日本文化人類学会研究大会発表要旨集
Online ISSN : 2189-7964
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日本文化人類学会第53回研究大会
選択された号の論文の74件中51~74を表示しています
  • 台湾におけるハラール認証制度の展開とムスリムの食選択
    砂井 紫里
    セッションID: E04
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    台湾において、ハラール認証制度はムスリムと非ムスリムを架橋・弁別しながら、「弾性(しなやかさ)」「誠信(誠実と信頼)」「素食(ベジタリアン)」など台湾の特徴的な価値や食文化と接合しながら展開している。食品製造業や外食産業における生産者・サービス提供者と消費者の間のハラールをめぐる解釈や、消費、実践の重なり合いとずれに着目し、認証制度の導入前後での飲食サービスの差異と連続性について考察する。
  • イスラエルの事例を中心に
    細田 和江
    セッションID: E05
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    本発表では、中東のユダヤ教国家であるイスラエルにおけるコシェル(ユダヤ教の規定、許可されたものを示す語)の食産業の発展とその特徴について、近年、宗教実践とは異なる傾向が見られる状況を踏まえ、現代的なコシェル受容について、日本・日本食における動向も視野に検討する。
  • 玉城 毅
    セッションID: E19
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    本分科会の目的は、東アジアにおける親族事象を現代的コンテキストで捉え、中国東南部・台湾・韓国・沖縄の事例を比較することによって、東アジアの現代的特徴を明らかにすることである。特に急速に進行する少子化による父系理念に関わる事象の変化において死者・生者関係の再構築の様相を捉え、祖先祭祀の実践と意味を明らかにする。本研究を通じて、当該社会を「父系的」と眼差してきた従来の人類学研究への批判的検討を行う。
  • 日常の互酬と信頼構築を手がかりに
    長沼 さやか
    セッションID: E20
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    本発表は、本質的で所与の関係と思われがちな家族を、日常の互酬にもとづく信頼関係の構築によって成り立つソーシャル・キャピタルの1つとして捉えなおす試みである。その際、父系理念が強いといわれる中国のなかでも、父系出自集団・宗族の規模が大きく、かつ組織が緊密な広東省珠江デルタ地域における事例を分析対象として取り上げる。
  • 娘と娘しかいない人々を事例に
    上水流 久彦
    セッションID: E21
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    台湾漢人社会では、男性子孫をもうけ、その子孫が祖先祭祀を行うことが当然とされてきた。男性は結婚し、男子を得ることでそれが可能となった。また女性は婚出し、そこで男子を生み、花婿側の祖先祭祀を継続させ、自分を祭祀する者を確保してきた。しかし、台湾社会では少子化と非婚化が進んでおり、男子が祖先崇拝を継承することを一層困難にしている。台湾の漢人はこの事態をどのように認識し、対処しているのだろうか。本発表では、伝統的な祖先祭祀から逸脱すると思われる「娘しかいない家庭」、「姉妹しかいない女性」、「未婚で子どもがいない女性」の聞き取りから、初歩的検討を行う。その検討からは、男性は「一族」という単位が祭祀の解決方法として選択肢に入っているが、女性にはない点、祭祀継承の観念よりも、「親と子」の単位の祭祀の重視されている点が明らかとなった。
  • ―大学生の祖先祭祀に対する意識調査を中心に―
    中村 八重
    セッションID: E22
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    本発表は、祖先祭祀に関する大学生への意識調査とその分析を通じて、少子化が進行する韓国社会における若い世代の祖先祭祀に対する意識を探り、祖先祭祀の変化を考察しようとするものである。祖先祭祀の理想的な担い手は直系の男性子孫であるが、少子化や社会変化により変化を余儀なくされている。調査から、若い世代は祭祀に参加はしていても男女平等の思想から男性中心の祭祀に批判的で、祭祀自体に対しも懐疑的な認識が伺えた。
  • 沖縄において死は隠蔽されているのか?
    玉城 毅
    セッションID: E23
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    本研究の目的は、沖縄における死者儀礼と祖先祭祀を都市化や少子化といった現代的コンテキストにおいて捉え、儀礼の様相と意味を当事者の実践の視点から明らかにすることである。琉球列島における死者・祖先祭祀は、この20年間で加速度的に簡素化・効率化している。それを「本土化」や「死の隠蔽」と解釈する研究があるが、本報告では一般化を急がず、儀礼の簡素化の条件・要因・意味を探る。
  • 浮ヶ谷 幸代
    セッションID: F00
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    現代日本では約80%の人が病院で最期を迎える。いわゆる伝統的な「看取り文化」は既に消滅しているなかで、近年、在宅での看取り実践に取り組むコミュニティ(地域)が現れてきた。本報告では、人類学のコミュニティ論を踏まえながら、カナダネイティブ社会を参照し、日本の3地域の事例と在宅看取りに関わる国家政策をとりあげ、新たな「看取り文化」を構築していくために、いかにコミュニティを創出するかについて考えていく。
  • 二ツ井ふくし会による在宅での看取りの事例集は地元になにをもたらすか?
    相澤 出
    セッションID: F01
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    本報告は、病院死が自明視され、地域住民の常識と化している地域の現状を変えようとする試みを事例検討するものである。秋田県能代市の旧二ツ井町域で、特別養護老人ホームや自宅といった生活の場で、看取りまで可能とするケアを進める社会福祉法人二ツ井ふくし会は、日々のケアの実践やこれまで実績とともに、地元向けの独自のエンディングノートである「あんしんノート」を自主作成し、活用している。この「あんしんノート」は、地元で実際にあった自宅や特養での看取りや在宅介護の、身近な具体例を紹介した事例集を収めるという工夫と、地元へのメッセージが込められているものである。これは地元住民にとって在宅の看取りが現実的で、可能な選択肢であることを示すものでもある。本報告ではこの「あんしんノート」作成に関わった二ツ井ふくし会職員の談話を検討し、コミュニティ(地域)による看取りに対する意義を考察する。
  • 南アジア・東南アジア社会における贈与の倫理・制度
    濱谷 真理子, 藏本 龍介
    セッションID: F19
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    南アジア・東南アジア社会においては、「布施(dāna、dānなど)」と呼ばれる実践がみられる。本分科会では、インド、ミャンマー、スリランカにおいて「布施」として行われるさまざまな贈与の事例について、そこにはどのような規範や倫理がみられるのか、そしてそれはどのような社会関係や経済制度をもたらしているのかを検討する。それによって、「人間はなぜ他者に与えるのか」という問題に新たな視点を提供することを目的とする。
  • 日本版CCRCとUR団地小規模多機能ホームとの比較から
    浮ヶ谷 幸代
    セッションID: F02
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    UR団地で小規模多機能ホームを展開している〈ぐるんとびー〉では、さまざまな事情を抱えた高齢者たちの移住が始まっている。それと並行して、スタッフらがUR団地の空き室への移住している。他方で、高齢者対策事業として、日本版CCRCという大規模な高齢者の移住計画が始まっている。本報告では、日本版CCRCの「大きな移住」と〈ぐるんとびー〉の「小さな移住」を比較し、看取りを支える「コミュニティの力」について考える。
  • -地域の看取りとしてのカナダ先住民居留地-
    渥美 一弥
    セッションID: F03
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    カナダ先住民の死に関するイメージは都会の路上で行き倒れとなって亡くなっている姿であろう。確かに数年前までインターネットでFirst Nations, death, palliative care等の単語を入力して検索すると、そのような内容の記事が数多く見られた。しかし、居留地における死は、上記のイメージとはまったく別の光景を目にする。生前多くの人に迷惑をかけた人物でさえも、ファミリーに囲まれ、穏やかに静かに亡くなって行き、その葬儀には居留地の殆どが参加する。
  • 無縁化への予防と自己決定をめぐる実践を通して
    山田 慎也
    セッションID: F04
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    本報告では、横須賀市が2015年から実施しているエンディングプラン・サポート事業によって、無縁仏とならないよう当事者の意思を反映する取り組みの事例を取り上げつつ、行政が対応する近親者なき人の葬送のついて検討を行う。その上で、近親者なき人の看取りと葬送に関する対応を地域社会との関係から捉え、現代の死をめぐる動向について考察することを目的としている。
  • システムにおける「互助」の問題
    松繁 卓哉
    セッションID: F05
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    本報告では、近年の地域包括ケアシステムとその関連施策の中でキーワードとなっている「住民参加」および「地域資源」を取り巻く問題点について考察する。とくに、国が進めている「介護予防・日常生活支援新総合事業」(「新総合事業」)に着目し、その政策展開において「地域」「住民」「行政」が相互にどのような位置づけにあり、どのような問題を生み出しているのかを整理する。
  • 北インド巡礼地郊外の施食会を事例として
    濱谷 真理子
    セッションID: F20
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    本発表では、インド・ヒンドゥー社会における在家者から出家者への宗教的贈与について、受け手側のモラルや実践に着目して考察する。具体的には、北インド巡礼地ハリドワール郊外の修行道場で毎夕開かれる施食会を事例として検討する。そして、施食会を通じて施食の担い手のあいだにグルを中心とするゆるやかな共同性が形成されていることを明らかにする。
  • ヒンドゥー寺院司祭と信者間の贈与をめぐって
    飯塚 真弓
    セッションID: F21
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    南インドのヒンドゥー教寺院の寺院司祭と信者のあいだにみられる宗教的贈与を事例に、布施をとおして築かれる神と人、司祭と信者、または信者同士の関係性や規範・倫理に着目し、バクティ(神への信愛)、神話、名誉、慈善など多様なロジックを内包しながら流動的に行われる布施実践のあり様を明らかにする。
  • ミャンマー「自然法」瞑想センターを事例として
    藏本 龍介
    セッションID: F22
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    本発表では、ミャンマーの「自然法」瞑想センターを事例として、仏道修行/布教事業/社会福祉事業が渾然一体となった「布施行」の実態を分析する。そして「布施」というロジックに貫かれたこのセンターにおいては、「布施経済」とでも呼びうる独特な経済制度がみられることを示す。
  • スリランカにおける社会奉仕実践と布施の現場から
    中村 沙絵
    セッションID: F23
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    人道主義が世界各地で展開し、多様な主体や局地的な実践形態をとりこみながら遂行されている。こうしたなか、贈与の効果によってその価値を測る世俗的贈与と、与える行為そのものに意味を付与する宗教的贈与のロジックが、同一の活動において同時に保持されるような混淆的な状況が出現し、研究の対象にもなっている。しかし人道主義と宗教が重なり合う領域がいかなる贈与のロジックによって成立しているか、それがいかなる経験や関係性の創出に寄与しているかについては、あまり問われてこなかった。本報告ではスリランカで人道主義的な介入と宗教的実践とが重なり合う領域としての社会奉仕実践、およびそこでの贈与行為に着目する。与え手・受け手のふるまいやロジック、ならびに与え手と受け手のあいだでとりむすばれる関係性のありようをみながら、こうした混淆的な贈与の実践がもたらす経験や社会性について検討する。
  • 今村 薫
    セッションID: G00
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    中央アジアは古くはシルクロード交易、現在は一帯一路政策によって交易路のイメージが強いが、この地域は単なる通過点ではない。歴史的にも現代においても、地域独自の人間活動が生起してきた場所である。本分科会において、「牧畜社会」という観点から、中央アジアの自然―家畜―人間の相互作用の実相を、先史時代から現在まで重要な局面ごとに報告し「歴史生態」が中央アジア世界においてどのように展開してきたかを議論する。
  • 星野 仏方
    セッションID: G01
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    本研究では、異なる牧草圧の3つのサイトを確立させ、フィールド調査とラクダのGPS追跡データに基づいて、放牧圧と植物の多様性指数のシンプソンのDiversity Index(D値)との相関を調べた。我々は、適切な放牧圧に置かれている草食動物が個々の植物の光合成の活性を活性化させるという仮説を立てて、最適放牧理論をフィールドで検証した。
  • 内モンゴル自治区アラシャー盟のクダ牧畜民事例から
    土尔扈特 蘇龍嗄
    セッションID: G02
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    ユーラシア大陸からアフリカ大陸にかけて去勢ラクダは騎乗用、荷駄用として歴史的、社会的、文化的に重要な役割を果たしてきた。本発表の目的は、ラクダの去勢技術を中国内モンゴル自治区アラシャー盟のラクダ牧畜民の事例から明らかにすることである。具体的には、去勢の時期、去勢畜の選別、一連の去勢作業、術法、儀礼および社会関係に着目する。
  • 塩谷 哲史
    セッションID: G03
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    本報告は、18-20世紀初頭ロシアと中央アジアを結ぶ隊商交易の拠点であり、かつ穀物と畜産物の取引拠点であった都市オレンブルグを考察の対象に据えながら、同都市とその周辺にあたるカザフ草原北辺部における長距離交易と畜産物取引との関係性を論じる。具体的には、19世紀中葉に書かれたロシア語の通商概説をもとに、隊商の規模、担い手、取引品目・金額、取引方法、その中での畜産物取引の役割について考察する。
  • キルギス、天山山脈とウズベキスタン、フェルガナ盆地での最近の発掘調査からの新視点
    久米 正吾
    セッションID: G04
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    本発表では、中央アジア東部での「牧畜社会」開始の基盤となった青銅器時代における初期農耕牧畜の波及とその歴史生態学的意義について、キルギス、天山山脈とウズベキスタン、フェルガナ盆地での発掘調査成果に基づき議論する。山岳地帯と平地という異なる地理環境への農耕牧畜の適応は、異なる2つの考古学的文化集団がそれぞれ担っているため、両者の相互関係の実相解明に向けた展望についても述べる。
  • DNAとゲノムからさぐる
    斉藤 成也
    セッションID: G05
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    本講演では、中央アジアにおける東西の人間の移動をDNAデータから考察する。まず、モンゴル帝国の始祖チンギス・ハンのY染色体の系統についての研究を紹介する。つぎに全ゲノムデータにもとづくウイグル人集団の起源に関する研究を紹介する。最後に東アジア人が東南アジアから北上した人々を主体としつつ、西から移動した人々とも一部混血して形成したという仮説を紹介する。東ユーラシアにおける稲作の起源についても時間があれば言及する。
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