手話学研究
Online ISSN : 2187-218X
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ISSN-L : 1884-3204
33 巻, 1 号
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論文・査読
  • 生成的システムズ理論に依拠して
    唐澤 美加
    原稿種別: 論文・査読
    2024 年33 巻1 号 p. 1-17
    発行日: 2024/12/12
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル フリー

    本論は、手話を用いてろう者の問題解決を支援する相談員が、ろう者と聴者の間で生じる対人関係上の問題を、生成的システムズ理論を基に行った支援過程で、特に視線の活用が問題解決につながったと考えられる支援事例を取り上げ、視線の支援技術としての有用性について考察することを目的としている。ろう者にとって「視線」は、パラ言語情報や非言語情報の他に、斉藤(2016)が述べているように明確な言語情報としても分類が可能である。そのような文法論的な捉え方にとどまらず、支援過程では、相談員およびろう者の視線が、語用論的に考察される必要がある。しかし、それを実際の支援事例で考察した研究はない。ろう者と聴者のコミュニケーション過程では、複数の言語が伝達され、その処理は複雑である。しかしその複雑な過程で、ろう者と聴者の間の問題は構成されるため、そこで生じた問題の解決には、複雑な情報処理過程を理論化し、変化を起こす介入技術の開発が必要である。そこで、ろう者と聴者の間の問題がコミュニケーション過程で作られる枠組みは、生成的システムズ理論(大下 2008)を用いて説明する。ろう者と聴者のコミュニケーション過程を考察するうえで、両者のメッセージは、言語行為のレベルで収集されたデータを扱う。このデータの分類には、田中・中園(2010)の言語の3つの分類(言語情報・パラ言語情報・非言語情報)を用いる。この2つの枠組みをもとに、ろう者と聴者の間の問題生成過程を、相互に意味構成できる言語情報が減少し、非言語情報への意味構成に限定される過程として説明する。そしてその変容は、双方にとっての言語情報を増大させることと定義される。その際に相談員が使用する手話の選択は、循環的質問法(Tomm 1985)で類型化される。特に、ろう者の訴えが解消される過程の逐語記録を用い、その過程で選択した相談員の技法を類型化して示すとともに、そこでの相談員の視線の活用法を、3つの言語情報の区分を示しつつ、ろう者の問題解決行為の浮上について考察する。

総説・依頼
  • Lost in Translation ③
    佐野 正信
    原稿種別: 総説・依頼
    2024 年33 巻1 号 p. 18-30
    発行日: 2024/12/12
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル フリー

    我が国において「奇跡の人」と言えば、通常ヘレン・ケラーを指す。これはウィリアム・ギブソンの戯曲とその映画版の邦題『奇跡の人』がヘレンを指すと見なされ、それが、そのままヘレンの代名詞として定着したためと思われる。しかし、『奇跡の人』の原題The Miracle Worker は、ヘレンではなくアン・サリヴァンを指すことが日本人にも次第に明らかになってきた。このため、近年、誰を「奇跡の人」と呼ぶべきかについて見解の相違が生じている。ヘレンが「奇跡の人」であると考える日本人は依然として多いが、本国アメリカでもヘレンは「奇跡の人」と呼ばれているのだろうか。そもそも「奇跡の人」という日本語に対応する英語の言い回しは存在するのだろうか。本論では日英比較の観点から「奇跡の人」に相当する英語の存在を探ることで「奇跡の人」をめぐる問題点を整理してみたい。

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