災害情報
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21 巻, 1 号
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査読原稿
  • ―福祉専門職への調査から―
    山﨑 真梨子
    2023 年21 巻1 号 p. 1-11
    発行日: 2023年
    公開日: 2026/05/16
    ジャーナル フリー

    令和 3 年改正の災害対策基本法で,個別避難計画作成が市町村の努力義務となった.本研究の目的は,市町村が取り組みを推進するにあたっての,自然災害における高齢者の避難支援の現状と課題を把握することとした.研究方法は,A 県B 市の居宅介護支援事業所の介護支援専門員等の福祉専門職に対する調査とし,47 事業所,107 人から回答を得た.

    本研究から,現時点で福祉専門職による支援も一部行われているが,避難支援の課題として次の 4 点が明らかになった.(1)利用者の避難意思には,利用者の内的要因だけではなく,避難先の環境や他者への遠慮などの外的要因も影響しており,その両方に働きかける取り組みが必要である.(2)高齢者の避難支援の課題は多岐にわたっており,心身の状況に応じた避難先の選定や公的サービスを円滑に利用するための取り組みが必要である.(3)避難支援に必要な情報として,必要な避難支援や災害リスク,避難先の設備情報や避難先で受けられる支援に関する情報がある.(4)福祉専門職の個別避難計画作成対応の課題として,必要性は感じているが全ての利用者を作成することは困難であることから,福祉専門職の役割を明確にしておく必要がある.

  • ―企業を対象とした噴火シミュレーション調査を通じて―
    中澤 幸介, 大友 章司, 木村 玲欧
    2023 年21 巻1 号 p. 13-22
    発行日: 2023年
    公開日: 2026/05/16
    ジャーナル フリー

    日本には、111 の活火山があり、これまでに数多くの火山災害が発生しているが、都市部への降灰を伴う大規模な噴火は近年発生していない。そのため、我が国においては、降灰により都市機能が奪われた際の企業の BCP(事業継続計画)についてはあまり対策が進んでいないのが現状である。そこで、富士山噴火を例に、現在企業が構築している BCP が、どの程度噴火時に機能するのかを「噴火シミュレーション調査」により検証するとともに、噴火へ対応することができない BCP を構築していると考えている企業と、噴火への対応が可能と考えている BCP を構築している企業の回答を比較し、噴火対応に必要な BCP の要素を明らかにした。結果としては、富士山の噴火に対して、多くの企業が十分な備えができておらず、既存の BCP が機能しない可能性があることが明らかになった。一方、噴火対応が可能とする BCP を構築している企業は、噴火警戒レベルが高まった時点や、噴火時、降灰時などの各フェーズにおいて、より多くの行動を検討し、物流が数週間止まった際でも、在庫戦略や代替戦略によって事業継続が可能と考えていることが分かった。噴火への対応ができない BCP を構築している企業と対応が可能とする企業では、日常的に経営者を含めた噴火リスクの話し合いレベルに差が見られたほか、事業継続マネジメント(BCM)への取り組み方全般に有意な差があった。

  • -「絆」と「共助」を手掛かりとして-
    小林 秀行
    2023 年21 巻1 号 p. 23-34
    発行日: 2023年
    公開日: 2026/05/16
    ジャーナル フリー

    本研究は、防災・減災において自明視されやすい「助」行為の問題について、東日本大震災時に流行した「絆」、そしてそれによって励起された共助を手掛かりとしながら、明らかとしたものである。「絆」は、あるシステムや集団の構成員が、相互に何らかの共存・共有を通して信頼関係を維持している状態を示す。そして「絆」は災害時、信頼関係の明示化を通して社会に支援の必要性を認識させるが、一方で政策的な用語として「助」行為を称揚する「お守り言葉」の位置を占めていた可能性をもっている。近世日本以来の共助は時代を越えて現代日本の社会関係にも大きく影響を与えており、とりわけ近年では自己責任論との接続のなかで、共助はむしろ人々を抑圧し、個人を希薄化させ、「助」行為による二次受傷の可能性、すなわち被傷性への想像力を喪失させるという側面を強めてきた。災害における「助」行為はそもそも被傷性を内在しており、その実践には慎重さが求められるはずだが、たとえば「絆」が

    「お守り言葉」として権力者の価値体系を笠に着る時、それは一見して分かち合いとしての自助・共助を後押しする言葉のようでありながら、被傷性への想像力を覆い隠し、「助」行為の拡大と二次受傷へ自己責任論を適用する可能性をもつ。このような構造は現代における「助」行為がもつ危険性であり、社会の側で災害の記憶や経験の継承、防災教育などを通じた対策が求められる。

  • 本間 基寛, 牛山 素行
    2023 年21 巻1 号 p. 35-45
    発行日: 2023年
    公開日: 2026/05/16
    ジャーナル フリー

    近年、線状降水帯の発生とそれに伴う豪雨被害が各地で発生している。気象庁は、2021 年 6 月から「顕著な大雨に関する気象情報」を発表し、線状降水帯の雨域を赤い楕円で表示しているが、その情報の発信のあり方について知見が十分であるとは言えない。本研究では、線状降水帯に関する情報の課題について整理を行うともに、情報が発信された場合の住民の危険度認識についてインターネットアンケート調査を行った。

    その結果、降水量分布図に重ねる形で線状降水帯の楕円を表示することで、その地点での危険度認識を高める効果があることが確認された。一方で、楕円がかかっていない地点では、楕円がかかっている地点に比べて危険度は低いと認識され、安全情報として捉えられる可能性があることが示唆された。また、線状降水帯の現象を正しく理解している人ほど、線状降水帯となるような雨での危険度を高く認識する可能性があることが示された。楕円を提示することよりも、線状降水帯の正しい理解の方が線状降水帯の危険度の認識を高める効果が高い可能性も示唆された。

    強雨域や線状降水帯から離れた地点にあっても、線状降水帯の楕円を表示した方が危険度認識は高まる可能性が示された。現在気象庁は、警戒レベル 4 相当でないと線状降水帯に関する情報は発表しないが、海上で発生しているケースも含め、線状降水帯から離れた地点の人に対してもその発生を知らせる意義はあると言えよう。

  • ―公共交通機関を利用しての域外広域的避難計画―
    田代 權一, 橋本 隆雄
    2023 年21 巻1 号 p. 47-58
    発行日: 2023年
    公開日: 2026/05/16
    ジャーナル フリー

    本稿は、公共交通機関を利用した広域避難計画を研究の対象とする。広域避難計画は、国や地方で精力的な取組がなされているが、「広域避難においては、課題があまりにも大きく複雑に絡み合っているため、どこから手をつけて良いか分からないという事態に陥りがちである(内閣府, 2021)」ため、実効性のある具体的な広域避難計画の策定を進めるのが難しい現実がある。このような状況を踏まえ、今後の広域避難計画検討の参考に資することを目的として、世田谷区(以下「区」という。)の公共交通機関の利用を前提とした多摩川洪水からの域外広域的避難計画を研究事例として、具体的に検証する。この計画は、他の市区町村へ行政界を越えた避難を行わず、周辺自治体との調整が必要ないため、広域避難計画とは定義されないが、計画対象区域は、東京都に存在する 2 大水系のうちの一つである多摩川本川左岸に位置し、区域内全域が浸水するため、域外への広域的避難が必要になる立地となっている。また、避難対象人口が 5 万人を超え、区内の広域に配置された水害時避難所に避難する当該計画は、広域避難に匹敵する規模と内容を有する計画である。広域避難計画が、具体的策定段階までは至っていないことが多いため、広域避難計画の内容を具体的に分析・評価した研究が進んでいない現状の中で、本研究は、感染症まん延条件下において、区の水害時避難計画の具体的な分析・評価を行うものである。

  • 大原 美保, 新屋 孝文
    2023 年21 巻1 号 p. 59-67
    発行日: 2023年
    公開日: 2026/05/16
    ジャーナル フリー

    災害対応を円滑に行うには、過去の災害での教訓を学び、起こりうる困難をあらかじめ予測しておくことが重要である。水害対応ヒヤリ・ハット事例集は、地方自治体が刊行した過去での水害の災害対応検証報告書から、職員が「困る・焦る・戸惑う・迷う・悩む」などの状況に陥った事例を収集し、わかりやすく紹介したものである。近年、水害の激甚化・広域化に伴い、災害対応検証報告書数が大幅に増えており、いかにして最新の事例を効率的に収集し、事例集に反映させていくかが課題である。本研究では、テキストマイニング技術を活用した水害対応ヒヤリ・ハット事例の自動抽出に向けた基礎的検討として、災害対応検証報告書での事例報告の傾向を分析するとともに、事例の自動抽出を検討する上での留意点や課題を把握した。語彙をたよりに事例を抽出する場合には重複抽出のリスクが高いことがわかり、これらの考慮の必要性が示唆された。

  • ー 参集行動の課題 ー
    吉川 文隆, 中林 啓修, 田中 秀治, 生亀 勝
    2023 年21 巻1 号 p. 69-79
    発行日: 2023年
    公開日: 2026/05/16
    ジャーナル フリー

    目的 被災経験のない自治体における災害対応の初動体制に重要な非常参集体制について、より効果的な体制を構築するために被災経験が少ない草加市職員に対し、質問紙調査を実施し、過去の災害対応検証と現在の社会生活を踏まえた考察を加えた。

    結果 調査地域の災害時の職員の参集行動の認識には、過去の災害教訓と同様に個人属性が大きく影響を与えていた事が明らかになった。要因として、家族の養護、介護等によるものが多くを占め、特に 30 歳代から 50 歳代の中堅の女性職員などの約 4 割が非常参集を行う際の課題として認識している事が明らかとなった。非常参集すべきかの判断は、職員自身の訓練実施の有無が影響を与え、さらに多くの職員が災害に向けた物品等の準備はしているものの、参集に向けたルート確認や子供の預け先などの環境の整備まで考えているという回答は少なかった。

    結語 非常参集は、過去の災害においても実施され、検証されてきた。同じ課題が出されていることから、被災経験、訓練経験が少ない自治体職員の多くは過去の災害教訓を活かされない可能性が示唆された。災害教訓と現在の社会生活をもとに参集方法の検討だけでなく、職員個人の環境に合わせ、参集に向けた物品や施設整備等のハード面の準備と、子供の預け先や、情報の共有方法などのソフト面の準備が必要になり、教育研修等の充実を含めた組織の体制の強化により、多くの課題を解消できる可能性がある。

  • ―第3 波における社会調査データを用いた検討―
    石橋 真帆, 安本 真也, 関谷 直也
    2023 年21 巻1 号 p. 81-91
    発行日: 2023年
    公開日: 2026/05/16
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、本邦の新型コロナウイルスパンデミック時に見られた価値観の実態を、調査票で得たデータの分析から試行的に明らかにすることである。この目的を達成するため、新型コロナウイルス感染症についての価値観を示す 22 項目について探索的因子分析を行った。分析の過程で新型コロナウイルス感染症に対するリスク重視傾向を示す項目が除外された。結果として、本邦では「自由重視」「弊害懸念」「共存重視」という価値観の構造が得られた。これらの構造がどのように行動と関連するのかを検討するため、感染防止行動と情報拡散行動を目的変数とする重回帰分析を行った結果、「自由重視」「弊害懸念」「共存重視」全ての因子得点が感染防止行動と有意な関連性を示し、「自由重視」および「共存重視」の因子得点のみが情報拡散行動と有意な関連性を示した。このうち、「自由重視」因子は感染防止行動に負の、情報拡散行動に正の方向性で関連を示しており、調査実施当時社会的に推奨される行動の忌避に影響していた可能性がある。また、これらの価値観と情報源利用頻度との関連性を相関分析により検証したところ、自由重視傾向が高い人々は主にインターネットを中心に情報収集をしていることが類推された。以上の結果は、パンデミック時の価値観が行動フローを規定する重要な要因であった可能性を示している。

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