学校メンタルヘルス
Online ISSN : 2433-1937
Print ISSN : 1344-5944
12 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 高田 純
    原稿種別: 本文
    2009 年 12 巻 2 号 p. 53-60
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,特別支援教育開始後の小学校教師のバーンアウト傾向の実態を質問紙調査で明らかにし,それに関連する心理学的要因を検討することである。小学校の通常学級を担任する206名の教師に対し,次の項目についての調査が実施された。調査内容は,バーンアウト傾向尺度,職場環境ストレッサー尺度,特別支援教育負担感尺度,自己効力感尺度,障害のある児童(以下,障害児)の有無,基本的属性(性別,教職経験年数)からなる。分析の結果,(a)障害児を担任しているかどうか(以下,障害児の有無)によって,教師のバーンアウト傾向得点に差は認められなかったが,障害児の担任教師(以下,有群)が担任していない教師(以下,無群)よりも「孤立性」が低いことがわかった。(b)性別と障害児の有無によって検討したところ,「生徒指導」において,男性有群が男性無群よりも高いことがわかった。(c)教職経験年数と障害児の有無によって検討したところ,「管理職との葛藤」において,中堅有群が中堅無群よりも低いことがわかり,「生徒指導」において,中堅有群が中堅無群よりも高いことがわかった。(d)小学校教師のバーンアウト傾向に至るモデルを共分散構造分析によって検討したところ,職場環境ストレッサーから直接バーンアウト傾向に至る有意なパス,職場環境ストレッサーから特別支援教育負担感を経由してバーンアウト傾向に至る有意なパスが認められ,職場環境へのネガティブな認知が,特別支援教育への不安や負担に影響している可能性が示唆された。
  • 煙山 千尋, 清水 安夫
    原稿種別: 本文
    2009 年 12 巻 2 号 p. 61-70
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,1)心理・社会的適応及び不適応と関連のある「自己志向的完全主義」と「社会規定的完全主義」の要素を含んだ,大学生特有のperfectionismの認知及び行動傾向を多次元的にアセスメントする指標を作成し,その信頼性と妥当性を検討すること,2)大学生の集団適応を媒介変数とした,perfectionismとメンタルヘルスの関係性を検討することを目的とした。調査対象者は,首都圏内の4年制私立大学に在籍する大学生240名(男性82名,女性158名,平均年齢=19.79歳,SD=1.07)であった。調査内容として,フェイスシート,大学生版Perfectionism Scale(Multidimensional Perfectionism Scale for University Students;以後MPSUSと略),集団適応効力感尺度(具志堅・清水,2007),精神的健康パターン(橋本・徳永,2000)に回答を求めた。探索的因子分析の結果,5因子各5項目で構成される大学生特有のperfectionismをアセスメントするMPSUSの構造が明らかになった。各因子のα係数は,0.772から0.854の値であり,検証的因子分析の適合度指標は十分な値を示した(GFI=0.907,AGFI=0.877,CFI=0.971,RMSEA=0.036)。さらに,共分散構造分析による階層的重回帰モデルを検討した結果,「Afraid of Mistakes」に関する完全性の傾向が高いほど,メンタルヘルスが悪化するという直接的な影響性が示された。また,「Objective Evaluation」,「Higher Purposes」から集団適応効力感への直接的な影響性と,集団適応効力感を介してメンタルヘルスに与える間接的な影響性とが認められた。本研究の結果,5因子各5項目で構成され,信頼性と妥当性を有するMPSUSが開発された。また,集団適応効力感がperfectionismとメンタルヘルスの調整変数となることが示唆されたため,今後は,集団適応効力感を高める心理的介入を実践し,perfectionism及びメンタルヘルスに与える影響を検討したい。
  • 宮下 敏恵, 五十嵐 透子, 増井 晃
    原稿種別: 本文
    2009 年 12 巻 2 号 p. 71-80
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は教員養成系大学における学生のメンタルヘルスの経年変化を検討することであった。小中高等学校の教師のメンタルヘルス悪化が叫ばれる中,教師を目指す学生の段階において,メンタルヘルスは変化しているのか,23年間にわたるデータをもとに検討を行った。調査対象者は,教員養成系大学に1984年から2006年までに入学した学生4,435名(男性1,775名,女性2,660名)であった。大学生の精神的健康を調べるためにUPI調査用紙(University Personality Inventory)を用いた。本研究の結果から,UPIの自覚症状得点において,大きな変化はみられず,また下位尺度得点においても,大きな経年変化はみられず,一大学の結果ではあるが,教師を目指す学生のメンタルヘルスは悪化していないということが示された。教員養成系ではない他大学においては,自覚症状得点が増加しているという傾向が多数示されていることから,教師を目指す学生のメンタルヘルスは,むしろ維持されている可能性があるだろう。また,進路別にUPI得点を検討したところ,教育関係に就職した学生は,抑うつ得点が低いという有意な差がみられた。これらの結果から,一大学のみの結果で,断定はできないが,教師を目指す学生のメンタルヘルスは近年悪化しているとはいえず,むしろ教育関係に就職している学生のメンタルヘルスは高いという可能性が考えられる。教師のバーンアウト傾向の高さ,メンタルヘルスの悪化は,教師の資質そのものの変化ではなく,制度や仕事内容の悪化が大きな影響を及ぼしていると考えられる。
  • 尼崎 光洋, 煙山 千尋, 清水 安夫
    原稿種別: 本文
    2009 年 12 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,大学生を対象とした携帯電話のEメールの使用に対する意思決定バランス尺度を開発することである。調査対象者は,大学生253名であり,質問紙を用いた集合調査法を実施した。調査内容は,携帯電話の利用状況を把握するための項目と予備調査で得られた38項目の意思決定バランス尺度の2種類を用いた。尺度開発のために,探索的因子分析,検証的因子分析を実施した。また,抽出された各因子に対して,信頼性係数(Cronbach's α)を算出した。本研究の結果から,携帯電話の機能の中で,Eメールの使用頻度が最も高く,1ヶ月の携帯電話の使用料金の平均金額は,9576.67円であった。また,1日あたりの携帯電話のEメールの平均送信件数は,19.65件であり,1日あたりの携帯電話のEメールの平均受信件数は,22.79件であった。また,分析の結果,信頼性及び妥当性を兼ね備えた携帯電話のEメールに対する意思決定バランス尺度(2因子14項目)が開発された。今後,大学生の携帯電話のEメールの送受信件数やメンタルヘルスを変数に,携帯電話のEメール使用に対する意思決定バランスとの関連性を検討することが必要であると考える。
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