発達障害研究
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特集号: 発達障害研究
44 巻, 4 号
インクルーシブ教育の視点から支援が必要なギフテッドの教育を考える
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 石田 祥代
    2023 年44 巻4 号 p. 323-333
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/10/06
    ジャーナル フリー
    ギフテッドやタレンテッドの子どもたちの能力をフルに開発するには通常の学校教育にはない支援や活動を必要とするとのとらえ方もあるが,各国の教育課程での支援体制や取組み実践はさまざまである.加えて,支援を決定するための認定基準にギフテッド概念が加わっていない国も多い.さらに,本邦の優秀児支援研究は緒についたばかりで,先行研究は限定的で,支援内容や教育システムを検討するための基礎研究や理論分析の積み重ねが必要である.わが国においては,有識者会議が実施したアンケート結果から児童生徒が学校で抱える困難が明らかとなり,特定分野に特異な才能のある児童生徒に関する教育的支援のあり方の具体的な検討が行われている.諸外国では,ギフテッドプログラムを国策として定着させている国も多いが,教育の責任主体である地方自 治体に着目し,フィールド調査を通しての情報収集や,学校での具体的取組みに掘り下げた研究も必要とされている.
  • 中道 圭人, 髙橋 実里, 杉田 克生
    2023 年44 巻4 号 p. 334-343
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/10/06
    ジャーナル フリー
    療育センターを受診した5-6歳児16名(M=71.13か月)を対象に,ギフテッドのスクリーニングの可能性を検討した.まず,対象児を標準群(IQ85-114),マイルドリ群(IQ115-129), モデレイトリ群(IQ130以上)に分類した.また,対象児の行動や感情等(GADC-J,CBQ-JSR) について保護者に評定を求めるとともに,対象児に心の理論課題を実施した.その結果,マイルドリ群・モデレイトリ群では,標準群や他調査・5歳児と比べ,日常での衝動性やネガティブ感情の表出,そして心の理論課題の遂行において違いがあった.また,モデレイトリ群の参加児のみで見られる得点プロフィール(GADC-JでG選択数が多く,CBQ-JSRで複数領域にわたり得点が高い) が見出された.包括的なアセスメントが,幼児のギフテッドの可能性を判断するために有用だと考えられる.
  • ─民間プログラミング教室におけるインタビューをふまえて─
    榎本 大貴, 野口 晃菜
    2023 年44 巻4 号 p. 344-353
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/10/06
    ジャーナル フリー
    日本におけるギフテッド教育については,文部科学省「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議」の方針をふまえ,「インクルーシブ型」(通常の学級の中で求められる支援)と「取り出し型」(通常の学級とは別の場で民間機関等が担う支援)について具体的な検討する必要がある.本稿では,第一著者が所属する会社が運営している民間のプログラミング教室でギフテッドの傾向のある子どもと保護者へのインタビューを実施した.その結果,「インクルーシブ型」の支援については,「子どもに合った難易度・ 進度の教材の使用,または持ち込みの許可」など7項目,「取り出し型」の支援については「学校に限らない教育資源へのアクセシビリティの担保」など2項目に分類をすることができた.「インクルーシブ型」の支援を前提としながら,必要に応じて「取り出し型」の支援を実施していく仕組みを整える必要性がある.
  • ─ギフテッドの定義やニーズ,早期発見,介入方法─
    是永 かな子
    2023 年44 巻4 号 p. 354-367
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/10/06
    ジャーナル フリー
    本稿では2024/25年度からギフテッドのスクリーニングチェックリスト活用を目指すデンマークのギフテッド教育の動向を示した.方法は文献研究と調査研究であり,結果は以下である. ギフテッドとは通常IQ130以上(約 2%)を指し,IQ120以上(約5%)もその対象になることがある.自治体によっては上位10~15%を特別な教育の対象としていた.ギフテッドのニーズとしては,能力を十分に発揮できない場合に成績不振や社会的・情緒的・行動的問題を引き起こす危険性や非同期発達が指摘されていた.またギフテッドの早期発見にはチェックリストの活用の有効性も示された.ギフテッドの介入方法は学級における個別・集団介入,パートタイム介入,サマースクール,特別学級,特別学校が検討されたが,総合的にはパートタイム介入が学力向上と情緒的安定に最も効果があることが示唆された.日本でもパートタイムの介入としての通級の対象にギフテッドが包括されることを期待したい.
  • 伊藤 駿
    2023 年44 巻4 号 p. 368-376
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/10/06
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,英国(特にイングランドとスコットランド)におけるギフテッドの子どもたちに対する教育の諸相を明らかにすることにある.そのためにイングランドについては公開情報を,スコットランドについては公開情報に加えて現地調査のデータを用いてその実相に迫った. 調査の結果,イングランドにおいては,ギフテッドの子どもたちに対する特別なプログラムが提供されたり,教員向けの研修開発等,言わばギフテッドの子どもたちに焦点をあてたさまざまな取組みがなされてきた.しかしながら,ギフテッドの子どもたちに焦点をあてたプログラムは廃止され,学校教育の改革による包摂が進められていった. 他方でスコットランドでは議会発足以降ギフテッドの子どもたちに対する教育はインクルーシブ教育の一環として行われてきた.具体的には,ASNの1つとして「よくできる子ども」が挙げられており,こうしたニーズに応答することが各学校に求められていた.
  • ―A 県特別支援学校を対象とした質問紙調査から―
    平澤 紀子, 出口 和宏 , 篠原 清昭, 芥川 祐征
    2023 年44 巻4 号 p. 377-390
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/10/06
    ジャーナル フリー
    本研究は,A県特別支援学校部主事60名への質問紙調査をもとに部主事がとらえる学部経営に必要な力量を検討した.有効回答48名(回収率80%)で,学部経営がうまくいっていると部主事が感じている程度は10点中平均 6.5点,特にうまくいっているとされていたのは「教職員との協働」,特に難しいとされていたのは「組織の管理運営」であった.部主事が重視している力量に関する回答の因子分析から,4因子(学校経営をふまえた組織運営力,教育推進力,保護者との協働力,教職員との協働力)が抽出された.これらのうち,特に重視している力量の因子は「教職員との協働力」であり,習得していると考える力量に関して得点が低かった因子は「学校経営をふまえた組織運営力」と「教育推進力」であった.さらに,特別支援学校教諭の免許状と特別支援学校の経験の有無は学部経営の困難や教育的力量と関連していた.部主事には校長の学校経営の考え方をふまえて障害のある子どもの教育を教職員と協働して組織的に推進する力量が必要であり, 特別支援学校教諭の免許状を有さず,特別支援学校の経験のない者は教育的力量も必要であることが示唆された.これらの育成策について言及した.
  • 尾川 周平, 水内 豊和, 小島 道生
    2023 年44 巻4 号 p. 391-402
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/10/06
    ジャーナル フリー
    ASD を伴う高校生の自己価値の随伴性,自己価値の源泉の充足感,生活満足度の実態を把握し,それらの関係性を同年代の高校生との比較を通して明らかにすることを目的とする. ASDを伴う高校生12名と同年代の高校生50名を対象にして質問紙調査を実施した.その結果,自己価値の随伴性の「運動能力」および自己価値の源泉の充足感の「学業能力」「人間関係」「意欲的活動」が高いほど,ASDを伴う高校生の生活満足度が高い傾向にあることが示された.また,ASDを伴う高校生の自己価値の充足感の「意欲的活動」は同年代の高校生よりも有意に低かった. 結果を受けて各構成概念の関係性等を考察した.「運動能力」においては,内発的動機づけに基づいて自分の好きなスポーツに取り組むことで,生活満足度が高まる可能性を考察した.また,「意欲的活動」においては,ASDを伴う高校生が意欲的に取り組める活動を見つけ,充実した活動に取り組むための支援の必要性を指摘した.
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