近年,海の中の騒音問題が表面化してきている。いわゆる,海中の“音汚染”問題である。“音汚染”は,これまで海中に多く存在しなかった船舶の航行音などの人工音によるものである。人新世とされる現代では,耳を塞げない海洋生物の生態への影響が深刻化していると予測されており,その実態把握が必要である。これまで,特定の海洋生物に着目した研究が多く行われてきているが,Soundscape計測による,生態系全体の音環境を介した“音汚染”の定量化に期待がある。本総説では,海中の音源や,海洋生物の音との関わりを述べ,海中のSoundscape研究の現状と課題,これからの期待されるアプローチについて共有する。
居室の音環境を評価するためには,居室の標準的な平均吸音率が必要となる。この平均吸音率の取得には多数の居室で測定する必要があるが,居住者のプライバシーの観点から測定は容易ではない。そこで本報では,居室の標準的な平均吸音率の取得を目的に,居住者が行える平均吸音率の取得に向けた測定方法について述べる。音源は,居住者が簡易に発音可能な拍手音とした。リビング・ダイニングルームを用途とする居室6室を対象に測定した平均吸音率は,拍手音で残響時間が評価可能な周波数範囲であるオクターブバンド中心周波数500Hzから4kHzにおいて,1名在室時で算術平均値0.20,空室時で算術平均値0.17を得た。