道路交通騒音の評価を行うためには、その基礎データとして自動車走行騒音の正確な音響パワーレベルが必要である。これに関する測定法としては、ISO 362やJIS D 1024などに従ったピーク法が一般に適用されている。この測定法では、自動車が測定点近傍を通過する際に観測される騒音レベルの瞬時的なピーク値からパワーレベルを算出するため、特に大型車の場合には大きなばらつきが生じることがある。本研究では、このばらつきの問題を検討するため、大型車の定常走行騒音に関する試験をテストコースにおいて実施した。その結果、特にラグタイヤを装着した大型車の場合、騒音レベルのピーク値は走行のたびに大きく変化した。この現象はラグタイヤから発生されるピッチノイズによって生じる干渉によるものと推定した。そこで、この点を詳細に検討するため一定の速度で移動するコヒーレントな二つの点音源を想定して数値計算を行った。その結果、ピークレベルは二つの音源の間の位相差によって著しく変化することが分かった。また、本研究では自動車走行騒音のパワーレベルの分析法としてピーク法以外に2乗積分法についても検討しており、2乗積分法を用いることによってピーク法よりも安定した結果が得られることが分かった。