学校メンタルヘルス
Online ISSN : 2433-1937
Print ISSN : 1344-5944
17 巻 , 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著論文
  • 土居 正城, 加藤 哲文
    2014 年 17 巻 1 号 p. 5-17
    発行日: 2014年
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー

    【問題と目的】スクールカウンセラー(以下,SC)と教員の連携の重要性が指摘され,両者の連携に関する知見が蓄積されてきている。しかし,両者の連携の目的に関する研究はほとんど見られない。そこで,その具体的内容を明らかにし,さらにこれに関する職種間の認識における差異を検討すること,これらの知見に連携促進のための考察を加えることを目的に研究を行った。

    【方法】全国のSC配置校にSCと教員の連携の目的に関する自由記述式質問紙を郵送し,有効回答の得られたSC142名,SC担当教員158名の合計300名,計533件の記述を分析対象としてKJ法により記述内容のカテゴリー化を行った。また,職種ごとの差異を検討するために,生成されたカテゴリーデータについて統計的分析を行った。

    【結果】分析の結果,両者の連携の目的は,子どもを取り巻く環境の向上,問題対応機能の強化,子どものメンタルヘルスの向上であることが明らかになった。そして,SCは子どもを取り巻く環境の向上を,SC担当教員は子どものメンタルヘルスの向上を,相手側の職種より強く求めていた。

    【考察】これらの結果から,今後の十分な連携の実現のためには,両者がこの差異を認め,お互いの考え方の違いを理解した上で,相互の立場や考えを尊重することの重要性が示唆された。

  • 八田 直紀, 清水 安夫
    2014 年 17 巻 1 号 p. 18-26
    発行日: 2014年
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー

    【問題と目的】青年期におけるレジリエンスの向上を目的とした介入を行うには,個々人の持つレジリエンスについての状況を把握する必要がある。本研究では,調査者および参加者に対してフィードバックを行う際に,個々人のレジリエンスの状況をより明確に提示することを意図し,「個人内特性」および「環境的要因」の両側面から,レジリエンスをより簡易的に測定することを可能とする,多次元的な尺度の開発を目的とした。

    【方法】健康・スポーツに関する授業を履修する学生616名(男性259名,女性352名,不明5名,平均年齢19.30歳,SD>=1.17)を分析対象とし,質問紙調査を集合調査法にて行った。調査内容は,「大学生版日常生活レジリエンス尺度:Resilience Inventory for Daily Life of University Students(RIDLUS)」の原案,「大学生版ライフスキル尺度:Life Skills Scale for University Students(LSSUS)」および「大学生版ポジティブ・コーピング尺度: Positive Coping Scale for University Students(PCSUS)」であった。RIDLUSの開発,およびその構造性の検討のために,探索的因子分析,信頼性係数の算出,検証的因子分析,相関分析,クラスター分析および高次因子分析を行った。

    【結果】RIDLUSの原案に対する探索的因子分析の結果,5因子25項目が抽出され,各下位因子の信頼性係数は,すべて.80以上を示した。抽出された因子構造をもとに検証的因子分析を行った結果,各適合度指標は,統計学的基準値を満たした。また,相関分析の結果,開発した尺度と関連が想定されたLSSUSおよびPCSUSの各下位因子との間に,有意な相関が認められた。さらに,クラスター分析および高次因子分析の結果,2つの1次因子(「個人内資源」および「社会的資源」)を有すると仮定した尺度構造において,各適合度指標は,統計学的基準値を満たした。

    【考察】分析の結果,一定水準の信頼性と構成概念妥当性および基準関連妥当性を備えた,5因子25項目(各5項目)で構成される「大学生版日常生活レジリエンス尺度(RIDLUS)」が開発された。各因子の項目数が揃えられたことにより,レーダーチャートなどを用いた視覚的なフィードバックを行うことが可能となった。また,多くの変数を用いたモデルを分析する際には,レジリエンスを「個人内資源」と「社会的資源」に大別して使用することもでき,研究上の実用性も高い尺度であると考えられた。

原著論文〔実践研究〕
  • 金子 なおみ, 堀 正士
    2014 年 17 巻 1 号 p. 27-38
    発行日: 2014年
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー

    【問題と目的】通常学級に在籍する発達障害児の支援において,学級の担任教師と保護者(母親)の連携は不可欠であると言われている。しかし,教師が母親との連携を促進させることは容易ではない。その要因は,母親の我が子に対する教育観が,教師から見て捉えにくいことにあると考えられた。そこで本研究では,発達障害児の母親の教育観の形成プロセスを明らかにし,教師母親間の連携を促進する要因と阻害する要因を検討することを目的とした。

    【方法】通常学級に在籍する発達障害児の母親9名を対象に,半構造化面接を行った。面接で得たデータを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにより分析した。

    【結果】母親の教育観の形成プロセスには,学習面では特別な配慮を求め,学習面以外では他児と同等の扱いを求める〔両価的なニーズ〕が特徴として見出された。〔両価的なニーズ〕に対応しない教師が登場すると,母親は教師との齟齬を生じさせ,教師との関係を悪化させるとの仮説が生成された。

    【考察】〔両価的なニーズ〕を巡る教師母親間の齟齬が生じる要因において,母親の〔両価的なニーズ〕を求める各場面と,教師の実践する各場面が逆であることが考えられた。すなわち,母親が学習場面で特別な配慮を求めるのに対し,教師は他児と同等の課題を課し,母親が学習以外の活動場面で他児と同様の扱いを求めるのに対し,教師は特別な配慮を示すのである。双方のニーズと実践にズレが生じる背景として,教師には指導の公平性に対する責任と,集団での道徳教育への志向があり,母親には成功体験の重視と子の劣等感への不安があると考えられる。教師が母親との連携を促進するために①個別の配慮について母親と具体的に話し合う②子の成功体験を増やすための方策を提案する③子の失敗体験後のフォローについて具体的に相談し合う,以上3点を提案する。

  • 森本 哲介, 高橋 誠, 渡部 雪子
    2014 年 17 巻 1 号 p. 39-49
    発行日: 2014年
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー

    本研究では,大学1年生の自己形成意識を高めることを目的として,人の性格的な強みである「キャラクター・ストレングス(Character Strengths:以下CSとする)」を日常生活の中で活用させる心理学的介入プログラムを実施し,その効果を検証した。

    介入プログラムは,第1週に参加協力者のCSを測定し,第2週に,活用を促すCSを個人ごとにフィードバックした。そしてその後1週間の日常生活で,フィードバックされたCSをそれぞれの参加協力者が自分なりの新しい方法で活用するよう促す,という手順で行われた。測定したCS得点の上位から順に5つのCSを活用する群(SS群)と参加協力者ごとにランダムに割り当てられたCSを活用する群(RS群),介入を行わない群(Control群)の3群を設定した。

    効果検証のために,プログラムの前後で,「可能性追求」と「努力主義」の2因子からなる自己形成意識尺度を測定した。また,SS群とRS群は,強みについての主観的な感覚について測定した。

    群(SS群・RS群・Control群)×test時点(pre・post)の2要因分散分析の結果,自己形成意識の下位尺度可能性追求得点はどの群も有意な変化はみられなかったが,努力主義得点はSS群においてのみpre時点よりもpost時点において有意に上昇していた。またSS群では,自己の強みを活用しているという感覚が有意に高まっていた。これらの結果から,自己の中でも上位の強みを活用する介入プログラムが,大学生の自己形成意識の努力主義因子を高めるために有効であることが示された。

資料論文
  • 三浦 正江
    2014 年 17 巻 1 号 p. 50-59
    発行日: 2014年
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー

    【問題と目的】思春期は,親が子どもと良好なコミュニケーションをもつことが難しい時期である。しかし,中学生や高校生の子どもをもつ親を対象とした親プログラムに関する検討はほとんど行われていない。そこで本研究では,中学生の子どもをもつ母親グループに対して,認知行動理論に基づく親トレーニング・プログラムを実施した。

    【方法】トレーニング・プログラムは週1回計5回実施された(参加者は母親17名)。プログラムは,(1)思春期の心理・行動的特徴と行動理論の基礎に関する講義,(2)日常生活における母親の子どもへの行動をセルフ・モニタリングすること,(3)ホームワークを用いた母親の行動変容,(4)ホームワークの実行に対するトレーニング・スタッフからのフィードバックやグループメンバーとの意見交換の4つの要素から構成された。プログラム効果を検討するために,プログラム前後に母親に対して,母親が子どもに与える家庭ストレッサー,ストレス反応,および子どもからの知覚されたソーシャルサポートに関する尺度が実施された。

    【結果】まず,5週間測定されたセルフ・モニタリングの記録を検討した結果,子どもに対する母親の否定的行動と中性的行動は減少することが示された。さらに,t検定および効果量dを算出した結果(n=9,あるいは10),プログラム後には,母親のストレス反応と母親が子どもに与える家庭ストレッサーは減少し,子どもからの知覚されたソーシャルサポートは高くなることが示された。

    【考察】予防的親トレーニング・プログラムの実施によって,母親の子育てスキルおよび母親のメンタルヘルスが改善されることが示唆される。最後に,母親を対象として学校で本プログラムを実施することの有効性が議論された。

  • 松井 幸太, 阿形 恒秀
    2014 年 17 巻 1 号 p. 60-72
    発行日: 2014年
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー

    【問題と目的】現在,定時制・通信制高校は入学者が多様化し,小中学校で不登校を経験している生徒も多く在籍している。高校では学校不適応が中途退学につながりやすく,彼らにとって不登校からの立ち直りもしくは学校適応が一つの課題となっていると考えられる。そこで本研究では,定時制・通信制高校の生徒に対する生活実態調査より,日常生活や学校生活,学校満足感について不登校経験者と非経験者の特徴の違いを多面的に比較し,また不登校期間中の生徒の心境や過ごし方を把握することによって,不登校経験者の定時制・通信制高校への適応を促進し,不登校を未然に防ぐための示唆を得ることを目的とする。

    【方法】A県内の定時制・通信制高校22校の生徒3,215名を対象に質問紙調査を行い,日常生活や学校生活,学校満足感,不登校経験について回答を求めた。

    【結果】小中学校での不登校経験者と非経験者の回答を比較した結果,不登校経験者は非経験者に比べて,夜型の生活リズムであること,就労経験が少ないこと,同学年の友人や小中学校時代からの友人が少ないこと,小中学校における満足感が低いことが示された。さらに,不登校経験者は非経験者よりも,高校での学校生活においても登校しづらい傾向にあることが示された。

    また,不登校経験を振り返る質問項目からは,友人関係や学習の躓きが不登校のきっかけとなっており,高校生活においては,環境の変化や友人関係の改善など阻害要因が減ったことにより学校の居心地がよくなったこと,また将来の目標がみつかるといった促進要因が増えたことが彼らの高校生活を支えていることが示された。

    【考察】したがって,児童生徒の学校適応を支援するにあたって,日常的な生活場面における友人や担任との関係づくりを促進できる学級経営を目指し,教職員全体によるきめ細やかな学力保障の体制によって生徒の学習に対する疎外感を解消して

    いくことのできる学校運営が求められる。

ショートレポート
  • 鈴木 美樹江
    2014 年 17 巻 1 号 p. 73-77
    発行日: 2014年
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究では,中学生の視点取得が自尊感情に影響を与えるまでのプロセスについて検討を行うことを目的とした。

    【方法】中学生を対象として質問紙調査を実施し,視点取得,他者理解,自己理解,人間不信,自尊感情について190名のデータを分析した。

    【結果】視点取得が他者理解に影響を与えることで,自己理解の促進や人間不信の克服につながり,最終的に自尊感情に影響を及ぼしていることが示された。

    【考察】これらの結果は,他者から見た視点を他者理解につなげることで,自己理解が促進されるとともに,人間不信も克服する機会となり,最終的に自尊感情向上に寄与する可能性を示唆している。

feedback
Top