学校メンタルヘルス
Online ISSN : 2433-1937
Print ISSN : 1344-5944
20 巻 , 1 号
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原著論文
  • 藤井 義久
    2017 年 20 巻 1 号 p. 25-36
    発行日: 2017年
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー

    【問題と目的】子どもの問題行動を未然に予防していくためには,今後,教師の「子ども支援力」を高めていくことが急務である。そこで,本研究では,教師の「子ども支援力」を多面的に評価できる「教師版子ども支援力尺度」を開発し,「子ども支援力」の構成概念を統計学的に検討することにした。

    【方法】対象者は,東北圏内にある小学校8校と中学校8校に勤務する教職員404名(男性164名,女性240名)である。自由記述調査に基づいて作成した「教師版子ども支援力尺度(暫定版)」(45項目,4件法)に加えて,教師悩み調査や担当クラスにおける不登校児童生徒数調査も併せて実施した。

    【結果】項目分析および因子分析の結果,最終的に,教師の「子ども支援力」の因子として,「カウンセリング能力」,「教師連携能力」,「アセスメント能力」,「専門機関連携能力」,「感情制御能力」という5つの因子が統計学的に抽出された。そして,その尺度を用いて,以下のことが明らかになった。1)女性教師や小学校教師の方がより「子ども支援力」は高かった。2)教師の「悩み」と「子ども支援力」との間には密接な関連があった。3)不登校児童生徒がいる学級担任の「子ども支援力」は,不登校児童生徒がいない学級の担任よりも一般に低かった。

    【考察】今後は,子どもの問題行動の未然予防を目指して,教師の「子ども支援力」を向上させていくためにどのような研修プログラムが有効であるか,本研究で開発した「教師版子ども支援力尺度」を用いて検証していくことが必要である。

  • 二宮 有輝
    2017 年 20 巻 1 号 p. 37-47
    発行日: 2017年
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー

    【問題と目的】日頃からSNSなどを利用することの多い大学生にとって,ネット依存は無視できない問題である。一方,これまでネット上でのどのような行動がネット依存に関連しているのかはほとんど扱われてこなかった。そこで,本研究ではSNS上の自己呈示というネット上の行動面を媒介変数として取り上げ,精神的健康がSNS依存傾向に与える影響を検討することを目的とした。

    【方法】大学生を対象に質問紙調査を行い,SNSの一つであるTwitterを利用している403名を分析対象とした。分析にはパス解析を用い,精神的健康の指標としての自尊感情,孤独感,解離傾向の3指標がSNS上の自己呈示を媒介してSNS依存傾向に与える影響について検討を行った。

    【結果】相関分析から,Twitter上で理想的な自分を演じる,虚栄的自己呈示は精神的健康の指標と負の相関を示した。また,パス解析の結果,自尊感情の低さがTwitter依存傾向に与える影響は,虚栄的自己呈示によって媒介されることが示された。一方,孤独感は間接的にTwitter依存傾向を抑制することが示された。さらに,解離傾向がTwitter依存傾向に与える影響は虚栄的自己呈示によって媒介されていたが,解離傾向は直接Twitter依存傾向を助長することも明らかとなった。

    【考察】本研究の結果から,個人の精神的健康がTwitter依存に与える影響は,Twitter上の自己呈示によって媒介されることが明らかとなったが,精神的健康からTwitter依存への直接の影響も認められた。今後は縦断的な方法を用いて精神的健康がTwitter上の自己呈示,およびTwitter依存に与える影響を詳細に検討するとともに,実際の活動履歴など,より具体的なネット上の行動面に焦点を当てた方法を用いた調査を行う必要があると考えられる。

資料論文
  • 長谷 守紘, 窪田 由紀
    2017 年 20 巻 1 号 p. 48-57
    発行日: 2017年
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー

    【問題と目的】本研究では,中学校新人教師が直面する生徒指導上の危機と回復のプロセスモデルを作成することによって,中学校新人教師が直面しやすい生徒指導上の危機や回復の過程で有効であったサポートの内容,危機が与えるポジティブな側面を検討する。

    【方法】Z県公立中学校教諭5名を対象として,中学校新人時代に直面した生徒指導上の危機についてインタビュー調査を実施した。分析はKJ法によりカテゴリ化を行い,「中学校新人教師が直面する生徒指導上の危機と回復のプロセスモデル」を作成した。

    【結果】中学校新人教師は問題の及ぼす範囲の狭い危機に直面していたが,その背景には個人や職場内にさまざまなリスク因が存在した。危機からの回復には,職場内の先輩同僚の道具的サポートと同世代同僚の情緒的サポートなどが有効であった。その経験は,キャリア発達上のターニングポイントとなっていた。

    【考察】中学校新人教師が直面する生徒指導上の危機は,危機の及ぼす範囲は狭いものの背景に種々のリスク因を抱えていることから,深刻な状況に陥りかねない。周囲が,バーンアウト寸前に新人教師が出すサポート希求を捉え,危機の状況と危機に対する新人教師の認知に応じて,「タテ」の関係による道具的サポートと「ヨコ」の関係による「情緒的サポート」を織り成すことで有効なサポートとなる。そうして生徒指導上の危機を乗り越えた体験は,教師の生徒指導上の成熟を促進させ,教員文化に内在化される同僚性を育む。今後は,教員同士が相互にサポートし合える環境を整える施策が求められる。

  • 永井 智, 桑原 千明
    2017 年 20 巻 1 号 p. 58-67
    発行日: 2017年
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー

    【問題と目的】ストレスや悩みなどに適切に対処するうえで,援助要請は重要な対処方略の1つである。先行研究では様々な要因が援助要請に影響することが明らかになっているが,パーソナリティ要因と援助要請との関連はほとんど検討されていない。そこで本研究では,成人の愛着が友人に対する援助要請意図に与える影響を検討した。

    【方法】455名の大学生が,援助要請意図,愛着における見捨てられ不安と親密性の回避,悩みの経験,抑うつ,友人サポートを測定する質問紙に回答した。

    【結果】共分散構造分析の結果,見捨てられ不安が,援助要請意図に対して有意な直接効果を示さなかったのに対し,親密性の回避は援助要請意図に対して負の影響を示した。また援助要請意図に対し,見捨てられ不安からは,悩みの経験を媒介した正の間接効果が,親密性の回避からは友人サポートを媒介とした負の間接効果が見られた。

    【考察】愛着を用いて援助要請を説明する場合,説明力は先行研究と比べても高くなっていた。そのため,個人の援助要請を理解する上で愛着に着目することの重要性が示された。

  • 土居 正城, 加藤 哲文
    2017 年 20 巻 1 号 p. 68-78
    発行日: 2017年
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー

    【問題と目的】スクールカウンセラー(以下,「SC」)と教員の連携の質の関連要因に関する検討は不十分である。そこで,本研究では,教員の被援助行動の頻度とSCとの連携の質の関連を検討した。

    【方法】公立小学校1校(以下,「A小学校」)及び公立中学校1校(以下,「B中学校」)において,「SC積極活用プログラム」を実施し,その前後の被援助行動の頻度の変化を検討した。一方,教員とSCの被援助行動におけるすべての会話をその機能によってカテゴリー化し,会話の機能の変化によって,連携行動の段階の変化をとらえた。

    【結果】A小学校では教員の被援助行動の頻度及び連携行動の段階の変化は認められなかった。しかし,B中学校では双方の向上が認められた。

    【考察】教員の被援助行動の頻度とSCとの連携の質には関連がある可能性が示唆された。

ショートレポート
  • 卜部 明
    2017 年 20 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 2017年
    公開日: 2021/04/08
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究は,児童後期から思春期の子どもたちの自尊感情の発達的変化および性差について調べることを目的とした。

    【方法】小学校4年生から中学3年生および高校2年生の750名(男子365名,女子385名)を対象とし,子ども用自尊感情尺度(卜部,2016)を用いて調査した。因子分析の結果得られた2因子(肯定的感情と否定的感情)について,2要因(学校段階×性)の分散分析を行った。

    【結果】以下のような結果が得られた。(a)肯定的感情得点は,小学校から中学校にかけて低下し,中学校と高校で差はなかったが,(b)男子の得点は女子より高かった。(c)否定的感情に関して,男子の得点は,年齢による違いがなかったが,(d)女子の得点は,小学校から中学校にかけて低下し,高校においても同じレベルであった。

    【考察】肯定的感情と否定的感情という2因子によって,子どもたちの自尊感情の発達的変化と性差がより明らかになった。性差に関しては,否定的感情が重要な役割を果たしていることがわかった。これらの変化や違いの理由について考察を行った。

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