2013年10月16日、伊豆大島において、台風第26号の接近に伴う記録的な大雨により、死者・行方不明者39名の土砂災害が発生した。大島町は、この災害を契機として、土砂災害に対する警戒避難体制の改善を行った。主な改善の内容は、土砂災害警戒判定メッシュ情報を利用しての避難対象地域の限定、土砂災害警戒情報等による避難情報の発令の定式化である。併せて、住民向けに土砂災害に対する防災知識の普及啓発を繰り返し実施した。
このような改善が実施されているなかで、大島町は、土砂災害後3年間の大雨時等に6回の避難勧告の発令を行った。ところが、避難率は、土砂災害直後は40%であったものの、半年後には約5%に低下した。
土砂災害後の3年間に実施したアンケートとヒアリング調査によると、避難率が低いことの原因は、避難勧告の空振り、避難所の環境、時間の経過による危機意識の薄れ、避難行動が困難な高齢者の存在などである。したがって、これらに関する改善が避難率の向上につながると考えられる。避難所の環境改善や高齢者対策は、費用などの問題はあるものの実現可能である。一方、避難勧告の空振りの改善は、土砂災害警戒情報の精度に依存しており、精度向上が求められる。
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