安全教育学研究
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9 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 渡邉 正樹, 原本 憲子, 宮本 和彦, 岡田 亨
    2009 年9 巻1 号 p. 3-13
    発行日: 2009年
    公開日: 2025/10/10
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は幼稚園における不審者侵入対策を評価し,防犯システムの課題を明らかにすることである。2008年に全国の幼稚園に対する郵送式質問紙調査を実施し,全国の1248園から回答を得た。主な結果は次のとおりである。
    1)80%以上の回答者が,教職員に気づかれずに幼稚園敷地内に不審者が侵入する可能性があると回答した。
    2)33.0%の回答者は幼稚園に監視システムのための設備をまったく設置していないと回答し,彼らの多くはそれらの設置を望んでいた。
    3)75.4%の幼稚園は他教職員への緊急通報手段を複数用意していたが,52.8%は迅速に警察へ通報できる設備を持っていなかった。
    4)ロックダウンできる避難場所を持っている幼稚園は10.7%であった。46.5%の回答者は園児を避難させる確信がないと答えた。
    5)この研究では,回答者の安全確保の意識と不審者への準備との間に有意な正の相関があることが明らかになった。
    以上のことから,多くの幼稚園においては不審者侵入に対する計画が不十分であり,安全システムの改善によって幼稚園をより安全な場所にすることができる可能性が示された。
  • ─情動への対処の学習が生徒のストレス感と自己効力感に及ぼす効果─
    小川 和久
    2009 年9 巻1 号 p. 15-29
    発行日: 2009年
    公開日: 2025/10/10
    ジャーナル フリー
    もし、生徒がネガティブ感情を上手く調節することなく道路交通に参加するならば、情動は、リスクテイキング行動や不注意行動を誘発する内的リスク要因となりうる。情動やストレスへの対処能力を高め、個人の資源を豊かにするライフスキル教育は、成長過程にある生徒の教育ニーズに合致する。本研究では、青少年の対処法の力を育む教育プログラムを開発し、その教育効果を検討することを目的とする。87名の高校生(15〜18歳)が教育プログラムに参加した。プログラムは、認知的または行動的な対処法を様々に学習するものである。たとえば、遅刻しそうで焦る、体調不良のときにやるべきことをたくさん抱える、友人との関係が気まずくなるなど、ストレス状況にあるときに、どのようにすれば感情をうまく調節できるかが話し合われる。教育参加後の事後テストで、生徒のストレス感が低下し、自己効力感が高まることが示された。この効果に関して、学年間(高校1年生と3年生)による違いは見出されなかった。しかし、もともと自己効力感の低い生徒は、自己効力感の高い生徒と比較して、ストレス感の低下をさほど大きく知覚していないことも分かった。分析結果は、学校現場での安全教育とライフスキル教育の普及という観点から、教育プログラムの改善に役立てるものとする。
  • −仙台市長町地域を例に−
    佐藤 健, 村山 良之, 駒沢 健二, 當摩 聡子, 増田 聡, 柴山 明寛, 源栄 正人
    2009 年9 巻1 号 p. 31-48
    発行日: 2009年
    公開日: 2025/10/10
    ジャーナル フリー
    本論は,災害安全教育に対するニーズが多様化し,その普及と発展に対する社会からの期待が高まる中,災害科学の研究者の立場から,自然と社会の地域学習に基づいた小学生のための災害安全教育モデルを提案し,その実践事例を通して,教育モデルとしてのコンセプトの有効性と発展の可能性について考察したものである。
    本論で提案する教育モデルを構成する要素は,地域の教育コミュニティとしての「生涯学習」のフレームワーク,情報基盤としての「地域の防災情報共有プラットフォーム」,教育基本プログラムとしての「防災まち探検ワークショップ」,地域の自然災害に対する脆弱性の改善や地域防災力の高度化への波及効果を生むための「地域の防災モニタリング機能」である。
    仙台市長町地域に適用した実践事例を中心とした分析結果から,提案モデルが参加児童の安全意識の啓発や地域学習の探究心を生むことに有効であることに加えて,獲得した知識を地域のために役立たせる社会的自己実現の教育機会になることも示された。
    今後の課題として,地域の防災情報共有プラットフォームの児童の発達段階に応じた有効な活用方法を含めた教育モデルの洗練のために,災害科学の研究者と安全教育の研究者や安全教育現場の教員とのコラボレーションの必要性を強く提起したい。
  • 堀 清和, 木宮 敬信, 辰本 頼弘, 村上 佳司, 西牧 真里, 長谷川 ちゆ子, 中薗 伸二, 阪田 真己子, 藤田 大輔
    2009 年9 巻1 号 p. 49-56
    発行日: 2009年
    公開日: 2025/10/10
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、従来の安全教育における課題と方法論を整理し、子どもの防犯教育を目的とするeラーニング教材の理論的基盤を整備することである。そこで、従来の安全教育における成果と課題およびeラーニング教材の特性を先行研究から概観し、その理論化を試みた。先行研究を検討した結果、防犯を目的とする安全教育の課題として、1)子ども・地域・学校の特性および社会状況の変化に柔軟に対応できる教育方法、2)教育内容の整理、3)子ども・地域・学校を取り巻く環境の評価とフィードバックが必要であることが導き出された。そして、eラーニング教材が、従来の安全教育における様々な課題を解決する一つの有効な手段となり得ることが示唆された。
  • 五十嵐 仁, 松本 健治
    2009 年9 巻1 号 p. 57-67
    発行日: 2009年
    公開日: 2025/10/10
    ジャーナル フリー
    「子ども110番の家」は、地域に根ざした安全ボランティア活動の一つとして、子どもの安全を守る効果や、周辺環境の改善が期待されている。活動の浸透のためには、実態の把握や、関係機関との連携が求められる。本研究は、活動者の意識や、連携における課題を明らかにし、問題となる要因を考察することを目的として行った。
    活動者の意識を解析した結果、「連携・自主活動状況」として設けた項目からは、活動開始時の連携と、連携や自主活動全体に関する意識、の2要因が得られた。「住環境・周辺環境」として設けた項目からは、子どもの駆け込みやすさ、ステッカー全般、周辺危険状況、住環境整備、地域安全環境、の5要因が得られた。
    要因の相互関係からは、「子ども110番の家」活動の充実が、地域安全に繋がることが示された。特に、活動開始時の連携が、その後の活動意欲や連携の成否に影響を与えている。また、活動者の属性と各要因の関係からは、より活動に適した属性があることが判明した。
    活動者に「子ども110番の家」について意見を述べてもらったところ、多くの活動者が現在の活動内容に負担は無いと答え、機能拡充の余地が見られた。そして、関係機関からの安全情報の通知を、定期的に行なうことが求められている。
  • 高島 二郎
    2009 年9 巻1 号 p. 69-77
    発行日: 2009年
    公開日: 2025/10/10
    ジャーナル フリー
    本研究は、発育に伴う身体バランスの変化を、身長に対する下肢長の年間相対発育係数からもとめ、その係数と年間の負傷部位との関係を視認的に検討することを目的としている。身長および下肢長のデータは文部科学省の学校保健統計調査を参照した。なお下肢長については身長−座高とした。負傷部位のデータは独立行政法人日本スポーツ振興センターからの基本統計から整理した。
    その結果、下肢の発育が著しいと思われる時期が男子10歳、女子9歳にみられ、上肢の負傷割合の変化がこれと類似していることが認められた。座高の発育記録は学校安全、学校体育館に活用できることを示唆している。
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