安全教育学研究
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10 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 原 洋子, 渡邉 正樹
    2010 年10 巻1 号 p. 3-15
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2025/09/16
    ジャーナル フリー
    近年,学校安全教育の領域で,危険予測能力・危険回避能力が重要な概念の一つとなってきている。本研究の目的は,小学生の危険予測能力・危険回避能力の評価法を開発することである。
    この研究は3つの調査から構成される。調査①では,3つの小学校の4,5,6年生(396名)を対象とした自己記入式の質問紙調査を実施した。この調査票には児童たちにとって危険な状況を示す8つのイラストを,危険予測能力・危険回避能力を評価するために用いた。これらのイラストを見て,児童たちは予想される危険と危険の回避法を回答した。その後,児童の回答は調査者が得点化した。調査票には安全意識と行動の質問を含んだ。能力の得点と他の質問との相関を調べ,基準関連妥当性を検証した。 調査②では小学校4年生(24名)を対象に安全教育プログラムを実施した。能力項目を含む事前テストと事後テストを実施して,内容的妥当性を検証した。調査③では小学校5年生(64名)を対象に再テスト信頼性を検証した。
    以上の結果から,危険予測能力・危険回避能力の評価法の妥当性と信頼性が認められた。加えて,この評価法の応用と課題について議論した。
  • 佐藤 健, 佐藤 浩樹, 増田 聡, 源栄 正人
    2010 年10 巻1 号 p. 17-29
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2025/09/16
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,防災教育を推進する立場の学校教員のニーズを明らかにするとともに,その学校別,経験別,地域別による特性を明らかにすることである。具体的な調査対象者は,平成21年度に実施された宮城県防災教育指導者養成研修会の受講者である。結果の要点を以下に示す。
    1)防災教育を推進するにあたり,「校長,教頭,教務主任等の防災教育に対する理解と協力」が最重要視され,「重要性が非常に高い」と「重要性はやや高い」を合わせた回答率が90%を超えた。
    2)防災教育支援教材のニーズについては「防災教育に関する情報を共有化するためのホームページ」が,防災教育支援人材のニーズについては「学校周辺の地域性を考慮した講義ができるゲストティーチャー」がそれぞれ最も高く,この2項目については「重要性が非常に高い」と「重要性はやや高い」を合わせた回答率はいずれも80%を超えた。
    3)防災教育プログラムについては,「重要性が非常に高い」と「重要性はやや高い」を合わせた回答率が80%を超えたニーズは,「学校周辺の地域性が考慮された防災教育プログラム」と,「災害種別ごと(地震,津波,洪水など)の防災教育プログラム」であった。
    以上のことから,学校における防災教育を推進していくためには,地域性が考慮された防災教育プログラムと,その支援システムとしての地域の防災情報共有プラットフォームの必要性が示唆された。大学や企業等の新しい知見や確かな理論に裏付けられた豊かな教育実践を行いたいとする教育者側のニーズに応えていくためには,教育委員会や学校だけでは限界があることから,学校現場との繋ぎ手機能を有する産学官連携に基づいた防災教育支援のための地域のコンソーシアムを構築することが一つの有効な解決策になると考えられた。
  • −教職員の危機管理意識と実態調査の分析から−
    山本 俊美, 田嶋 八千代
    2010 年10 巻1 号 p. 31-45
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2025/09/16
    ジャーナル フリー
    本研究は,学校危機管理力の向上のために教職員の危機管理意識と学校危機管理の実態を明らかにし,どのような研修や情報提供が学校安全を推進するために有効なのかを明確にすることを目的としている。そのため,O県の小・中学校教職員(校長・教頭・教諭・養護教諭・学校事務職員)2572名に対して質問紙調査を行い、1879名より回答を得た。
    その結果,次のことが明らかになった。
    1)危機管理意識のうち,危機管理システム構築の重要性は教職員の98.5%と高く認識していたが,行動レベルにつながる危機管理意識は83.6%と低かった。
    2)管理職の危機管理意識は高かったが,学校事務職員の危機管理意識は他の教職員に比べて低かった。
    3)全体計画や組織体制づくりに関わるもの及び日常的にできる対策は83.8%の学校で実施されていた。しかし重大な事件事故を想定した対策については41.5%しか実践されていなかった。
    4)危機管理研修を重要なものと認識している教職員は99.9%と非常に多いが,それが役に立つと考えている教職員数は91.6%と減少した。研修の時間が確保されている学校の割合は63.9%とさらに低下した。
    5)学校事務職員の21.5%しか危機管理に関する研修を受けていないという問題点が明らかになった。しかもそのことは管理職の51.8%しか認識していなかった。
    以上のことから,今後,効果的な研修や訓練を学校事務職員を含めた教職員に実施することで教職員全体の危機管理意識を高め,学校危機管理力の向上を図ることができる可能性が示された。
  • 木宮 敬信, 堀 清和, 辰本 頼弘, 村上 佳司, 西牧 真里, 長谷川 ちゆ子, 中薗 伸二, 阪田 真己子, 藤田 大輔
    2010 年10 巻1 号 p. 47-55
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2025/09/16
    ジャーナル フリー
    本稿は、小学生の安全の実態を明らかにすることを目的としている。そこで、安全意識の調査を目的として静岡県の公立小学校において安全意識に関するアンケート調査を行い、全学年から117名の回答を得た。調査には自由記述式と選択肢式の2種類のアンケートを用いた。調査の結果、1)小学生では、交通安全に対する意識は高いが、防犯についての意識はあまり高くないこと、2)学年により、安全知識、安全意識、児童を取り巻く潜在危険は異なることが判明した。この結果から、防犯についての意識を高めることおよび発達段階に応じた安全教育が必要であることが示唆された。尚、本研究が、RISTEX「犯罪からの子どもの安全」の研究助成を受けて実施されたことを明記しておく。
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