残響時間の測定方法はISO 3382に規定されており,音場のインパルス応答から求められるが,その際,広い周波数帯域で低雑音レベルであることが要求される。従来のインパルス応答測定信号を用いた場合,環境雑音や,被測定系の周波数特性の影響で,帯域ごとの雑音レベルは大きく異なり,要求雑音レベルの実現のために時間的に非効率な測定が必要であった。これに対し本報告では,インパルス応答測定信号として,測定結果のSN比を帯域ごとに制御できる信号を用いた測定方法を提案する。この方法は,全対象帯域において要求雑音レベルの上限値を持つ測定結果を行うことで,残響時間測定品質を保証し,測定時間の短縮が図れることを示した。
修正積分則を用いた陽的時間領域有限要素法(TD-FEM)による効率的な室内音場解析手法の構築のため,長方形要素使用時に分散誤差低減に効果的な要素行列の数値積分点を明らかにした。まず,自由空間中の平面波伝搬を考慮した2次元分散誤差解析を通して,長方形要素使用時に同誤差低減に有効な2種の積分点と安定条件を導出した。導出した積分点は平面波の伝搬方向角に関するパラメータを持ち,複雑な音場を構成する室内音場では,同パラメータの設定方法は不明なため,数値実験により明らかにした。導出した積分点を用いた陽的TD-FEMは,空間4次・時間2次精度の陽的TD-FEMに比べ高精度な解析が可能であることを示した。
グラスウールなどの多孔質材料内伝搬音において,粘性と熱伝導による減衰の存在は,古くから知られている。しかし,これら各々の減衰が,具体的にどのような機能を果たすのか,明確にされていない。これらが解明されれば,多孔質材料内伝搬音の,数ある予測モデルの取捨選択,あるいは,より優れた予測モデルの構築につながると考えられる。そこで,本稿では,粘性と熱伝導による減衰の理論的背景を整理し,幾つかの予測モデルを取り上げ,各々の減衰について調査する。