本研究の目的は幼稚園における不審者侵入対策を評価し,防犯システムの課題を明らかにすることである。2008年に全国の幼稚園に対する郵送式質問紙調査を実施し,全国の1248園から回答を得た。主な結果は次のとおりである。
1)80%以上の回答者が,教職員に気づかれずに幼稚園敷地内に不審者が侵入する可能性があると回答した。
2)33.0%の回答者は幼稚園に監視システムのための設備をまったく設置していないと回答し,彼らの多くはそれらの設置を望んでいた。
3)75.4%の幼稚園は他教職員への緊急通報手段を複数用意していたが,52.8%は迅速に警察へ通報できる設備を持っていなかった。
4)ロックダウンできる避難場所を持っている幼稚園は10.7%であった。46.5%の回答者は園児を避難させる確信がないと答えた。
5)この研究では,回答者の安全確保の意識と不審者への準備との間に有意な正の相関があることが明らかになった。
以上のことから,多くの幼稚園においては不審者侵入に対する計画が不十分であり,安全システムの改善によって幼稚園をより安全な場所にすることができる可能性が示された。
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