学校メンタルヘルス
Online ISSN : 2433-1937
Print ISSN : 1344-5944
19 巻 , 2 号
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原著論文〔実践研究〕
  • 益子 洋人
    2016 年 19 巻 2 号 p. 142-152
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー

    【問題と目的】教師などの対人援助職を目指す青年にとって,他者との意見や価値観の違いから生じる対立を解決するスキルを獲得しておくことは,重要な課題である。他者との対立を解決するために重要なことは,自分も相手も納得できる解決策を考案することであり,そのためのスキルとしては,「統合的葛藤解決スキル」がある。しかし,このスキルの向上を目指す心理教育プログラムは未開発である。そこで,統合的葛藤解決スキルの向上を目指すプログラムを開発し,その効果を,統合的葛藤解決スキル,怒りへの不快感,過剰適応傾向(関係維持/対立回避的行動と本来感)の観点から検討することを目的とする。

    【方法】per protocol解析を行うため,介入群の大学生30名,統制群の24名を最終的な分析対象とした。プログラムは全4回(1回90分)からなり,構成要素は葛藤解決理論,応答スキル,潜在的希望への注目,アンガー・マネジメント,アサーション,メディエーション,ロール・プレイであった。効果を検討するため,プログラムの実施前後に,理解度に関する質問,統合的葛藤解決スキル,怒りに対する不快感,関係維持/対立回避的行動,本来感を問う質問紙調査を実施した。

    【結果】統合的葛藤解決に関する理解度をMcNemar検定によって分析した結果,有意な向上が見られた。また,群ごとの各尺度得点の変化量を比較した結果,介入群の統合的葛藤解決スキルの3つの因子と,怒りに対する不快感,過剰適応傾向の「期待に沿う努力」と本来感に,有意な向上が見られた。

    【考察】統合的葛藤解決スキルを向上させる心理教育的プログラムは,スキルそのものを一定程度向上させるだけではなく,怒りに対する不快感や,過剰適応傾向の「期待に沿う努力」を低減し,本来感を向上させることが示され,教師などの対人援助職を目指す青年の専門性や心理的健康の増進に奏功する可能性が示唆された。最後に,本研究の限界と今後の課題を議論した。

資料論文
  • 佐野 和規, 加藤 哲文
    2016 年 19 巻 2 号 p. 153-163
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー

    【問題と目的】学校現場は生徒の自傷行為への予防的介入的対応を行っていける貴重な場である。しかし,日本における学校現場での自傷対応に関する研究は,養護教諭やスクールカウンセラーを中心とするもの以外ほとんどない。そこで,一般教員が学校現場で自傷行為にどのように関わっているか現状分析し,教師が組織的に生徒の自傷行為に対応していく方法について考察する。

    【方法】A県の5つの公立高校の教師を対象に自傷生徒への対応と教師としての意識に関する質問紙を作成し164名の教師から回答を得た。自傷生徒対応に関する質問項目の因子分析を行い,教師の意識と自傷対応との関連を回帰分析,共分散構造分析で分析した。さらに,自傷対応に関して教師集団のクラスター分析を行い,調査対象5校の自傷対応の相違について分散分析を行った。

    【結果】教師の自傷行為への対応には「危機介入」「相談対話」「指導説諭」「連携見守り」の4因子が確認された。この自傷4対応因子には教師の自傷や教育への意識が影響を与えていた。クラスター分析の結果,自傷4対応因子すべてを行う「積極的対応クラスター」とすべてに消極的な「消極的対応クラスター」とに教師集団が二分された。また,自傷行為が多い定時制高校での対応が一番消極的だった。

    【考察】自傷の4対応は相互に矛盾するものであるが,熱心な教師が矛盾するいくつかの対応を行う傾向にあった。また,教師全体でも各学校単位でも,教師は相矛盾する自傷への4対応を同時に行っている教師集団とすべての対応をしない教師集団に二分され,連携や役割分担がなされていないことが確認できた。このような現状を克服していくため,自傷への4対応を4つの役割分担と捉え,教師集団が連携して組織的に自傷行為に対応していくことの必要性を指摘した。

  • 福本 美樹
    2016 年 19 巻 2 号 p. 164-172
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー

    【問題と目的】1990年代後半より,性同一性障害に対する社会的な受容が高まってきているように見える。しかし,性同一性障害当事者が社会的・心理的に様々な困難を抱えているという報告もあり,性同一性障害当事者がいまだ大きな心理的ストレスを抱えている現状が推測される。そこで本研究では,性同一性障害当事者への支援方法を考察するために,性同一性障害当事者が抱える困難と困難を乗り越える要因を明らかにすることを目的とした。

    【方法】性同一性障害当事者3名に対し,半構造化面接で,これまで経験してきた心理社会的困難と,そうした困難への対応状況あるいは方法を聞き取った。面接で得たデータをもとに,複線径路・等至性モデル(TEM)により分析した。

    【結果】困難として,自分の望む服装や持ち物を志向しても周囲に受け入れてもらえなかったこと,性に対する違和感を周囲に言えないこと,第二次性徴,学校や職場の制服や性役割の強要,就労できないことなどがあった。困難への対応状況あるいは方法としては,自分の性に対する違和感を言わないことにより周囲の批判を避けること,体の変化や制服の着用・外部からの性役割の強要を受け入れること,性同一性障害当事者の仲間を得ること,性に対する知識を得ること,家族や友人からの受容などがあった。

    【考察】性同一性障害当事者が困難を乗り越える際に必要である要因として,①性の多様性に関しての知識理解②性に違和感をもつ仲間たちとのつながり③家族や親しい友人からの受容④学校の受け入れ態勢の整備⑤職場の理解,が明確になった。特に④と⑤については,学校や職場での性別二元論に基づく男女別の振り分けに苦しむ当事者の状況が明らかになった。今後は,学校や職場における性の多様性についての理解と意識改革が必要であるとともに,なぜ学校や社会が性に違和感をもつ人たちを受け入れることができないのかという,性同一性障害当事者を取り巻く環境側の要因を研究していくことが必要と考えられる。

  • 望月 美紗子, 近藤 卓, 宮森 孝史
    2016 年 19 巻 2 号 p. 173-181
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー

    【問題と目的】近年,子どもの自尊感情の低さが問題視される傾向にある。自尊感情については,James, W.やRosenberg, M.をはじめとして,これまで多くの研究者によって様々に定義されている。本研究においては,他者との比較のうえで成立し,他者より優れていることで得られる「社会的自尊感情」と,他者との比較なしに,絶対的な感情として心のうちに存在する「基本的自尊感情」の2つの自尊感情を「自尊感情」として,日本の小学生,中学生,高校生の「自尊感情」の実態を明らかにする。

    【方法】養護教諭向けの専門誌にて調査協力校を募集し,小学生(計877名),中学生(計2,338名),高校生(計2,597名)を対象に,自記式質問紙による集合調査法で調査を行った。

    【結果と考察】基本的自尊感情については,小学4年生から高校3年生までのいずれの学年も,女子と比べて男子の方が有意に高い値を示した。この背景には,対人関係における性差の特徴があると考えらえる。社会的自尊感情については,中学1年生から高校3年生までのいずれの学年も,女子と比べて男子の方が有意に高い値を示した。この背景には,日本における社会的・文化的役割の性差による影響が考えられる。また,学年差については,男子は中学1年生と比べて小学6年生の方が有意に高い値を示し,中学3年生と比べて中学2年生の方が有意に高い値を示した。一方女子は,中学1年生と比べて小学6年生の方が有意に高い値を示した。この背景には進学による新しい学校環境や学習環境の変化による影響,ストレス抑制における性差の影響が考えられる。

  • 早川 惠子, 小林 正幸, 霜村 麦, 副島 賢和, 大熊 雅士
    2016 年 19 巻 2 号 p. 182-191
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は,2011年の東日本大震災で被災した子どもを対象としてレジリエンスの向上とストレス反応の低減を目的とした野外教育活動による子どもの変化を明らかにするためのものである。

    【方法】2012年7月に野外教育活動への参加を希望する129名の子どもの保護者に対して,震災時の被災状況とストレス反応を含む質問紙調査を実施した。8月にこれらの子どもたちは,レジリエンスの向上とストレス反応の低下を目的とした野外教育活動に1~2回参加した。半年後,フォローアップ野外活動が実施された。

    【結果】(1)ストレス反応を調べた項目の因子分析の結果,3因子(「不安と甘え」「怒り」「よい子」)が抽出された。(2)夏の活動以降6カ月時点で,30名の参加者の「怒り」因子が有意に低下した。(3)自由記述に回答した保護者の30名中25名全員が夏の活動以降子どもの行動が望ましい方向への変化を報告したことが示された。

    【考察】上記の結果から,野外教育活動が子どものストレス反応の減少に有効である可能性が示唆された。野外教育活動のどのような構成要素が効果的であるのかについて論じられた。

ショートレポート
  • 橋口 誠志郎
    2016 年 19 巻 2 号 p. 192-196
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー

    【目的】小学生を対象として共同体感覚スキーマと生活満足感の関係に関して縦断調査を行い影響の方向性を検討することを目的とする。

    【方法】調査協力者はA県にある公立小学校に在籍する3年生から6年生の児童218名(男子112名,女子106名)であった。使用した尺度は共同体感覚尺度と生活満足感尺度であった。追跡調査は初回調査の4カ月後に行われた。

    【結果】交差遅延効果モデルにおいて共同体感覚スキーマ(T1)から生活満足感(T2)へは有意なパスは見られなかった。また生活満足感(T1)から共同体感覚スキーマ(T2)へも有意なパスは見られなかった。一方,同時効果モデルにおいては共同体感覚スキーマ(T2)から生活満足感(T2)へ有意な正のパスが見られた(β=0.23, p=.047)。また生活満足感(T2)から共同体感覚スキーマ(T2)へ有意な正のパスが見られた(β=0.25, p=.039)。

    【結論】共同体感覚スキーマと生活満足感には双方向の影響関係があることが明らかとなった。

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