2011 年 3 月 11 日に東日本大震災が起こり、それに伴い福島第一原子力発電所事故が発生した。本研究の目的はこの原発事故の報道において、全国紙の地方支局に所属する記者がどのような役割を果たしたのかを検討することにある。そこで本研究では福島県の支局記者に焦点を当てその署名記事を手掛かりに分析を行った。
分析対象は『朝日新聞』の 2011 年 3 月 12 日から 18 日までの紙面である。下記の 5 点の方法で分析を実施した。①福島県の支局記者を特定する②支局記者の署名が東京本社版の記事に何件掲載されたのかを数える③支局記者の署名が地域面(福島県)の記事に何件掲載されたのかを数える④支局記者の署名記事の情報源を特定する⑤支局記者の署名がある写真を地図化する。
本研究によって次の 3 点が明らかとなった。①福島県の支局記者の署名記事が『朝日新聞』紙面に掲載されることは大変少なかったこと②県外から多くの応援記者が派遣されていたこと、特に写真記事は写真センターからの応援記者により撮影されたものが多く用いられていたこと、③福島県の支局記者は物理的に原発の近くにいながらも原発事故現場の取材活動はほとんどできなかった可能性が高いことである。特に 3 点目が原発事故報道の特殊性であり、構造的な制約であったと指摘できる。本研究は同様の手法で実施した『毎日新聞』に関する研究(矢内真理子 2021a)の結果を
補強するものである。
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