禁煙科学
Online ISSN : 1883-3926
vol.3 巻, 02 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • -50年間の観察 -
    森岡 聖次, 上田 晃子, 初山 昌平
    2009 年 vol.3 巻 02 号 p. 1-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/11/04
    ジャーナル オープンアクセス
    背景
    近年、日本公衆衛生学会総会におけるたばこ対策演題数は増大し、分科会として独立可能な量となっている。この増加傾向はいつから生じたか、演題数の消長を観察した。
    方法
    日本公衆衛生学会総会抄録集を1954年(第9回)から2008年(第67回)まで55回分を総覧し、たばこ対策演題数を集計した。演題名か抄録にたばこ対策関連語が含まれている演題はすべて採択した。
    結果
    1954年に山口による列車内汚染による発表と平山・浜野による肺がん発生とたばこを含む環境要因に関する2演題が登場した。1978年に10演題が報告されて以降は毎回11以上が報告され、最高は2001年の57(総発表数の4%)であった。1978年以降の31年間で、たばこ以外の最少分科会数よりたばこ対策が同じか多かったのは24回あった。
    結論
    日本公衆衛生学会におけるたばこ対策関連発表は1954年に始まり、1979年以降は11演題以上に増加した。
  • -Web調査による分析-
    松本 泉美, 高橋 裕子, 中井 久美子
    2009 年 vol.3 巻 02 号 p. 7-17
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/11/04
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:近年の喫煙率の傾向として、男性の喫煙率は低下しているのに比べ、20~30歳代の女性の喫煙者率は増加向にある。これまでの先行研究において、女性のニコチン依存は、喫煙本数を主体としたFagerstr?m Test for Nicotine Dependence(FTND)等で評価されており、ニコチン依存は低いとされてきた。一方2006年より健康保険適用の禁煙治療が制度化され、ニコチン依存症の診断にTobacco Dependence Screener(TDS)が使用されていることから、FTND、TDS、喫煙本数の少ない若年者向けに開発されたHooked on Nicotine Checklist(HONC)の一部を用いて20~30歳代の女性喫煙者のニコチン依存の現状を分析することと禁煙に対する意思との関連要因を検討することを目的とした調査を行った。
    方法:対象はインターネット調査会社にモニター登録している20~30歳代の女性現喫煙者である。インターネット調査を用いて、喫煙状況、ニコチン依存度としてFTNDおよびTDS、HONCの一部、禁煙の意思等について調査を実施した。喫煙者1000名の回答を集め、分析を行った。
    結果:不正回答および直近1ヶ月全く喫煙していない者を除く喫煙者975名の1日当たり平均喫煙本数は14.3本、平均喫煙年数は10.3年であった。FTNDスコア平均は3.5±2.2(SD)、TDSスコア平均は5.3±2.7(SD)であった。健康保険による禁煙治療適用基準となるTDSスコア5点以上の「ニコチン依存症」となるのは62.9%であった。HONCの項目である「たばこを止めることが本当に難しい」から喫煙しているのは37.5%であるが、89.4%が「日常生活の中で無性にたばこが吸いたくなる」というたばこ渇望を感じており、喫煙本数やFTNDスコアには表れない強いニコチン依存があることが示唆された。喫煙女性の78.4%が将来禁煙する意思があったが、1ヶ月以内に禁煙したいと考えている58名中、禁煙治療適用条件であるTDSスコア5点以上は34名で、かつブリンクマン指数200以上に該当するのはわずか8名であった。
    結論:20~30歳代の女性喫煙者は、喫煙本数が少なくても強いたばこ渇望があり、TDSスコアの評価からもニコチン依存症に該当する者が過半数を占めた。禁煙の意思は、喫煙本数や喫煙年数が少ないほど高くなっていた。しかし喫煙本数や喫煙年数が少ないために、禁煙したくても現在の健康保険制度による禁煙治療が適用されない実態が明らかとなった。
  • -奈良県生活習慣病調査の分析から見えてくるもの -
    山田 全啓, 吉村 晴代, 村井 孝行, 田中 考子, 志野 泰子, 佐伯 圭吾, 車谷 典男, 高橋 裕子
    2009 年 vol.3 巻 02 号 p. 18-28
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/11/04
    ジャーナル オープンアクセス
    目的:当保健所では、こどもの喫煙防止対策の拠点の一つは、“学校”と位置付け、学校敷地内禁煙に取り組んできた。今回は、もう一つの重要な要素である“家庭”に着目し、家庭環境がこどもの喫煙行動にどのような影響を与えているかについて分析した。
    方法:平成16年に奈良県が実施したこども生活習慣病調査(対象:中学校20校4,776人、高校15校5,047人)をもとに、こどもの喫煙行動に及ぼす家庭の影響についてクロス集計した。
    結果:男子では、家族の喫煙が小学校4年生までの喫煙開始に影響していた。一方、小学校6年以降は友人の影響を大きく受けていた。女子では、家族の喫煙の小学校低学年への影響は男子ほど強くなく、むしろ中学1年生以降の友人の影響が大きかった。保護者の喫煙は、こどもの喫煙継続にも影響していた。保護者がこどもの喫煙を注意しているかどうかが、こどもの禁煙継続に影響しており、保護者の注意や声かけは効果的であった。こどもの喫煙行動は、飲酒行動や食習慣、不定愁訴等とも密接に関連していた。
    結論:こどもの喫煙行動は家庭環境の影響を受けており、こどもの生活習慣全般に目を向けた介入や、保護者も含めた家庭環境の改善に努める必要がある。
  • 種市 摂子, 三浦 秀史, 清原 康介
    2009 年 vol.3 巻 02 号 p. 29-33
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/11/04
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    背景:起床時の疲労感は、ありふれた愁訴であるものの、これまで喫煙と起床時の疲労感との関係については報告されていない。今回、勤労者における起床時の疲労感に焦点をあて、喫煙との関係について検討した。
    目的:本研究は、勤労者の男性において、喫煙が起床時の疲労感と関連があるかどうかについての検討を目的とする。
    方法:健康質問票を首都圏5社に勤務する270人に配布した。質問票の回答より、起床時の疲労感を従属変数とし、喫煙状況、仕事での精神的負担、仕事での身体的負担、1ヶ月の時間外労働、企業、年齢を独立変数としたロジスティック回帰分析を行い、オッズ比およびその95%信頼区間を算出した。
    結論:今回使用した健康質問票は、主観的な評価であり、起床時の疲労感は特異的な症状ではないが、喫煙者では、起床時の疲労感がある者の割合が有意に多かった。喫煙者の起床時の疲労感は、勤務状況も含めた健康影響のほか、過去の報告からCOPDによる健康影響の可能性が考えられた。
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