本研究では、中学校技術家庭科及び高等学校家庭科における、防災を含む家庭生活の安全に関する学習内容の変遷を明らかにした。
戦後から現在までに施行された、両校種の家庭科の学習指導要領、学習指導要領解説、及び指導書を研究対象として、次の研究方法を用いて分析を行った。①学校安全の三領域を視野に入れた分類を設定した。②分類に基づき、安全について言及した記述箇所を抽出し、③それらを防災に関する学習内容、事件・事故に関する学習内容、交通事故に関する学習内容に区分した上で、時系列的変化を明らかにした。
分析によって、特に防災に関する学習内容の変化は、中学校の場合において顕著に現れた。昭和22年度中学校学習指導要領は、様々な生活の側面から、防災について学ぶことができるよう編集されていた。しかし、昭和26年度の改訂で大幅に縮小されると共に、次の昭和32年度の改訂以降では平成20年度中学校学習指導要領解説が刊行されるまで、扱われなくなった。他方で、昭和32年度と昭和44年度の改訂では、教育政策や家庭生活を取り巻く状況が反映された事件・事故に関する学習内容が設けられ、これらの内容は以降の学習指導要領で定着した。平成20年度中学校学習指導要領解説では、住宅内で発生する事故に関する学習の中に防災が扱われていた。
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