災害情報
Online ISSN : 2433-7382
Print ISSN : 1348-3609
22 巻, 2 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
特集原稿
  • 水出 幸輝
    2024 年22 巻2 号 p. 143-148
    発行日: 2024年
    公開日: 2026/05/21
    ジャーナル フリー

    日本災害史において、1923年の関東大震災は重要な位置を占めている。しかし、100年という時間軸で考えた場合、関東大震災は常に〝日本社会の重要な記憶〟であったわけではない。「関東一帯の地方」の人びとのローカルな記憶、あるいは、忘却の危機に瀕した時期が存在している。本稿では、拙著『〈災後〉の記憶史メディアにみる関東大震災・伊勢湾台風』(人文書院)をもとに、こうした関東大震災の記憶認識の変遷について論じた。

    手がかりとしたのは周年報道の分析である。現代社会において巨大災害の周年報道は「当然」のように実施されるものだが、戦後に限っても、それは「当然」ではない。巨大災害であっても周年報道が実施されずに忘却へと向かう場合がある。また、関東大震災は記憶認識を変化させてきただけでなく、語り口も「復興」、「防空」、「防災」へと変化させてきた。これらは同時代の社会と対応するものであるが、言い換えれば、多様な語り口が災害の記憶を語り継ぐために重要であることを示している。

    災害情報とは異なる位相で、自然災害とマスメディアはどのような関わりを持つのか。また、自然災害をマスメディア企業が残してきたことをどのように考えるか。こうした問題を、100年の歴史を踏まえて論じている。

  • 中森 広道
    2024 年22 巻2 号 p. 149-152
    発行日: 2024年
    公開日: 2026/05/21
    ジャーナル フリー

    1923年9月1日に発生した関東大震災は、災害と情報についても問題が生じ、とりわけ、流言については大きく注目された。関東大震災当時の新聞報道をみると、多くの流言や誤報が各紙に掲載されている。このような報道をみると、関東大震災において新聞は、流言を広め、補強する役割を結果的に果たしてしまったのではないだろうか。また、このような新聞報道をみると、仮に、関東大震災当時にラジオ放送が始まっていたとしても、ラジオも新聞同様に流言や誤報を伝えてしまい、かえって混乱を大きくした可能性もある。関東大震災から100年が過ぎ、マス・メディアだけではなくインターネットやSNSといった超域メディアが普及・浸透している現在、誤った情報を広めることが容易となった。関東大震災の流言と報道についてふりかえり、メディアと情報のチェック機能の重要性について留意し、災害時の情報のあり方や留意点を考えていかなければならないだろう。

  • 廣井 悠, 落合 淳, 木村 春奈
    2024 年22 巻2 号 p. 153-158
    発行日: 2024年
    公開日: 2026/05/21
    ジャーナル フリー

    本稿では,過去の被災映像を高精細化しまた8Kカラー化する試みが,視聴者にどのような影響を与え,またどういった防災対策の実行を促すかについて探る実験および調査を報告するものである.結果として低画質モノクロ映像と8Kカラー映像は視聴者に与える印象も異なり,促す防災対策の質と量も異なることが判明した.特に,低画質モノクロ映像の視聴は8Kカラー映像と比較して恐ろしさという感情をより与えることや,高年層に防災対策を促しうる一方で,8Kカラー映像は多様な防災対策をイメージさせる可能性が示唆された.さらに映像の視聴後に視聴内容を意見交換することで,より防災行動の実行を促すことなども示唆された.

査読原稿
  • 川村 壮, 佐々木 優二, 深田 秀実
    2024 年22 巻2 号 p. 159-170
    発行日: 2024年
    公開日: 2026/05/21
    ジャーナル フリー

    近年、大規模災害発生時にSNS上で“デマ”や“流言”と呼ばれるような不正確な情報(誤情報)が拡散することが問題になっている。本研究では、2018年に発生した北海道胆振東部地震を対象に、旧Twitterのツイートの分析により誤情報の拡散状況を定量的に示すとともに、Webアンケートにより住民の旧Twitterの利用状況を把握し、誤情報の収束に向けて公的機関の訂正情報の発信が効果的であることを明らかにした。次に、誤情報の一般的な特徴から拡散状況をリアルタイムで把握する手法を提案した。さらに、北海道内の自治体へのアンケートおよびヒアリングから、北海道胆振東部地震発生時の誤情報への対応状況を確認し、災害時の誤情報への対応においては自治体の防災担当者の人手や時間の不足が課題となっているとともに、近年に大規模災害を経験している自治体では、こうした状況の改善に向けた対応がとられていることを明らかにした。

  • ―宮城・福島における3つの地震災害を事例として―
    小林 秀行
    2024 年22 巻2 号 p. 171-182
    発行日: 2024年
    公開日: 2026/05/21
    ジャーナル フリー

    本研究は多重被災、ある自然災害による被害からの回復が完了しないままに次の災害の被害を多重に体験することが、被災者にどのような影響を与えるかという点について、とくに「申し訳なさ」「情けなさ」という羞恥感情としての恥に着目し、質問紙調査を通じてその実態を明らかにしたものである。調査は、東日本大震災(2011年)および福島県沖地震(2021年・2022年)という3つの地震を受けた宮城県・福島県のうち、とくに揺れの激しかった19自治体の居住者1,000名を対象として、2022年12月下旬にインターネットを通じて実施した。調査の結果、多重被災を体験した者は597名おり、被害の累積によって生活再建が阻害され、生活の苦しさや疲労感を覚えていくことが明らかとなった。多重被災は、被災者が被害から立ち直ろうとする意欲の減退、換言すれば生活再建に対する意欲を打ち崩し、失意を与えるという点で、物的・経済的な損害以上の被害を多重被災者へと与えるのだといえる。加えて、少数ではあるが「申し訳なさ」「情けなさ」といった恥に関する言及が自由回答において見られてもいた。恥は羞恥感情であり、他者への開示は忌避されやすい感情であることを考えれば、潜在的にはより多数の多重被災者が恥を感じている可能性がある。災害の多発化によってこうした多重被災が増加していく可能性がある今後の社会で、このような被災の影響に対する支援がより重要なものとなっていくものと考えられる。

  • 向井 利明, 牛山 素行
    2024 年22 巻2 号 p. 183-193
    発行日: 2024年
    公開日: 2026/05/21
    ジャーナル フリー

    気象庁は、相次ぐ風水害によって多数の死者や被害が生じた2004年以降、気象に係る防災気象情報の新規提供や運用見直しを繰り返してきた。大雨警報の土砂災害と浸水害の区別、土砂災害警戒情報、大雨等の特別警報、早期注意情報(警報級の可能性)、大雨警報等の危険度分布、顕著な大雨に関する気象情報などがある。その結果、情報の種類が増え運用が複雑になったとして、気象庁と国土交通省は、2022年に学識者及び報道関係者等からなる「防災気象情報に関する検討会」を設置し、情報体系の整理や個別情報の抜本的な見直しなどが検討されている(2023年12月現在)。今後数年のうちに、防災気象情報の体系や名称等が大きく変更になる可能性がある。

    このような背景を踏まえ、本稿では、大雨に係る主な防災気象情報の近年(2004(平成16)年-2023(令和5)年)の変遷や課題を俯瞰できるよう、新規提供や運用見直し等の背景、内容、課題等を、気象庁報道発表、各種検討会報告書、既往研究などからまとめた。その結果、情報改善の方向性としては、①災害との結びつきのより強い情報へ、②時間・空間的により細かく、③予想時間を延ばす、などについての飽くなき追及であることがわかる。一方、様々な課題も見えてきた。本稿が、各方面において、近年の防災気象情報の変遷等を把握する基礎資料となることを願う。

  • 本間 基寬, 牛山 素行
    2024 年22 巻2 号 p. 195-205
    発行日: 2024年
    公開日: 2026/05/21
    ジャーナル フリー

    大雨災害時に広域に避難情報が発出された場合、上階への移動や高層階に留まること等により屋内で身の安全を確保できると判断する居住者は必ずしも立退き避難を必要とするわけではない。しかしながら、実際のところ、どの程度の割合の住民が本当に立退き避難を必要とするのかについては、十分に把握されていない。本研究では、災害リスクのある区域や居住者の建物階数などを考慮し、立退き避難の必要性が相対的に高い人口として「大雨時要避難者数」を全国及び都道府県別に推計した。

    洪水災害、土砂災害のリスクがある区域内の人口は、それぞれ全人口の57%、22%であった。洪水災害のリスクがある区域の人口から「建物階数3階建以上の居住者」を除外することで、その人口は全人口比で57%から42%に減少した。土砂災害警戒区域内人口から「建物階数3階建以上の居住者」を除外することで、その人口は全人口比で22%から17%に減少した。洪水災害、土砂災害のいずれかの災害リスクのある区域内の人口は全人口の69%だったが、「建物階数3階建以上の居住者」を除外することで52%にまで減少した。「大雨時要避難者数」は全人口の半数程度であり、とりわけ大都市圏では全人口の25~40%程度であるという推計結果が得られた。

  • 橋冨 彰吾, 鷺谷 威
    2024 年22 巻2 号 p. 207-218
    発行日: 2024年
    公開日: 2026/05/21
    ジャーナル フリー

    わが国には多くの活断層が存在する。これらの活断層は、阪神・淡路大震災に代表されるように、非常に大きな被害をもたらすことがある。一方、活断層はその活動間隔が長期に及び、その間隔の振れ幅も大きい。そのため、活断層の長期評価には、大きな不確実性が伴う。

    本研究は、不確実性を伴う活断層情報の提供のあり方を検討するため、屏風山断層帯、恵那山-猿投山北断層帯が立地している地域と震度6弱以上の揺れが想定されている岐阜県および愛知県の自治体に居住する人を対象とするWEBアンケート調査を実施した。この調査では、断層の認知度やどのような情報に注目しているか、30年確率と他のリスク情報を示したときの反応などを調べた。

    その結果、1.これらの断層帯の認知度は低いこと、2.啓発用のチラシで注目を集めるために震度予測図が有用であること、3.チラシ上のQRコードにアクセスする意向のある人の比率は年齢層が低くなるほど高いこと、4.具体的な活断層の30年確率の情報を他の危機事象の30年間での遭遇確率を比較対象として住民に示すと、比較対象への危機感も低下する恐れがあること、5.30年確率の利用にあたっては、過去に発生した地震災害における発生直前の30年確率を一緒に示すことが、地震への危機感を高める効果が期待できることが明らかになった。

  • 矢内 真理子
    2024 年22 巻2 号 p. 219-229
    発行日: 2024年
    公開日: 2026/05/21
    ジャーナル フリー

    2011 年 3 月 11 日に東日本大震災が起こり、それに伴い福島第一原子力発電所事故が発生した。本研究の目的はこの原発事故の報道において、全国紙の地方支局に所属する記者がどのような役割を果たしたのかを検討することにある。そこで本研究では福島県の支局記者に焦点を当てその署名記事を手掛かりに分析を行った。

    分析対象は『朝日新聞』の 2011 年 3 月 12 日から 18 日までの紙面である。下記の 5 点の方法で分析を実施した。①福島県の支局記者を特定する②支局記者の署名が東京本社版の記事に何件掲載されたのかを数える③支局記者の署名が地域面(福島県)の記事に何件掲載されたのかを数える④支局記者の署名記事の情報源を特定する⑤支局記者の署名がある写真を地図化する。

    本研究によって次の 3 点が明らかとなった。①福島県の支局記者の署名記事が『朝日新聞』紙面に掲載されることは大変少なかったこと②県外から多くの応援記者が派遣されていたこと、特に写真記事は写真センターからの応援記者により撮影されたものが多く用いられていたこと、③福島県の支局記者は物理的に原発の近くにいながらも原発事故現場の取材活動はほとんどできなかった可能性が高いことである。特に 3 点目が原発事故報道の特殊性であり、構造的な制約であったと指摘できる。本研究は同様の手法で実施した『毎日新聞』に関する研究(矢内真理子 2021a)の結果を

    補強するものである。

  • 高原 耕平, 及川 康
    2024 年22 巻2 号 p. 231-243
    発行日: 2024年
    公開日: 2026/05/21
    ジャーナル フリー

    気候変動・人口推移・今後の地震災害により、これまでの右肩上がりの防災が不可能になる。片田(2020)は、災害は防ぎ切ることが可能だという「災害制御可能感」から、諦観論を前提とした防災思想に転換することが必要だと述べている。本稿はこの立論を前提としつつ、近代型防災と現代型防災の要因を分析することで、災害制御可能感を手放すための手がかりを探す。近代型防災は自然の外力に抵抗し予測する。そこには自然の外部化と能力主義という要因が見出される。現代型防災は、さらに人間主体を外部化する。また、現代型防災における能力主義は主体を行方不明にし、能力の無さがもたらす可能性を覆い隠す。近現代型防災は生命を対象とするが、かえって死と表裏一体の生命を取り逃がす。災害制御可能感から諦観論へシフトするために、従来とは異なる「主体」のあり方を探りあてねばならない。それは守られる対象・目的語としての命ではなく、主語としての生命であり、世界と自己の行為の未確定性を更新する主体である。

活動報告
feedback
Top