災害情報
Online ISSN : 2433-7382
Print ISSN : 1348-3609
20 巻, 2 号
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査読原稿
  • 武内 慶了, 諸岡 良優, 山田 正
    2022 年20 巻2 号 p. 239-250
    発行日: 2022年
    公開日: 2026/05/01
    ジャーナル フリー

    本研究は、洪水時の避難情報や周囲の状況変化、周辺住民の行動といった各種要因が、避難開始行動の時間変化に与える影響を理解するためのシステム方程式を得ることを目的とする。まず、対面形式のアンケート調査で得た、地域の避難開始世帯数の時間変化や避難のきっかけ等から、避難開始行動の特徴を見出した。その特徴に基づき、多数の住民から成る地域の避難開始行動を 1 つの集合体の運動と捉え、システム方程式を導いた。このシステム方程式は、Logistic 方程式を 2 階微分形で表された運動方程式である。このシステム方程式により、累積避難開始人数の時間変化実態を、非常に良く再現できることを示した。これを踏まえ、避難開始行動が以下のように解釈可能であることを示した。1) 複数の避難・水文情報や周囲の状況の変化に応じて蓄積される危機感が、地域の避難率を一義的に規定する。2) 避難指示や溢水等周囲の状況の変化が、地域の避難開始行動の起点となる。3) ある住民の避難開始行動は、残っている他の住民に影響を与え、累積避難開始人数の時間変化が加速・減速する要因の 1 つとなる。4) 感度分析から、率先避難者が多いほど、避難開始総人数が増加するとともに、多くの避難者が避難開始するまでの時間が短くなることが示唆された。

  • ー 津波避難訓練用シミュレータシステムの妥当性検証 -
    荒川 俊也, 山邉 茂之, 尾林 史章, 鈴木 高宏, 小林 一信, 板宮 朋基, 宇野 新太郎, 田島 淳
    2022 年20 巻2 号 p. 251-261
    発行日: 2022年
    公開日: 2026/05/01
    ジャーナル フリー

    我々は、地震・津波の科学的理解を深め、防災意識の向上に努める必要がある。特に、東日本大震災からの教訓として、自動車避難や徒歩避難どちらかに固執するのではなく、適切な避難方法を自ら検討できるようにすることが重要である。人間は体験から学ぶことが多いので、仮想的に津波避難を体験することができれば、住民が避難方法を検討する一助になると考えられる。このような観点から筆者らは、自動車避難と徒歩避難の両方を経験でき、自動車と歩行者の混在状況下での避難を経験することのできる津波避難訓練用シミュレータシステムを開発した。また、宮城県石巻市において、実際に津波避難を経験したことのある 10 名の協力を得て、開発したシミュレータシステムの評価試験を実施した。その結果、シミュレータと実際の運転感覚・歩行感覚との違いに起因する違和感という問題はあるものの、シミュレータシステムにより、緊張感や切迫感を持ちながら避難を体験できることが示唆された。この経験をすることで、自動車避難か徒歩避難かに固執することなく、状況に応じた適切な避難方法を自ら検討できるようになることが期待できる。

  • ―非被災地の「絆」言説にみる災害の消費と忘却—
    小林 秀行
    2022 年20 巻2 号 p. 263-274
    発行日: 2022年
    公開日: 2026/05/01
    ジャーナル フリー

    本論文は、東日本大震災における「絆」言説を視点として、とくに非被災地である首都圏における災害の消費と忘却という構造を、先行研究のレビューならびに 1 都 3 県に居住する 600 名に対する質問紙調査から、明らかにしたものである。東日本大震災の発生当初、日本社会では「絆」「がんばろう日本(東北)」などのメッセージ、「絆」言説が社会の様々な場面でみられた。「絆」言説は震災を契機とした集合的沸騰のなかで、社会全体での共有が可能なスローガン、シンボルとして広く用いられた。しかし調査からは、首都圏という非被災地の人々にとって、この言説は生活世界の外側の言葉として受け止められていたという結果が得られた。首都圏においては、「絆」言説が社会で共有されているという認識はあっても、自らがそれを用いて支援活動などに加わろうとするような内面化には必ずしも至らなかった。そのため、長期化していくなかで「絆」言説はシンボルとしての「人を揺り動かす力」を失い、使用の中断や積極的な否定といった反応がみられるようになった。先行研究のレビューを通してこの結果を捉えたとき、これは災害を交換可能な他者の問題として処理する仕組みとして理解でき、一時の沸騰を経て、時間的つながりの断絶という意味での忘却につながる背景構造となっていることが明らかとなった。

  • ―COVID-19 下の災害時避難を事例に—
    千葉 洋平, 佐野 浩彬, 前田 佐知子, 池田 千春, 三浦 伸也, 臼田 裕一郎
    2022 年20 巻2 号 p. 275-283
    発行日: 2022年
    公開日: 2026/05/01
    ジャーナル フリー

    全国各地に平時の事前防災活動や災害時および事後対応の経験や課題が多数存在しており、課題解決に向けた様々な対策や実践が行われている。国、自治体、研究機関、マスメディアなどがウェブサイトを通じてこれらの情報を発信しているが、関連する情報コンテンツの蓄積と一覧化が主であり、個々の情報コンテンツの中に潜む知の集約による提供までは至っていない。そのため、情報の受け手は各地の状況を概観するに留まり、課題解決に役立ち得る各地の知を適切に活用できるとは言い難い。そこで本研究は、Web コンテンツをもとに、全国各地の防災課題や対応について各自治体および地域が相互に参照し合える知に集約するプロセスの一例を示すことを目的とした。はじめに、DIKW モデルの概念を用いた Web コンテンツに基づく知の集約手法を提案した。次に、その適用可能性を明かすために、COVID-19 下での災害時避難に関する Web コンテンツを対象とした知の集約化を実践した。その結果、DIKW モデルの概念は個々の Web コンテンツから知に集約するための道筋を明確化し適用可能であること、また、人間による作業によって Web コンテンツから適切に知に集約したサマリーレポートを構築できること、さらに、当該サマリーレポートは各地の課題解決に資することを確かめられた。

  • 有吉 恭子, 越山 健治
    2022 年20 巻2 号 p. 285-295
    発行日: 2022年
    公開日: 2026/05/01
    ジャーナル フリー

    日本では災害時の避難所として既存施設を転用しているため、空間や機能の制約が存在することは否めない。本研究の目的は、避難所の空間や機能の制約により発生する課題を空間配置・機能工夫により対応・解決をはかる一連の構造を明らかにすることである。手法としては、学識経験者等から推薦された 11 避難所にて得たインタビューデータを分析し、避難所で発生する課題の発生構造について、空間に起因するかどうかを解き、課題への対応について概念図化し、レイアウト上で表し、空間問題として対応できうるかの整理を行い、解決手法の体系化に向けて試行した。本論においては、学識経験者等から推薦された 11 避難所の運営関係者等から得たインタビューデータ 4, 629 文について分析し、60 点の理論記述を得た。次にこれらをKJ法で分類し、「建物被災」「管理者視点」「管理者と避難者」「避難者個人」「避難者同士」の課題グループと「ルール・取り決め」「空間配置・機能工夫」の2つの対応・解決グループに分類した。ここから課題と対応・解決の相互関係を整理し、数点を具体的な避難所空間に落とし込み、避難所で発生した課題を空間に起因するものとして整理し、空間上の工夫で対応・解決が図られた一連の構造を示した。避難所対応として、生活空間の中で機能を分けることが、公衆衛生上も健康対策上も、さらには被災からの回復という点からも重要であり、それを空間配置・機能工夫により実行していることを明らかにした点が本研究の成果の一端と言える。

  • 千葉 啓広, 倉田 和己, 利藤 房男
    2022 年20 巻2 号 p. 297-308
    発行日: 2022年
    公開日: 2026/05/01
    ジャーナル フリー

    本稿では、愛知県西三河地域の主要国道 3 路線に対して、基礎自治体の実務実態を踏まえ、主と して、オープンデータ等の一般に取得が容易な情報を活用し、道路盛土の抽出を試みた。また、抽 出対象道路と接続する主要道路(国道及び県道)とのネットワークを考慮した上で、想定地震動へ の曝露状況、及び微地形区分を考慮した区間ごとの被災可能性を簡易的に評価し、被災可能性のあ る推定道路盛土が立地する区間を地図上に示した。この結果を用いて、基礎自治体の実務をイメー ジし、県の物資拠点から基礎自治体の物資拠点への物資の輸送ルート設定に関する考察を行い、道 路盛土の被災による道路閉塞のリスクを考慮した迂回路の事前検討が可能であることが確認された。

  • 真城 源学, 月ヶ瀬 恭子
    2022 年20 巻2 号 p. 309-318
    発行日: 2022年
    公開日: 2026/05/01
    ジャーナル フリー

    大規模商業施設・複合施設は、災害時に少数の施設運営・管理者によって不特定多数の利用者の安全を維持するという点において、難易度の高い防災力が求められる。他方で、訓練自体が業務の範疇となりうる自衛隊や消防組織などと異なり、大型商業施設・複合施設の営業という通常業務を維持していく上で、業務時間を削って防災に係る教育訓練を行うことや、教育訓練のための予算を獲得することが課題となっている。本検討では、災害対応能力(DML)値を用いて、DML 値が 3 桁以上を現場指揮適格者として位置付け、より多くの人員が現場指揮者に適格となるための教育訓練を3 ヶ月間で9 回実施した。その後、教育訓練の実施有無及び DML 値(2 桁と 3 桁)で、現場指揮適格者として十分な知見を有するかを状況付与試問にて検証した。検証試問において DML 値が 3 桁以上の人員の平均点は 2 桁の人員に比べ有意に高値を示した。今回は短期間で教育訓練を集中的に実施したが、教育訓練においてどのような内容が妥当、適切であるかは、施設や組織によって変化することは当然である。しかし、DML 値が 3 桁の人員が発災時の判断としてより具体的な判断・思考を見せたことから、現場を指揮すべき人員の DML値を 3 桁に推移させることを目標とし、それを根拠として訓練計画することで、訓練頻度の妥当性を説明する手法になることが示唆された。

  • ー伊勢市一宇田地区における事例を通じてー
    日野田 圭祐, 竹之内 健介
    2022 年20 巻2 号 p. 319-330
    発行日: 2022年
    公開日: 2026/05/01
    ジャーナル フリー

    現在、災害時の対応行動を時系列に示したタイムライン(防災行動計画)の取り組みが行政だけでなく、地域や個人においても推進されている。一方で、タイムラインの内容や社会的な位置づけがどうあるべきなのか、その詳細な議論は十分になされていない。本研究では、三重県伊勢市一宇田地区における地区タイムラインの作成を通じ、住民の災害意識や公的な情報と地域のローカル情報に対する考え方の差異を確認し、タイムラインへの活用を検討した。また、一宇田地区タイムラインの特徴を他のタイムラインと比較しながら確認することで、一宇田地区タイムラインの特徴や課題を明らかにするとともに、住民の災害対応の促進に向けたタイムラインのあり方を探求した。取り組みの結果、一宇田地区タイムラインでは、災害意識に基づき地区分けを行うとともに、避 難情報や気象情報に加え、住民が危険を感じる地域のローカル情報や災害時の地域の取り組みなどを規定した。またタイムラインの比較として、「公的機関のタイムライン」・「マイ・タイムライン」・「地区タイムライン」を取り上げ、主に「時間」・「行動主体」・「行動内容」の視点からその差異を確認した。その結果、地区タイムラインは地区の独自性が現れやすいこと、また各地域の特色に応じたタイムラインのあり方を議論していくためにも、タイムライン間の連携や情報共有の重要性も確認された。

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