、食に関する文化固有性・産業化・異業種ネットワークについて、日本・モンゴル・中国の事例をとりあげて検討する。具体的には、自給自足の食生活から、農産物の流通・加工・産業化、トランスカルチュラルな状況での扱い、観光産業との結びつきに至る「食文化」の連続性と断絶の様相を検討する。
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近世・近代日本の饗応儀礼食の記録分析
山口 睦
セッションID: D1
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
本発表は、山形県南陽市の農家に保存されている贈答記録に記された献立、食材の分析から、近世・近代の村落部の饗応儀礼食における食材の商品化や外注料理の浸透の様相を明らかにするものである。また、参加者の贈与や協働という行為で成立していた饗応儀礼食が、この200年余りでどのように変化したかについても検討する。
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阿南 透
セッションID: D19
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
オープンアクセス
日本の祭礼の中には、神輿、山車、燈籠などの衝突が人目を引き、喧嘩祭と通称されるものがある。それらは警察や行政の介入、暴力を好まない風潮などの影響から、暴力を抑制しつつ力を発散させる方向へ変容している。本分科会は、福野夜高祭、となみ夜高まつり、岩瀬曳山車祭(いずれも富山県)、くらやみ祭(東京都府中市)等を事例に、「脱暴力化」という観点から分析し、この観点が祭礼研究にもたらす意義について考察したい。
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乳製品市場での販売と利用を中心に
寺尾 萌
セッションID: D2
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
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「モンゴルの乳文化」は牧畜という生業全体のなかで価値をもち、牧畜に根ざす知識やコスモロジーのなかに位置付けられている。しかし、都市民たちにとって乳製品は購入するものであり、乳利用は牧畜という生業から切り離されている。その一方で、乳製品は上記のような乳文化にもとづく一定の価値観を伴って利用され、単なる消費の対象となっているわけでもない。本発表では、地方都市における乳利用、乳文化の実態を明らかにする。
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阿南 透
セッションID: D20
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
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となみ夜高まつりとは、富山県砺波市の中心部・出町地区で行われる祭礼である。参加町が夜高行燈と呼ばれる高さ6〜7メートルの行燈山車を制作し、1日目には行燈の出来映えを審査するコンクールがあり、2日目には行燈を正面衝突させて壊し合う。行燈をぶつける「喧嘩祭」は、過去には偶発的な衝突から喧嘩に至ったが、1980年代に時間、場所、対戦相手を決めてぶつかり合うやり方に変わった。この変容のもたらす意義を考察したい。
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北海道における生産者と食べる人の交流の現場から
井上 淳生
セッションID: D3
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
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本発表では、北海道における農業生産者と食べる人との交流を事例に、生産者にとっての食について考察する。自らの生産物の最終到達点である「食べる人」と出会う時、作り手は食に対してどう対峙するのか。本発表ではこの点について、人類学ならびに社会科学で取り上げられてきた「小農」に引き付けて議論する。
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中国内モンゴル自治区中部の事例より
尾崎 孝宏
セッションID: D4
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
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本発表では、中国内モンゴル自治区中部における「旅遊点」で展開されるエスニックツーリズムの事例から、トランスカルチュラル状況の食文化の在り方について考察を加えることを目的とする。「旅遊点」と民族テーマパークの比較、メニュー面での民族料理店および一般家庭との比較を通じ、中国のエスニックツーリズムにおける「民族」経験は画一化されがちで、内容的にも漢民族の嗜好性が反映されている一方、提供されるメニュー構成の全てを漢民族のまなざしに帰することもまた不適切であることが指摘しうる。
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モンゴル国の食事と饗応より
風戸 真理
セッションID: D5
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
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本発表では、モンゴル国の牧畜地域でおこなわれる食事や饗応といった飲食慣行の共通点を抽出し、その上で、地域的な差異を指摘する。最後に、飲食物の摂取が身体的な行為であることに立ち返り、食文化研究者の視線が諸個人の身体的経験に支えられていることを考慮しつつ、食をめぐる集合的な文化と個人の身体の関係を議論する。食文化研究はある程度標準化された文化・地域と個別の身体との接触領域といえるだろう。
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中里 亮平
セッションID: D21
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
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神輿中心の祭礼である東京都府中市大国魂神社の例大祭くらやみ祭を事例に、祭礼の構造、システムに組み込まれていない暴力、もめごとが昭和30年代に激しい世間からの批判を受け、変容していった様子を描写する。また、祭礼側がそれにいかに対応したのか、その際にどのような理論武装を行い、それがどれだけ通用したのか、あるいはしなかったのか、について論じる。
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「引き合い」の変化の検討
藤本 武
セッションID: D22
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
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富山県西部の福野では毎年5月1日と2日に福野夜高祭が行われる。2日深夜には福野神明社の氏子7町が制作した大行燈を互いに壊しあう「引き合い」と呼ばれる儀礼的喧嘩が行われる。祭りの余興的位置づけのものだが、今日大勢の見物客を集める祭りのクライマックスとなっている。「引き合い」は戦前から行われてきたが、安定的に実施できるよう、ルールを整え、安全対策を講じるなど、様々な変化を経て今日の形となってきた。
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富山市・岩瀬曳山車祭
渡辺 和之
セッションID: D23
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
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岩瀬曳山車祭は、たてもんと呼ばれる行燈を載せた山車同士がぶつかる勇壮な祭りである。ただし、同じ「けんか山」と呼ばれる伏木の曳山祭と比べると、岩瀬曳山車祭の場合、「あれは人間どうしのけんかやねか」と富山県民から揶揄される程、祭りのある局面において暴力を伴う祭りであった。発表では、1990年代の記録と2018年の観察をもとに祭りの変容を比較しながら、戦後に出版された新聞記事も参照し、祭りの変遷を追ってゆく。
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ハラールとコシェル
山口 裕子
p.
E0-
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
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本分科会では、グローバル化の中で進む、食に関わる宗教的規制の制度化の動向を、イスラームにおける「ハラール」と、ユダヤ教における「コシェル」をめぐる動向に注目して考察する。食物規制の制度化が、異なる食物規制をもつ人々を架橋したり、人々の食の選択に与える影響について、東、西アジアやオセアニアを対象に、産業界、屠畜場、宗教的マイノリティの日常の食の選択など、多様な地域と場での人々の実践を例に考察する。
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認証制度誕生前後の日本とイスラーム
山口 裕子
p.
E1-
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
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本発表では、ハラール概念の整理を通して、本来多様な解釈と実践を許容するハラールを画一的な基準に基づき認定することがイスラーム史でも特異な動向であることを指摘する。東南アジアに始まる認証事業の展開を概説し、国際的な統一規格の不在や、監査基準の厳格化などの問題を指摘する。認証制度が普及する以前の日本でのムスリム対応を素描し、今日の食の安全志向との親和性を考察することで、認証制度の課題と可能性を考える。
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ハラール認証制度が日本の非ムスリムや在住ムスリムに与える影響
阿良田 麻里子
セッションID: E02
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
会議録・要旨集
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日本のハラール・ビジネスにおいては、マレーシア等の影響によりハラール認証が強調され、実践の多様性が無視されてきた結果、日本人の間に誤解が生まれ、給食などさまざまな場面で善意の行動がムスリムの実践を阻害する状況が起こっている。ハラールをめぐる「オーソドクシー」が、一部のムスリムを介して偏った形で非ムスリムに伝えられた結果、国内在住ムスリムの「オーソプラクシー」に影響を与えている状況を考える。
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オーストラリアの食肉工場での観察から
高見 要
セッションID: E03
発行日: 2019年
公開日: 2019/10/01
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オーストラリアのハラール食肉工場でムスリム屠畜人の一員として働いた経験をもとに、各工場のムスリム屠畜人コミュニティ内でのイスラーム的実践のあり方を検討し、それぞれの工場で文化が形成されていることを示す。これらの文化はそれぞれの出身地や強い個性をもった個人に影響を受けている。ムスリム屠畜人の多様性を描き出し、その実践とハラール屠畜を職業とすることについて考察する。
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