災害情報
Online ISSN : 2433-7382
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21 巻, 2 号
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査読原稿
  • 荒川 俊也, 尾林 史章, 小林 一信, 山邉 茂之, 鈴木 高宏
    2023 年21 巻2 号 p. 97-107
    発行日: 2023年
    公開日: 2026/05/16
    ジャーナル フリー

    2011 年 3 月 11 日の東日本大震災以降、日頃からの災害に対して備える教育が進められてきた。その一つとして避難経路の理解が挙げられる。しかし、避難経路は、市町村が予め指定する場合や、自主防災組織や住民が設定する場合があるが、その避難経路の妥当性は担保されていない。そのため、設定された避難経路の妥当性について評価方法を構築する必要がある。そこで、津波避難訓練用シミュレータを用い、愛知県西尾市民 17 名に対し、住民の土地勘のある経路を津波避難訓練用シミュレータで徒歩避難する実験を行った。避難時に、避難経路で気づいた点を逐一発話させると共に実験時の視線を計測し、さらに、実験後に実験の様子を収録した映像を提示し、映像提示時に実験を振り返りながら気づきを発話させた。その結果、遠方の目立つ建築物をランドマークとして把握しながら避難する傾向や、避難時に広い道路のある方向に行けば良いという意識が潜在的に働いていることが示唆された。これに加え、避難経路上で位置を把握しにくい箇所を抽出し、実際の避難経路と異なる経路を辿った結果や理由を考察することで、避難経路を探索する際の傾向把握やランドマーク設置の妥当性評価も可能であることが示唆された。このことから、津波避難訓練用シミュレータを活用することで避難経路の策定や問題点抽出に関する議論の土台を構築でき、防災・減災の政策や検討に寄与できる可能性がある。

  • 門倉 慧, 梅本 通孝
    2023 年21 巻2 号 p. 109-120
    発行日: 2023年
    公開日: 2026/05/16
    ジャーナル フリー

    文化芸術による被災者支援活動である『励まし活動』について企画・運営・実施に関 する知識と経験を体系的に整理し、励まし活動を実施する上での知見と課題を明らかにすることを目的として、熊本地震後に励まし活動を実施したコーディネーターと活動者に対してヒアリング調査を行った。その結果に基づき、企画から実施に至る具体的な活動の流れに加え、被災地と励まし活動の特性、コーディネーター及び活動者の行動・判断、それを行う上で必須な要素の 3 項目の関係性から、熊本地震後の励まし活動における知見と今後の活動上の課題を明らかにした。

  • -戦争の記憶・継承研究を手がかりとして-
    小林 秀行
    2023 年21 巻2 号 p. 121-132
    発行日: 2023年
    公開日: 2026/05/16
    ジャーナル フリー

    本研究は災害の記憶と継承をめぐるポリティクスについて、「想起の場」としての災害継承施設を対象として、戦争の記憶と継承に関する研究を手掛かりに整理を行ったものである。災害における「想起の場」は、「濃尾震災紀念堂」(濃尾地震)や「復興記念館」(関東大震災)などに始まり、防災・減災という目的を重視してきており、記憶の多声性や理解不可能性の認識と尊重というよりも、国家・行政による記憶メディアのコレクション化という傾向が見出される。もちろんコレクション化への対抗的な動きも行われてはいるが限定的なものに留まっており、戦争の記憶と継承をめぐってこのような記憶の回収に対する抵抗が長く行われてきたことを鑑みれば、災害におけるそれは記憶と継承のポリティクスに対する関心がいまだ十分ではなく、記憶の多様さを受け止め、またその継承の可能性を考える必要が認められることが明らかとなった。

  • -1934 年室戸台風報道の内容分析-
    川西 勝
    2023 年21 巻2 号 p. 133-145
    発行日: 2023年
    公開日: 2026/05/16
    ジャーナル フリー

    1934 年(昭和 9 年)室戸台風は、防災情報(警報)が定着していなかった社会を襲い、甚大な被害をもたらした。その反省から、明治期に始まった近代的な気象業務に初めての本格的な改革が施され、現在に至る防災気象情報システムの原点となった。この時、マス・メディアは<防災情報と避難>という、今日の防災で重要課題となっている論点について、どのように報じたのか。防災情報が豊かになりすぎたがゆえに様々な課題が生じている現在とは異なる時代における報道の視点を把握することは、防災情報に対する見方に固定化が指摘される今日のジャーナリズム活動を見直すうえで示唆に富むという問題意識に立って、当時の報道の内容分析を行った。報道で最重要議題(トップ・アジェンダ)に設定されたのは防災情報そのものの問題ではなく、受け手側への「気象知識の普及」だったことがわかり、室戸台風を、気象行政史の転機だけでなく、リスク・コミュニケーションの画期として再考する必要性が示された。当時のマス・メディアは知識普及に貢献した一方で、気象当局者に特権的正当性を付与したことで、防災情報は不確実性を伴うという本質から目をそらせることにつながった可能性がある。また、マス・メディアは、台風が<危険>から<リスク

    >へ転換されたことに伴う警報議論を活発化させるフォーラム機能を果たしたが、論点は学校被害に限定され、避難に関する幅広い議論は喚起できなかった。

  • ―民間組織同士の繋がりに着目して―
    早田 絵里菜
    2023 年21 巻2 号 p. 147-156
    発行日: 2023年
    公開日: 2026/05/16
    ジャーナル フリー

    本研究は、減災に向けて日々活動を行っている民間組織(NPO・NGO 等)に焦点をあて、国際的な連携がどのように取られているのかを明らかにしたものである。特に、国家間で活発な連携が取られている東アジア(日本・中国・韓国)を対象とし、インタビューが可能であった各国の NPO・ NGO 団体・キーパーソンにインタビュー調査を行った事例を報告する。その結果、日中の「災害関連博物館の建設」のための連携事例を通じて、第一段階から第四段階に至るパス(協力依頼)が出されていた事が明らかになった。具体的には、国際機関、大学等の組織へ向けたパス、キーパーソンに向けたパス、他国の民間組織や企業へのパス、現地の民間組織に向けたパス等がある。また、パスを出す過程において繋がる為には、キーパーソンとの接触が特に重要である事が分かった。パスを繋げる事が出来なかった事例を通じて、パスを受け取る事が出来ない(あるいは、受け取りづらい)要因には、組織同士における信用の問題、国際機関の定める支援対象に入らない事で支援が難しい点が挙げられた。課題として、民間組織がリスクを背負って連携を進めなければならない状況がある事が明らかになった。これらの課題を改善する為に、IoT を活用した繋がりを創出するツール開発や民間組織同士で連携する際に伴うリスクとその軽減策を議論するためのナショナルプラットフォームの構築が必要である事を提言した。

  • 本間 基寬, 諸原 慎之介, 戸谷 洋介, 後藤 祐輔, 牛山 素行
    2023 年21 巻2 号 p. 157-168
    発行日: 2023年
    公開日: 2026/05/16
    ジャーナル フリー

    近年、指定緊急避難場所への避難以外も含めた様々な避難行動である「分散避難」に注目が集まっている。避難情報発令前の段階での予防的な側面も含めて、宿泊施設へ早期避難を行うことの有用性が指摘されており、一部自治体ではその費用を補助する支援制度を設けているところもあるが、その普及は進んでいるとは言えない。そこで本研究では、宿泊施設への避難にかかる費用を補助する自治体の制度事例の収集・分析、台風・大雨時に地元住民の避難者を受け入れている宿泊施設へのヒアリング調査、宿泊施設への避難に対する住民の考え方やその費用の支払い意思額等に関するインターネットアンケート調査を行い、宿泊施設への早期分散避難の促進に向けた課題整理や施策提案を行った。その結果、現状では分散避難への理解は進んでいないものの、多くの住民は台風・大雨発生前の早期段階から宿泊施設避難を検討する可能性があり、一定の金銭負担があっても十分に利用する可能性があることがわかった。また、宿泊施設避難は災害時要配慮者に限定するのではなく一般住民も対象とした形で推進することが有用である可能性がわかった。住民の宿泊施設避難を促進するにあたっては、その宿泊施設の安全性の担保や情報提供、物資提供の支援が可能であるような仕組みが必要であることを示した。

  • 吉森 和城, 臼田 裕一郎
    2023 年21 巻2 号 p. 169-179
    発行日: 2023年
    公開日: 2026/05/16
    ジャーナル フリー

    都道府県は災害発生後速やかに県内の基礎自治体の対応状況や被害状況などの様々な状況把握を行い、基礎自治体に対して必要な支援を行う。基礎自治体から都道府県に報告される情報の一つに住家被害数がある。住家被害数は、応急仮設住宅、災害廃棄物、住家被害認定等の災害対応業務を行う上で基礎的な情報であり、早期把握が重要である。しかしながら、基礎自治体から都道府県への住家被害数の報告段階において、その報告スピードや内容が各自治体によって異なっている。このような状況が発生すると、都道府県では県内の基礎自治体の状況を適切に把握することができず、必要な支援を適切なタイミングで実施することが困難になる。

    そこで本研究では、都道府県が被害報等で公表する住家被害数のデータの経時的変位に着目し、実際の災害の被害報のデータを用いて住家被害数の経時的変位から、基礎自治体における浸水被害規模の早期把握のための現状と課題を整理することを目的とした。令和元年東日本台風を事例として都道府県が被害報等で公開したデータを用いて経時的変位の実態を把握した。さらに、長野県を対象として、県および基礎自治体に対して浸水による住家被害の収集方法や報告の方法についてインタビュー調査を行い、基礎自治体における対応が経時的変位としてどのように表れるかを考察した。

  • ―南海トラフ地震の津波想定地域での定量的調査―
    福本 晋悟
    2023 年21 巻2 号 p. 181-191
    発行日: 2023年
    公開日: 2026/05/16
    ジャーナル フリー

    東日本大震災では、放送を通じた津波の危機を知らせるはずの情報が、住民の避難を“後押し”するものになり得なかった可能性がある。この課題を克服するため、各放送局では「避難呼びかけ手法」(キャスターコメントやアナウンスメントなど)に着目した改善策を施し、そのいくつかは、既に津波警報発表時の放送で使用されている。また、改善策への住民の受け止めについての調査や研究が、近年積み重ねられつつある。

    本研究では、震災後に登場した新たな津波避難キャスターコメントに対して住民がどのように評価するのかを確かめるため、南海トラフ地震で津波襲来が想定されている和歌山市・神戸市・大阪市の住民を対象としたインターネットアンケート調査を行った。

    結果として、高評価/低評価となる一定の傾向がみられた。たとえば、「今すぐ避難してください」や「今すぐ逃げてください」という簡明なフレーズが高評価となった。東日本大震災以降に導入されたものでは、「急いで逃げること!ただちに避難!」は低評価となる一方、「ためらわずに」や「命を守るために」を住民は高く評価した。

    したがって、津波災害特番では高評価となったキャスターコメントを中心に据えての使用を検討すべきといえよう。一方で、低評価となった「大津波警報」などは、津波避難において必要不可欠な情報であるため、放送局は平時の番組などでその意味などを住民へ周知する活動も求められる。

  • 照本 清峰
    2023 年21 巻2 号 p. 193-203
    発行日: 2023年
    公開日: 2026/05/16
    ジャーナル フリー

    南海トラフ地震による被害の危険性の大きい地域には、住宅地だけでなく観光地も含まれる。南海トラフ地震の発生のタイミングによっては、激甚な人的被害が沿岸部の観光地で生じる可能性もある。このような潜在しているリスクに対しても、問題の特性を考慮して危機管理体制を構築することが求められる。観光客の避難の支援を含めた総合的な観光地の津波避難体制において、観光関連産業に携わっている現場にいる従業員の役割が重要になる。本研究では、観光客の津波避難の支援対応に関する従業員の認識及びそれらの関連構造を明らかにすることを目的とする。地震発生後の課題の認識と支援対応に関する責任の認識に着目し、それらの構成概念を設定して認識の関係性を構造的に把握する。調査対象地域は和歌山県白浜町の白良浜周辺地域である。調査対象者は、南海トラフ巨大地震の津波浸水想定区域内で観光関連の産業に従事する人たちである。調査票は、白浜町役場、白浜温泉旅館協同組合、白浜観光協会、白浜町商工会を通じて 2019 年 10 月 23 日より配

    布し、11 月 22 日まで郵送によって回収した。調査票の配布数は 346 票であり、有効回収数は 196

    (56.6%)であった。分析結果より、支援対応の行動意図に対しては、主観的規範、実行可能性の認識が大きな規定要因であること、南海トラフ地震発生後に人々が混乱することを予測する認識は対応の実行可能性の認識を大きく低下させること等が明らかになった。

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