近年,浸水により孤立した病院から入院患者が救助される事例が相次いでいる.首都圏で大規模水害が発生した場合,病院が長期間孤立し入院患者が生命の危機に瀕する危険性がある.しかし患者の避難には長時間を要するため,現在の洪水予測精度では患者を事前に浸水域外へ避難させることは難しい.そのため大規模水害時に孤立した病院からの患者の救助について検討する必要があるが,詳細な検討はなされていない.
本研究では,まず災害時の病院の孤立事例を参考に,大規模水害時に生命の危機に瀕する恐れのある患者について何日以内に救助する必要があるかを検討し,患者の症状に応じて目標救助時間を浸水から 1 日以内,2 日以内,3 日以内と設定した.次に荒川の氾濫を対象にボートによる救助シミュレーションモデルを構築し,目標時間内での救助の実現可能性を検証した.その結果,重症患者が 50 人以上入院している 8 つの大病院において乗船やボート係留に時間がかかり,救助隊の活動時
間が 1 日 12 時間の場合,浸水域の全患者が救助されるまでに浸水から約 7 日を要することがわかっ
た.目標時間内に患者を救助するには,大病院において乗船箇所を最大 8 箇所まで追加し,周辺の 前進拠点数と一つの前進拠点で同時に活動できるボート数を増やす必要があることを明らかにした.
抄録全体を表示