【問題と目的】本研究は,厳しい就職活動を経験する女子学生の精神的健康や首尾一貫感覚(SOC)に関して,就職活動前から就職先が決定した後まで縦断的に調査をし,その状態や変化,関連を検証しようとするものである。
【方法】就職活動前の2010年9月より,就職活動が終了するまでの6か月から12か月の間,女子大学において就職活動前・中・後の質問紙による調査を行った。最終的に20名の女子学生の縦断的分析が可能となった。
【結果】GHQ12によるGHQ得点の平均値が,就職活動前(3.3, SD 3.0)に比較して,就職活動中(6.3, SD 2.5)に有意に高くなり,就職活動後(3.1, SD 3.6)は就職活動中に比較して有意に低くなった。一方SOC得点の平均値は就職活動前(118.8, SD 21.7)に比較して就職活動後(130.9, SD 20.8)に有意に上昇した。個人別には,20名のうち11名(55%)が10%を超えて上昇した。また,就職活動前・中・後のGHQ得点とSOC得点には有意な負の相関関係があった。
【考察】GHQ得点の就職活動前・中・後の変化から,女子学生は就職活動によってもたらされたストレッサーによる強い緊張状態を乗り越えたことが推測できた。また就職活動後にSOC得点が上昇したことから,就職活動を乗り越えることはSOCを強化する可能性が示唆された。さらに,厳しいとされる就職活動を,事前にSOCを強化することで,より良好な精神的健康状態で乗り越えられる可能性や,強いSOCが精神的健康度を良好に保つのに有効である可能性も推察できた。
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