学校メンタルヘルス
Online ISSN : 2433-1937
Print ISSN : 1344-5944
11 巻
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 藤井 義久
    原稿種別: 本文
    2009 年 11 巻 p. 9-22
    発行日: 2009/03/01
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,犯罪不安と防犯意識の視点から,犯罪不安社会に生きる高校生の心理状態について検討することであった。調査対象者は,高等学校5校の生徒806名(男子416名,女子390名)であった。まず,項目分析及び因子分析によって,「不審者に対する不安」,「外出に対する不安」,「1人になることに対する不安」という3つの下位尺度,計25項目から成る「高校生版犯罪不安尺度」を開発し,本尺度には一定の信頼性,妥当性のあることを確認した。そして,その尺度を用いて,犯罪不安水準は一般に女子の方が高いこと,犯罪不安は学年が上がるにつれて男子は徐々に下がり続けるのに対し女子は逆に徐々に上昇するといったように男女間で発達的パターンに違いの見られることなどを明らかにした。また,数量化I類の結果,特に,日々の親の言動が高校生の犯罪不安水準と密接に関連していることがわかった。次に,「犯罪不安」と同様の手続きにより,「外出時における防犯意識」,「不審者に対する警戒意識」,「家庭における防犯意識」,「危険回避行動」,「自己防衛意識」という5つの下位尺度,計22項目から成る「高校生版防犯意識尺度」を開発した。そして,その尺度を用いて,犯罪不安と同様に,防犯意識も一般に女子の方が高いこと,防犯意識においては学年差は見られないことなどについて明らかにした。最後に,犯罪不安と防犯意識との関連性について検討したところ,両者は密接に関連していて,防犯教育等において犯罪不安をある程度高める指導を行うことが防犯意識向上につながることが示唆された。
  • 尼崎 光洋, 清水 安夫
    原稿種別: 本文
    2009 年 11 巻 p. 23-31
    発行日: 2009/03/01
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,高校野球部員を対象とした集団効力感尺度を作成し,集団効力感に影響を与えると考えられる集団凝集性と部活動内で経験するストレッサーとの関連性を検討することである。調査対象者は,東京都内の高校野球部員224名であり,質問紙を用いた集合調査法にて実施した。調査内容は,Magyar et al.(2004)が作成した集団効力感を測定するCollective Efficacy Scaleを邦訳した高校野球部員版集団効力感尺度(Collective Efficacy Scale for Japanese High School Basebal Players:CES-JHSBP),集団凝集性測定尺度短縮版(芹澤・清水,2005a),高校運動部員用ストレッサー尺度短縮版(芹澤・清水,2005b)を用いた。尺度開発のために,探索的因子分析,検証的因子分析を実施した。また,抽出された各因子に対して,信頼性係数(Cronbach's α)を算出した。さらに,CES-JHSBPと各尺度の関連性を検討するために重回帰分析を行った。本研究の結果から,信頼性及び妥当性を兼ね備えたCES-JHSBP(3因子10項目)が開発された。また,集団凝集性を高めることで,集団効力感を高めることにつながることが示された。さらに,部活動内でのストレッサーを多く経験することが,集団効力感を高めることにつながる可能性が示された。一方で,部活動内での指導者に対するストレッサーは,集団効力感を低下させることにつながる可能性が示された。今後,顧問教師の指導力の質的向上を果たすための介入プログラム作りに向けて,集団効力感の観点から検討を重ねていくことが必要であると考える。
  • 塩澤 聖子
    原稿種別: 本文
    2009 年 11 巻 p. 33-42
    発行日: 2009/03/01
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,大学生用のソーシャルサポート尺度を作成するとともに,ソーシャルサポートと精神的健康との関連について検討した。情報的サポートと情緒的サポートの2つのサポートを設定し,「学内同級生」「先輩」「大学教員」「大学職員」「両親」「学外友人」の6つのサポート提供者からのサポートに対して回答を求めた。加えて,精神的健康の測度として,RadloffのCES-Dの日本語版,および山本・松井・山成の自尊感情尺度を用いた。本研究では,2001年4月に実施した調査に回答した157名(回収率95.1%)を分析の対象とした。ソーシャルサポートは,因子分析によって得られた「情報的サポート」「情緒的サポート」の2因子によって測定された。6つのサポート提供者のうち,学内同級生,学外友人,両親の3者が他のサポート提供者よりも情報的サポート,情緒的サポートの得点が共に高かった。また,ソーシャルサポート尺度には精神的健康状態との間に有意な関連がみられ,抑うつ傾向に対しては,同級生,大学教員,大学職員からの情報的・情緒的サポートが必要とされていることが示唆された。この結果は大学における教育的サービス,あるいは教育相談といった,実際の援助サービスにも適用できると考えられる。また,自尊感情は,学外友人からの情報的サポートと有意な正の相関がある一方,情緒的サポートでは,すべての提供者からのサポートが多いほど,自尊感情が高かった。この結果は従来のソーシャルサポートに関する知見を支持するものであり,信頼性と妥当性を備えたストレッサー尺度が構成できたと考える。
  • 小貫 麻美, 清水 安夫
    原稿種別: 本文
    2009 年 11 巻 p. 43-54
    発行日: 2009/03/01
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,小学生版ストレス認知的スキーマ尺度の開発を行い,ストレス認知的スキーマと個人的属性の検討及びストレッサーとの関係性の検討を行うことであった。小学校4年生-6年生の262名(男子119名,女子143名,平均年齢10.83歳,SD=0.79)を対象に,基本的属性,ストレス認知的スキーマ項目,ストレッサー尺度で構成された質問紙調査を行った。調査時期は2005年2月26日から3月14日であった。探索的因子分析の結果,ストレス認知的スキーマにおいて2因子(自己規範性・対人規範性)が抽出された。また,各因子の信頼性係数(Cronbach's α)の算出を行った結果,信頼性係数はそれぞれ0.751,0.833を示し,本尺度の信頼性が認められた。さらに,検証的因子分析を行った結果,本尺度の適合度は良好であったため,本尺度の構成概念妥当性が確認された(GFI=0.915,AGFI=0.886,CFI=0.905,RMSEA=0.062)。作成されたストレス認知的スキーマの各下位因子に対して,性差,学年差及び進学塾への通塾差について,t検定及び一元配置分散分析にて比較検討を行った。その結果,男子よりも女子の方が「対人規範性」が有意に高い結果が得られた。また,ストレス認知的スキーマとストレッサーとの関係性について2つの仮説モデルを想定し,重回帰分析及び共分散構造分析にて検討を行った。その結果,ストレス認知的スキーマの2因子がストレッサーの規定要因となる「ストレス認知的スキーマーストレッサーモデル」が示された。これらの結果より,ストレス認知的スキーマ尺度の信頼性及び妥当性が統計的に確かめられた。また,小学生のストレス認知的スキーマの構造は,高校生の構造よりも単純な構造を示した。これらの結果を総合すると,ストレス認知的スキーマは,学校・社会・家庭などでの社会生活を送る上で,葛藤や妥協などの対人関係での様々な経験を通して発達していくものと考えられる。そのため,対人関係を意図したストレスマネジメント教育やソーシャルスキル・トレーニングの実施は,小学生のストレス認知的スキーマの発達を促進させ,ストレス反応を軽減させる可能性が期待される。
  • 橋本 健, 煙山 千尋, 清水 安夫
    原稿種別: 本文
    2009 年 11 巻 p. 55-62
    発行日: 2009/03/01
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー
    近年,中学校の運動部活動の現場では,対人関係の問題を起因とした部活動からのドロップアウトやバーンアウトなどの問題が深刻化している。そこで,本研究では,中学校サッカー部員に対して,人間関係開発を意図した予防的・開発的カウンセリングのグループ・アプローチ法の一つである構成的グループ・エンカウンター(Structured Group Encounter;SGE)を実施し,その効果の検討を行うことを目的とした。研究対象者は,東京都内にある2校の中学校に在籍する1,2年生の男子サッカー部員29名(平均年齢13.38歳,SD=0.68)であった。そのうち,A中学校サッカー部員18名(平均年齢13.44歳,SD=0.62)をトレーニング群,B中学校サッカー部員11名(平均年齢13.27歳,SD=0.79)をコントロール群とし,トレーニング群にのみ,SGEを実施した。両群に対し,心理的競技能力診断検査(Diagnostic Inventory of Psychological-Competltive Ability for Athletes;DIPCA.3)(徳永・橋本,2000;徳永,2001;Tokunaga,2001)をSGE前(Pre test),SGE中(Middle test),SGE後(Post test)の計3回実施し,SGEの効果の検討を行った。群(トレーニング・コントロール)×測定時期(Pre test・Middle test・Post test)の二要因分散分析の結果,「競技意欲」においては,コントロール群のPost testの得点が,Pre testの得点と比較して有意に低減する結果が認められた。「競技意欲」の下位尺度の「闘争心」においては,コントロール群のMiddle testの得点が,Pre testと比較して,また,Post testの得点が,Pre testの得点と比較して有意に低減する結果が認められた。「作戦能力」とその下位尺度である「判断力」においては,トレーニング群のMiddle testの得点がPre testの得点と比較して有意に向上する結果が認められた。また,SGE後の自由記述式のアンケートからは,「SGEを行って仲間との信頼関係は良くなった」等,SGEの取り組みによるポジティブな人間関係の変化を示唆する内容が得られた。
  • 筒井 潤子
    原稿種別: 本文
    2009 年 11 巻 p. 63-70
    発行日: 2009/03/01
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は,教員養成における実習体験の,より意味あるあり方を検討していく手がかりを見出すことを主眼に置き,その本質的な意味を明らかにすることである。今日,教師をめぐる現状は,精神疾患による休職者が一昨年で14年連続の増加傾向にあるとの報告を裏づけるように,大きな問題をはらみ深刻な様相を呈している。そのような現状を背景に,大学における教員養成において「現場での実習体験」が重要視され,さまざまに試みられている。しかしその形態,目的,意味づけもまたさまざまである。臨床心理士として教員養成に関わる筆者は,ゼミ学生を対象に,養護施設を校区内に持つ小学校での週1回,1年間の実習体験を行ってきた。その中で,2007年度前期,それに付随して小学校での実習後,施設に移動し夕食後までの時間をそこで子どもと関わるという体験が可能となった。ここでは,その経過と共にその間の学生たちの動きと生の声を取り上げる中から,実習体験における本質的な意味は何かを考察した。学生たちは,多くのことを体験し,感じ取り,語り合い,支えあい,意味づけていった。本学において行われている近隣地域の学校での実習体験との比較では,体験内容の質的,内容的な違いが見て取れた。学生の体験を踏まえ,そこから見えてきた実習体験の意味とは,(1)感情の揺さぶられと,その共有による支えられ体験(2)「生活する一人の人間」という子ども観の広がりであり,それらが,連携・協働の重要性への確信,教師としてのメンタルヘルス,子ども理解の深化に寄与するものと思われた。また,実習体験での傷つきを援助し,意味づけていく大学教員の役割の重要性も示唆された。
  • 弓田 千春, 竹山 亮宏, 近藤 卓
    原稿種別: 本文
    2009 年 11 巻 p. 71-77
    発行日: 2009/03/01
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー
    近年,子どもたちの「いのち」の概念の揺らぎが話題となり,「いのちの教育」の必要性が高まっているが,実際に「いのちの教育」のプログラムを展開する際には,子どもたちの発達段階に沿った内容を用意することが不可欠であろう。また,「いのち」という語からは様々なイメージが連想されることから,教員と子どもたちの間での「いのち」という語についてのイメージの相違を検討することにより,いのちの教育の在り方について議論を深めることが必要であろう。そこで本研究では,高校生と教員の「いのち」の概念の違いを明らかにすることを目的として,調査を実施した。調査対象は,首都圏A県内の公立・私立高等学校39校の生徒4,197名,および同県内の県立高等学校教員384名である。結果については,「いのちの概念」に関する質問と「いのちのイメージ」に関する質問について因子分析を行った。その上で,各因子の因子得点を算出し多重比較を行った。また,「いのちを考える頻度」と「いのちのイメージ」の軽重の関連性も検討した。それらの結果,各因子間において高校生と教員の間で有意な差が見られた。さらに健康やいのちが何よりも大切だと考えたり,意識したりする頻度と「いのちのイメージ」の軽重に関連性が見られた。以上の結果は,「いのち」の概念・イメージに,教員と生徒に共通する因子が存在することを示している。そして,それらの因子得点が15歳から17歳の間で増加していること,15歳から18歳の高校生段階と教員の間で因子得点が増加していることが明らかとなった。これらの結果から,高校生段階において,「いのち」の概念の発達的な変化があることが示唆された。しかし,生徒と教員との違いについては,両者間の役割の違いなど,発達的側面だけに限定されない他の要因の可能性についても,今後は考慮する必要があると考えられる。
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