災害情報
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7 巻
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特集 災害情報リテラシー
[座談会]
投稿
[論文]
  • 和田 安彦, 平家 靖大, 和田 有朗
    2009 年 7 巻 p. 53-62
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    不浸透域の増加や局所的集中豪雨の増加に伴い、都市域において都市の雨水排除能力を超える雨水流出による内水氾濫が頻発するようになっている。本研究では、住民が持っている都市浸水の関心や認知構造、行政への信頼度を質問紙調査法により明らかにした。都市浸水リスク、被害の軽減のために公共が対策を行うのはもちろんであるが、住民自ら対応する自助促進への規定因を探るため共分散構造分析を用いて実証的に考察した。その結果、都市浸水の知識を高揚させることで、自らの力で水害に備える自覚が高まり、自主的防災行動意志が高くなり自助行動に移るという一連の構成概念があることを示唆した。

  • 臼田 裕一郎, 長坂 俊成, 朴 元浩
    2009 年 7 巻 p. 63-74
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    甚大な災害発生時においては、様々な情報が錯綜したり、必要な情報が届かないことにより、関係する各主体間で状況を共有することができず、行動が遅れたり不安が増大するといった問題が生ずる。本研究では、特に市民を対象とした情報の扱いに焦点を当て、災害時における情報収集・伝達の一つの方法として、ある一つの主体や情報システムがその全てを担うのではなく、複数の情報システムやメディアを連結し、一連の工程を地域の複数主体が協働で運営する社会モデルを提案する。本提案は、(1)被災市民が平時から使い慣れた情報システムを活用した情報収集、(2)情報を整理・発信する役割としての災害情報センターの設置と災害情報コーディネータとしての地元ボランティアの参画、(3)複数の情報伝達メディアを活用したクロスメディア伝達、(4)これらの多種分散システム間を連結する汎用的な情報形式、の4点で構成される。これを神奈川県藤沢市に適用し、実証実験を行った結果、地域に定着している情報システムに投稿された情報への一定の信頼や、地元ボランティアならではの地域の状況に合わせたきめ細かな対応が見られ、その有効性が示された。また、2007年新潟県中越沖地震で市民向けの情報集約・配信を担った柏崎市のコミュニティFM局「FMピッカラ」へのインタビューにより、実際に災害を経験した立場からも提案の有効性及び実現可能性が示唆された。

  • 児玉 真, 本間 基寛, 片田 敏孝, 若田部 純一
    2009 年 7 巻 p. 75-83
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    平成16年に発生した各地での豪雨災害を契機に、土砂災害警戒情報、洪水予報指定河川や水位周知河川の指定の拡充、わかりやすい河川水位情報への名称変更など、多くの災害情報が整備され、充実化が図られてきた。

    本研究では、平成19年台風第9号災害における群馬県の市町村の防災担当者を対象とした調査結果に基づき、市町村の災害対応および住民の災害情報理解といった観点から、市町村の避難誘導や住民の避難行動などの災害対応にみる土砂災害警戒情報や河川水位情報などの災害情報の活用実態および課題を整理した。その結果、土砂災害警戒情報や河川水位情報に基づき避難勧告等を発令すべきとの国の意図に対し、市町村ではそれら情報だけでは発令の判断は難しいと認識しており、これら情報に関する制度を整備した国と、その運用にあたる地方行政との認識の違いなどが明らかとなった。また、住民については、各所から多発される災害情報と市町村から発表される地域の災害情報や避難に関わる情報を、その重要度の区別なく捉えている可能性があり、結果として避難の必要性を伝えるような重要な災害情報までもが共倒れにおわってしまうことが懸念された。以上のような結果をふまえ、市町村における住民の避難誘導に際しては、災害情報のみに基づく一律の判断基準に従うことが地域の実情に適応しないというのであれば、市町村は災害情報を活用した地域独自の発令基準を検討すべきであること、また、躊躇なく発令基準に基づく発令を可能とするためには、それに関する行政と住民との認識の共有化を図るリスク・コミュニケーションが不可欠であることを指摘した。

  • 片田 敏孝, 本間 基寛
    2009 年 7 巻 p. 84-93
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    平成20年3月31日から4月1日に爆弾低気圧によって大きな被害を受けた北海道根室市の住民を対象とした住民アンケート調査を実施し、爆弾低気圧の接近時における住民の危機意識の醸成過程を把握した。その結果、事前の気象情報により住民は爆弾低気圧の接近前に低気圧の動向に注視していたが、被災前日の天気予報では今回の荒天を予想していたにも関わらず、半数以上の住民はこれほどの被害を想起できていなかったことがわかった。低気圧接近前に今回ほどの荒天を想起した住民ほど、暴風対策等の対応行動を行っており、爆弾低気圧の接近過程においても住民が被害の発生を想起できるような災害情報の表現方法を考えることは重要であることが示された。

    気象庁では、発達した低気圧の表現方法として「爆弾低気圧」といった特別な呼称を設けず、「急速に発達する低気圧」や「猛烈な風を伴う低気圧」という表現を用いるとしている。しかしながら、「急速に発達する低気圧」という表現は住民の危機意識を高めるのに一定の効果はあったものの、暴風や降雪に関する具体的な説明がなければ被害の発生を想起するには至らないことが示された。

    住民の危機意識を効果的に高め、対応行動に繋がる災害情報とするためには、①低気圧の発達に応じて「爆弾低気圧」のような特別な呼称を用いること、②大雪や暴風等の具体的な現象について記述すること、③低気圧の発達や気象警報をレベル分けすることの有用性を指摘した。

  • 片田 敏孝, 村澤 直樹
    2009 年 7 巻 p. 94-103
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    近年の我が国の津波防災を概観すると、大きな地震の揺れを伴う近地津波を念頭においた対策が一般的であり、揺れを伴わず広い範囲に津波が襲来する遠地津波を想定した津波対策は十分とは言えないのが現状である。この状況の中、2006年11月の千島列島の地震に伴い発表された津波警報に対する対応をみると、遠地津波であるが故の課題が散見された。行政対応をみると、津波警報未経験地域において事前の津波防災対策が不十分であったことや、避難勧告指示の発令基準の規定などの事前の津波防災対策の有無が住民への避難勧告指示の発令タイミングに影響し、その発令状況が住民の情報取得や避難開始タイミングに大きな影響を及ぼすことがわかった。また住民対応では、住民の避難率が津波常襲地域で低く津波警報未経験地域で高かったこと、住民の避難率が低調だった要因が地震の揺れの大きさや津波情報の空振り経験の有無にあること、さらに一度の津波情報の空振りだけで避難率が著しく低下することがわかった。本稿では、これらの課題から、遠地津波の特徴を踏まえて、これまで津波対応が不十分であった地域の津波防災対策を推進すること、行政における事前の津波防災対策を推進すること、さらに揺れを伴わないが故に近地津波よりもさらに高度な住民の津波情報リテラシーの向上が必要不可欠であることを指摘した。

  • 太田 好乃, 牛山 素行, 吉田 亜里紗
    2009 年 7 巻 p. 104-113
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    過去に津波災害を経験している地域を対象に調査票調査を行い,津波災害と関係が深い空間情報の一つである地形(自宅の標高)に対する認知と,避難行動意向など津波災害リスクに対する認知の関係について検討した.調査は岩手県陸前高田市今泉地区を対象に行われ,521件の回答を得た.自宅標高を全く認知していない人(無回答)は46.3%にのぼり,実際の標高の範囲内を回答した人は16.5%にとどまった.また,13.2%は実際より高い標高を回答し,24.0%は低い標高を回答した.標高の低いところでは実際より低く認知され,標高の高いところでは無回答が多い傾向がある.自宅標高を正しく認知している人や,実際よりも低く認知している人は,実際よりも高く認知あるいは自宅標高を認知していない人に比べ,津波災害に対する危険度認知が高い傾向があった.また,これらの回答者は津波の際の避難意向も積極的であった.自宅標高の理解と,津波災害に対する防災行動などの間には何らかの関係があると考えられる.標高の理解を支援するような情報整備が重要である.

  • ―自然と社会の交絡―
    矢守 克也, 牛山 素行
    2009 年 7 巻 p. 114-123
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    本論文は、2008年7月28日に起きた都賀川災害に見られる諸課題を、自然と社会の交絡という観点からまとめたものである。近年、親水施設など河川区域内にいた人が、急な増水に巻き込まれる事例が増加している。こうした事例が、少なくとも当事者に「思わぬ場所で思わぬ時に起こった」と認識されている事実は、「自然」(河川の増水や洪水)と「社会」(まちにおける人びとの暮らし)とを空間的、時間的に完全に分離しようとする防災施策こそが、逆説的に、被害発生を助長している一面があることを示している。すなわち、空間的な分離(たとえば堤防による)、または、時間的な分離(たとえば災害情報による)を図ろうとしてきた従来の防災対策を見直し、むしろ、「自然」と「社会」とは本質的に交絡・融合していて分離困難であることを人びとに認識させるような対策が必要である。本論文では、都賀川(神戸市灘区)が急に増水し親水施設にいたと見られる5人が亡くなった事例をとりあげる。現地調査と関係者からの聞き取り調査によって明らかにした地域事情―阪神大水害と河川改修の経緯、住民団体「都賀川を守ろう会」の活動、阪神・淡路大震災の影響―を踏まえた上で、本事例を、「社会」と「自然」の交絡・融合の観点から考察すべきこと、および、地域社会における類似事例の体験共有、および、葛藤を伴ったリスク・コミュニケーションが重要であることを指摘した。

  • 地引 泰人
    2009 年 7 巻 p. 124-133
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/04/01
    ジャーナル フリー

    現在、巨大自然災害や、自然災害・慢性的な飢餓・紛争等が結びついた複合災害(Complex Emergency)への国際緊急人道支援のために、国際連合(国連)を中心としたクラスター・アプローチと呼ばれる情報共有制度が用いられている。国際緊急人道支援では多種多様な支援主体が関与するため、情報共有が必要不可欠なためだ。この情報共有制度は急にできあがったわけではなく、少しずつ変化してきたものである。歴史的にも国際緊急人道支援の情報共有の重要性が広範に認識されているにもかかわらず、本邦では当該分野の研究蓄積が見当たらない。そこで、自然災害や紛争等の人為災害に対する国連を軸とした国際緊急人道支援の情報共有制度に関わる既存の研究蓄積の整理を通じて、制度がどのような歴史的変遷をたどってきたのかを明らかにすることを本稿の目的とする。

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