本研究は,学校危機管理力の向上のために教職員の危機管理意識と学校危機管理の実態を明らかにし,どのような研修や情報提供が学校安全を推進するために有効なのかを明確にすることを目的としている。そのため,O県の小・中学校教職員(校長・教頭・教諭・養護教諭・学校事務職員)2572名に対して質問紙調査を行い、1879名より回答を得た。
その結果,次のことが明らかになった。
1)危機管理意識のうち,危機管理システム構築の重要性は教職員の98.5%と高く認識していたが,行動レベルにつながる危機管理意識は83.6%と低かった。
2)管理職の危機管理意識は高かったが,学校事務職員の危機管理意識は他の教職員に比べて低かった。
3)全体計画や組織体制づくりに関わるもの及び日常的にできる対策は83.8%の学校で実施されていた。しかし重大な事件事故を想定した対策については41.5%しか実践されていなかった。
4)危機管理研修を重要なものと認識している教職員は99.9%と非常に多いが,それが役に立つと考えている教職員数は91.6%と減少した。研修の時間が確保されている学校の割合は63.9%とさらに低下した。
5)学校事務職員の21.5%しか危機管理に関する研修を受けていないという問題点が明らかになった。しかもそのことは管理職の51.8%しか認識していなかった。
以上のことから,今後,効果的な研修や訓練を学校事務職員を含めた教職員に実施することで教職員全体の危機管理意識を高め,学校危機管理力の向上を図ることができる可能性が示された。
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