禁煙科学
Online ISSN : 1883-3926
vol.2 巻, 04 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 王 宝禮
    2008 年 vol.2 巻 04 号 p. 1-3
    発行日: 2008年
    公開日: 2021/11/04
    ジャーナル オープンアクセス
    はじめに
     喫煙対策が遅れていた日本でも、受動喫煙防止を定めた2003年の健康増進法、2005年の世界保健機構(WHO)たばこ規制枠組条約(FCTC)、喫煙関連疾患を扱う9つの医・歯学会が合同で作成「禁煙ガイドライン」と、国ならびに学会の喫煙問題に対する取り組みが本格化した。ついに、2006年からは「喫煙は病気、喫煙者は患者」という考えのもと、医科においては保険適用による禁煙治療が可能になった1)。
     喫煙者の多くはまだ喫煙を趣味・嗜好ととらえ、「喫煙は病気」という認識は薄いようである。しかし、喫煙はやめようとしてもやめられない「強い依存症」となり、喫煙者はタバコを吸い続け、心臓病・肺がん・歯周病など様々な病気にかかりやすくなる。つまり、喫煙はう蝕・歯周病・高血圧症・糖尿病などと同じ生活習慣病の一つなのである。喫煙が、口腔疾患の第一のリスクファクターと捉える必要がある2)。
     口腔の健康のケアを専門とする歯科医師、歯科衛生士は、患者が歯科診療室に訪れた瞬間から喫煙者であるかどうかが判る。日々の臨床の中で我々は、喫煙による口腔疾患への悪影響と禁煙の効果を直接感じとってきた3)。それゆえ、我々が歯科保健医療専門職である限り、積極的に喫煙対策を推進する役割を担い禁煙支援する力を養っていく必要がある。
  • 和田 啓道, 長谷川 浩二, 寺嶋 幸子, 佐藤 哲子, 井上 美鈴, 飯田 夕子, 山陰 一, 北岡 修二, 森本 達也, 藤田 正俊, ...
    2008 年 vol.2 巻 04 号 p. 4-8
    発行日: 2008年
    公開日: 2021/11/04
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:近年の喫煙率の傾向として、男性の喫煙率は低下しているのに比べ、20~30歳代の女性の喫煙者率は増加向にある。これまでの先行研究において、女性のニコチン依存は、喫煙本数を主体としたFagerstr?m Test for Nicotine Dependence(FTND)等で評価されており、ニコチン依存は低いとされてきた。一方2006年より健康保険適用の禁煙治療が制度化され、ニコチン依存症の診断にTobacco Dependence Screener(TDS)が使用されていることから、FTND、TDS、喫煙本数の少ない若年者向けに開発されたHooked on Nicotine Checklist(HONC)の一部を用いて20~30歳代の女性喫煙者のニコチン依存の現状を分析することと禁煙に対する意思との関連要因を検討することを目的とした調査を行った。
    方法:2007年7月から2008年4月の間に、国立病院機構京都医療センター禁煙外来を新規受診して同意した患者65例(連続症例)を対象にSDSテストを施行した。精神疾患の既往、精神科あるいは心療内科受診歴のある患者は除外した。SDSスコア39点以上47点以下を正常/神経症境界、48点以上を神経症/うつ病とした。
    結果:禁煙成功率は正常群 (n=29) 69%に対し、正常/神経症境界群 (n=17) 35% (P = 0.030)、神経症/うつ病群 (n=19) 21% (P = 0.002)と、うつ状態の程度に従い禁煙成功率は顕著に低下した。初診時の性別、年齢、喫煙開始年齢、喫煙年数、1日の喫煙本数、ブリンクマン指数(喫煙本数/日×年数)、ニコチン依存度の指標であるFTNDスコア及びTDSスコア、禁煙の自信度、SDSスコアを変数とした多重ロジスティック回帰分析の結果、12週後の禁煙成否を規定する唯一の独立因子がSDSスコアであった(P = 0.032, OR: 0.927, CI: 0.866-0.993)。
    結論:初診時のうつ状態は短期的禁煙成功率に深く関連し、SDSスコアは短期禁煙達成成否を規定する最も強力な因子であった。潜在的うつ状態の存在が禁煙の最大の妨げであることが明らかとなった。
  • 中井 久美子, 高橋 裕子, 清原 康介, 苗村 育郎, 立身 政信, 寺尾 英夫, 吉原 正治, 杉田 義郎, 守山 敏樹, 鎌野 寛, ...
    2008 年 vol.2 巻 04 号 p. 9-14
    発行日: 2008年
    公開日: 2021/11/04
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:近年の喫煙率の傾向として、男性の喫煙率は低下しているのに比べ、20~30歳代の女性の喫煙者率は増加向にある。これまでの先行研究において、女性のニコチン依存は、喫煙本数を主体としたFagerstr?m Test for Nicotine Dependence(FTND)等で評価されており、ニコチン依存は低いとされてきた。一方2006年より健康保険適用の禁煙治療が制度化され、ニコチン依存症の診断にTobacco Dependence Screener(TDS)が使用されていることから、FTND、TDS、喫煙本数の少ない若年者向けに開発されたHooked on Nicotine Checklist(HONC)の一部を用いて20~30歳代の女性喫煙者のニコチン依存の現状を分析することと禁煙に対する意思との関連要因を検討することを目的とした調査を行った。
    方法:2007年7月から2008年4月の間に、国立病院機構京都医療センター禁煙外来を新規受診して同意した患者65例(連続症例)を対象にSDSテストを施行した。精神疾患の既往、精神科あるいは心療内科受診歴のある患者は除外した。SDSスコア39点以上47点以下を正常/神経症境界、48点以上を神経症/うつ病とした。
    結果:禁煙成功率は正常群 (n=29) 69%に対し、正常/神経症境界群 (n=17) 35% (P = 0.030)、神経症/うつ病群 (n=19) 21% (P = 0.002)と、うつ状態の程度に従い禁煙成功率は顕著に低下した。初診時の性別、年齢、喫煙開始年齢、喫煙年数、1日の喫煙本数、ブリンクマン指数(喫煙本数/日×年数)、ニコチン依存度の指標であるFTNDスコア及びTDSスコア、禁煙の自信度、SDSスコアを変数とした多重ロジスティック回帰分析の結果、12週後の禁煙成否を規定する唯一の独立因子がSDSスコアであった(P = 0.032, OR: 0.927, CI: 0.866-0.993)。
    結論:初診時のうつ状態は短期的禁煙成功率に深く関連し、SDSスコアは短期禁煙達成成否を規定する最も強力な因子であった。潜在的うつ状態の存在が禁煙の最大の妨げであることが明らかとなった。
  • -禁煙者へのアンケートとインタビューより-
    海老原 泰代, 三浦 秀史, 高橋 裕子
    2008 年 vol.2 巻 04 号 p. 15-21
    発行日: 2008年
    公開日: 2021/11/04
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:近年、公共の場での受動喫煙防止や学校、公共施設の敷地内禁煙などの広がり、禁煙外来指導の保険診療適用など、禁煙に挑戦するための社会環境は整いつつあるといえる。  禁煙にいったん成功してもそのあと体重増加により再喫煙する人は多い。しかし、禁煙後の体重コントロール支援の方法は確立されているとは言えない。本調査では禁煙後の体重コントロールの為のプログラム開発を目的として、禁煙後の体重増加について禁煙継続者へのグループ・インタビューとアンケート調査を試みた。さらに調査に基づき、写真付メールを利用した食事相談を含む禁煙後の体重コントロール支援プログラム開発を試みたので報告する。
    対象:インターネット禁煙マラソンに参加し、調査時点まで禁煙が継続している男性11名、女性7名。
    方法:
    1.アンケート調査:禁煙マラソンのイベント参加者18名に調査目的や個人情報保護や拒否の機会を記載した説明文を添付したアンケート用紙を配布し、即日回収した。アンケートは無記名とし、質問表の内容は、性別、身長、喫煙時体重、現在体重、禁煙年数、減量のために必要と思われる情報についてであった。
    2.インタビュー調査:アンケート調査を実施した18名に対して、2~3人ごとのグループ・インタビューを実施した。各グループに対し、インタビュアー1人が対面して質問を行った。質問内容は、禁煙後の体調変化、自分の現在の体重の捉え方、食事や運動による減量の実施有無、減量についての不明点の有無とし、特に感覚的な変化や考え方の変化など、詳しく聞き取りをした。対象者へは研究の目的を書面で説明し、同意書を得た上で実施した。なお本研究は奈良女子大学疫学倫理審査委員会の承認を得て行われた。
    結果:禁煙マラソンの「イベント参加者18名全員が調査に協力した。 禁煙後から現在まで体重の平均変化量は男性2.4kg(SD4.1)、女性3.3kg(SD4.8)、禁煙期間は平均で男性8年4か月、女性6年5か月であった。
     減量に必要な情報については質問票により18項目の運動・食事に関する項目についての必要度を5段階にわけ、得点付した。男女共「自分に必要な食事量について」が最も得点が高かった。一方、「運動サークル紹介」「アルコールのカロリー」の情報が得点数が低かった。
    プログラム構築:本研究では栄養士からの個別アドバイス提供、さらに減量支援情報を電子メールにより提供する。単に情報提供のみではなく個々人ごとに対応した食事コントロールの支援を目的とした個別減量支援プログラムを開発した。
    結論:禁煙継続者のアンケートとインタビューから、電子メールでの個別食事相談を取り入れ、禁煙後の体重コントロールの支援プログラムを開発した。
  • 中井 久美子, 高橋 裕子, 清原 康介
    2008 年 vol.2 巻 04 号 p. 22-28
    発行日: 2008年
    公開日: 2021/11/04
    ジャーナル オープンアクセス
     「大学禁煙化プロジェクト」でのニコチン代替療法と双方向性のメール支援を利用した大学生への禁煙サポートプログラム「パッチ&メール」の禁煙成果について報告した。これは日本で初めての大学生への禁煙支援に関する多施設共同研究であった。
    プログラム概要と方法:「パッチ&メール」は各大学の学生健康管理部門がプログラムに参加する禁煙希望大学生を募集し、一定のプロトコールに従って禁煙治療を行う。各大学の学生健康管理部門では、プログラムへの参加学生を募集し、一定条件を満たす学生に対してパンフレットや学生健康管理部門スタッフによる面談のほか、必要に応じて無料ニコチンパッチと半年にわたる大学生専用メール禁煙サポート(カレッジ禁煙マラソン)を提供し、プログラム参加後6ヶ月での禁煙状況を評価した。評価は呼気中一酸化炭素濃度測定を原則とし電話やメール等追跡可能な方法を併用した。学生健康管理部門において記入した「学生追跡票」に基づきプログラム参加後180日以上経過した参加者を対象として禁煙成果を分析した。
    結果:2003年10月~2005年10月までの2年間に「パッチ&メール」に参加した学生933名(59大学)のうち、調査時点(2005年11月~2005年12月)でプログラム参加後180日以上経過したのは376名(男277名、女99名)であった。プログラム参加180日後の断面禁煙率は、追跡不能者を喫煙とみなす厳しい判断基準では男子学生25.3%、女子学生の24.2%であり、追跡不能者を除外する判断基準では男子学生44.6%、女子学生35.3%であった。男子学生の120人(43.3%)、女子学生の31人(31.3%)が半年後に追跡不可能な状況であった。
    結論:本プログラムは海外での大学生への禁煙支援プログラムに先行して開発・提供されたが、海外に比較して本プログラムの禁煙成果は遜色ない結果であった。海外プログラム同様、追跡不能者に対しての対応は今後の重要な課題である。
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