学校メンタルヘルス
Online ISSN : 2433-1937
Print ISSN : 1344-5944
13 巻 , 1 号
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  • 川人 潤子, 大塚 泰正
    原稿種別: 本文
    2010 年 13 巻 1 号 p. 9-18
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,教育実習を控えた大学生の楽観性,ストレッサー,コーピング,抑うつの因果モデルを検討することであった。2009年4月に,教育実習を控えた大学生411名(男性175名,女性234名,無記名2名;平均年齢19.3歳,標準偏差0.6歳)は,楽観性(日本語版改訂版楽観性尺度;LOT-R),ストレッサー(大学生用ストレス自己評価尺度;SSRS),コーピング(日本語版Brief COPE尺度),抑うつ(自己記入式抑うつ性尺度;CES-D)に関する質問紙に回答した。共分散構造分析の結果,楽観性の高さは,抑うつの低さへ直接的に影響することが明らかになった(β=-0.19,p<0.01)。さらに,楽観性の高さは,ストレッサーを介して間接的に抑うつの低さに影響した(β=-0.22:-0.34×0.64)。また,接近コーピングの実行頻度の多さは,抑うつの低さへ直接的に影響する傾向が認められた(β=-0.08,p=0.08)。一方,ストレッサーの高さと回避コーピングの実行頻度の多さは,抑うつの高さへ直接的に影響することが認められた(ストレッサーから抑うつへの影響:β=0.64,ρ<0.01;回避コーピングから抑うつへの影響:β=0.15,p<0.01)。以上から,楽観性が高ければ,ストレッサーを脅威と知覚する傾向が抑えられ,結果として抑うつを改善させる可能性が推察された。そのため,教育実習を控えた大学生に楽観性を高める介入プログラムを実施することは,精神的健康を維持するために有益であるといえる。
  • 益子 洋人
    原稿種別: 本文
    2010 年 13 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,過剰適応傾向を「対人関係や社会集団において,他者の期待に過剰に応えようとするあまりに,自分らしくある感覚を失ってしまいがちな傾向」と定義した上で,本来感に対する過剰な外的適応行動と内省傾向(自分の感情を理解しようとする傾向)の影響を検討し,過剰適応的な人の本来感を高める方法を考察することであった。大学生を対象に質問紙を配布し,163名の回答を分析した。分析の結果,過剰な外的適応行動のうち,「よく思われたい欲求」および「自己抑制」は,本来感と中程度の負の関連を示していた。また,内省傾向は,本来感と弱い正の関連を示していた。この結果は,他者によく思われようと努力したり自分を抑えたりする行動は本来感を減少させるが,自分の感情を理解しようとする傾向は本来感を向上させると解釈された。ここから,過剰適応傾向の高い人の本来感を高めるためには,過剰な外的適応行動を間接的に軽減するため,その原因であるとされる見捨てられ不安を緩和する方法を開発していくことや,過剰な外的適応行動の低減が難しい場合に備えて内省傾向を高める働きかけを行うことが必要であると考察された。
  • 早川 恵子, 小林 正幸
    原稿種別: 本文
    2010 年 13 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,学校不適応の予防のために,特定の市全体で導入した「小中連携支援シートシステム」の実践の効果を検証することを目的とした。これは,わが国初の試みであり,小学校の期間に年間15日以上を欠席した小学6年生について記載されたシートと,その子どもへの支援について,教師向けに臨床心理の専門家が記載したコメントを活用するもので,6つの中学校と18の小学校とを結ぶ連携システムである。その結果,以下のことが明らかになった。(1)このシステムの導入前3年間と,導入後を比較した結果,市全体で,中学1年生の長期欠席の出現頻度に有意差が見られ,システムの効果が示唆された。(2)その中の2つの中学校を対象とし,導入効果の検討を行ったところ,導入後に年間欠席日数の増加抑制傾向が認められ,(3)とくに,小学6年生で欠席日数が6日以上の子どもの欠席日数に増加抑制の傾向が見られることが明らかになった。「小中連携支援シートシステム」の学校不適応の未然防止の有効性と,研究方法上の課題が考察された。
  • 有馬 比呂志
    原稿種別: 本文
    2010 年 13 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,中学生の自発的なピア・サポート活動の経験が自己成長に及ぼす効果を検討することであった。参加者は中学生761名であった。本調査は,自発的ピア・サポート経験の有無を確認する調査1と,経験があった生徒を対象にした自己成長を検討する調査2で構成されていた。調査2では,伊藤で作成された自己成長に関する質問項目を修正し,自己成長尺度として使用した。自己成長に関する因子分析を行った結果,2つの因子が抽出され,第1因子は「対人的態度」,第2因子は「学校生活」と命名された。さらに,ピア・サポート活動の経験による自己成長についての自由記述を,質的分析法の1つである修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析を行った。その結果,「自己理解」,「対人的態度」,「支援」,「学校生活」の4つのカテゴリーが抽出され,「自発的ピア・サポートによって,支援や学校生活を肯定的に捉えることができ,自己理解と対人的態度が改善する」というグラウンデッド・セオリーが生成された。これらの結果から,自発的なピア・サポート活動が自己成長に促進的効果があることが示唆された。
  • 堀 匡, 小林 丈真
    原稿種別: 本文
    2010 年 13 巻 1 号 p. 41-48
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,大学生の愛着スタイルとソーシャルスキル,友人サポート,精神的健康状態との関連について検討することを目的とした。大学生を対象に質問紙調査を実施し,回答に欠損のない650名(男性264名,女性386名)を分析対象とした。分析は,まず,愛着スタイル尺度に関してクラスター分析を行った。その結果,安定群,アンビバレント群,回避群という3つのクラスターが抽出された。その後,各クラスターを独立変数ソーシャルスキル,友人サポート,精神的不健康度を従属変数とする一元配置の分散分析を行った。分散分析の結果, 1)アンビバレント群は,関係開始,主張性,感情統制,関係維持スキル得点が安定群,回避群に比べて有意に低く,解読,記号化スキル得点は安定群に比べて有意に低いこと, 2)回避群は,関係開始,解読,関係維持,記号化スキル得点が安定群に比べて有意に低いこと, 3)回避群は友人サポート得点が,安定群,アンビバレント群に比べて有意に低いこと, 4)アンビバレント群は,安定群,回避群に比べて精神的不健康度が有意に高いことが明らかとなった。以上の結果から,1)アンビバレント群では,主張性,感情統制,関係開始,関係維持,解読,記号化スキルを高めることが,2)回避群では,関係開始,関係維持,解読,記号化スキルを高めることが心理・社会的適応状態の改善に有効であることが示唆された。
  • 藤澤 雄太, 満石 寿, 前場 康介, 竹中 晃二
    原稿種別: 本文
    2010 年 13 巻 1 号 p. 49-58
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,身体活動量の増加を意図した動機づけ面接(Motivational Interviewing:MI)に準ずる面接を実施し,チェンジトークがSEを増加させ,間接的にストレス反応を低減させるかどうかについて検討することであった。チェンジトークとは,「現状を維持することによる不利益」,「変化を起こすことの利点」,「変わることへの意志」,「変わることへの楽観性」といった,変化へ向けた意欲を表す言葉を指す。定期的な運動習慣のない女子大学生(23名)が,所属する大学ごとにチェンジトーク(CT)群および統制群へランダムに振り分けられた。CT群では,主にオープンクエスチョンを中心に用い,身体活動・運動に関する現状,現状のメリット・デメリット,ならびに実施可能な健康行動に関する会話を行うことにより,チェンジトークを引き出した。統制群では,クローズドクエスチョンを用いて同様の内容について会話を行った。面接内容はICレコーダによって録音し,逐語録をもとに2名の評価者がチェンジトークの抽出を行った。面接前後において,一般性セルフエフィカシー(GSES),運動セルフエフィカシー(運動SE),および心理的ストレス反応(SRS-18)の測定を行った結果,チェンジトーク数とGSES,および運動SEの変化量に有意な相関関係は認められなかった。また,Mann-WhitneyのU検定の結果,群間におけるGSES,運動SE,SRS-18の変化量に有意な差は認めなかった。本研究の結果から,チェンジトークはGSESおよび運動SEに影響を与えない可能性が示唆された。今後はMIに含まれる他の要素とチェンジトークの関連性を検討することにより,効果的な面接実施に向けた知見を得ることが求められる。
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