システム農学
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22 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
招待論文
  • 牛久保 明邦
    2006 年 22 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2022/03/07
    ジャーナル オープンアクセス

    1960年代に入り、わが国の経済発展は著しいものがあり、これまでの大量生産、大量消費、大量魔棄の社会システムは自然の浄化能力を超え、地球温暖化、有害物質等のさまざまな環境問題を引き起こしている。そこで資源を持たないわが国において、持続可能な循環型社会をできるだけ早く実現することが強く求められている。このような状況下で、2002年12月「バイオマス・ニッポン総合戦略」が閣議決定されるに至った。以下の理由から、バイオマス・ニッポン総合戦略では、バイオマスをエネルギーや製品として活用することを求めている。1) 地球温暖化防止、2) 循環型社会の形成、3) 競争力ある新たな戦略産業の育成、4) 農林漁業、農山漁村の活性化 ここでは、わが国におけるバイオマスの現状、エネルギー及び製品へのバイオマス利活用の現状およびバイオマス・ニッポン総合戦略の目標とそれらの課題について解説した。

  • 後藤 逸男
    2006 年 22 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2022/03/07
    ジャーナル フリー

    わが国では年間2,000万トンに及ぶ生ごみが排出されている。その大部分が焼却あるいは埋め立て処分されている。しかし、最近では生ごみを農業資材としてリサイクルすることに大きな関心が集まっている。生ごみリサイクルといえば堆肥化が最も一般的な活用法であるが、処理に時間を要する、処理過程で悪臭を発するなどの問題点も多い。そこで、本研究では乾燥した生ごみに少量の尿素を添加混合して成型化した生ごみ肥料を開発した。この資材は既存の肥料代替資源となるばかりでなく、土壌から溶脱する硝酸イオンの軽減にも役立つ。

  • 羽賀 清典
    2006 年 22 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2022/03/07
    ジャーナル フリー

    畜産廃棄物のほとんどを家畜ふん尿が占めており、その総排出鼠は年間約9,000万トンに及ぶ。家畜ふん尿は、廃棄物と資源の二面性を持っている。廃棄物として適切な取り扱いを怠ると甚大な環境汚染を生む可能性がある。しかし、いっぽう資源として有効利用できれば、これほど膨大な潜在的価値を持つものはない。家畜ふん尿の資源化方法には、肥料利用、エネルギー利用、飼料利用、その他のいくつかの利用方法がある。現状では堆肥等による肥料利用が主要な資源化方法であり、一部メタン発酵法や燃焼法などによるエネルギー利用が行われている。これから循環型社会を構築する中で、肥料資源やエネルギー資源などへの資源変換技術を駆使することが、畜産廃棄物の環境保全技術につながり、農業の発展にも寄与することが大きい。

  • 新部 昭夫, 福岡 秀也, 加藤 好武, 杉本 隆重, 北村 貞太郎
    2006 年 22 巻 1 号 p. 23-33
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2022/03/07
    ジャーナル フリー

    生物企業という概念は、生物の生産、加工から、集荷、流通、販売及び処理を一体的に経営する企業を意味するが、その全体像は具体的に明確に捉えられていない。そこで本研究では、生物企業の経営活動を業務という要素で捉え、その関係性や因果関係を工学的に解明することを試みた。具体的には、生物企業を「生物の生産、加工、集荷、選別、保管、出荷、運搬、卸売、販売等の全般、更には堆肥生産、廃棄物処理を含めた、ある総括的な単位(経営体、組織体、活動等)」と定義し、システム概念図(構造業務システム)を作成した。システム概念図は生物企業システムの個別業務を長方形のボックスで表し、その連鎖系を図示したものである。そして、関連する構造業務の集まりを「プロセス」という概念で括り、システム全体を①生産・廃棄プロセス、②仲介・処理プロセス、③卸売・販売プロセスの3つのグループに分類した。これらの業務活動には機能的側面が付随しており、これらを機能業務システムとして整理した。この機能業務システムは、生物企業の経営活動から発生する情報処理、経営(狭義)、環境保全(廃棄物処理を含む)の3機能業務が含まれる。本研究では定義した業務システムの有効性を検証するため、野菜生産を中心とする7箇所のJAを事例として取り上げ、生産物の流れを調査した。その結果、取り扱い農産物によって構造業務間の関連や流通経路、流通量に違いが見られたが、その殆どの活動はシステム概念図に含まれるものであり、構造業務システムの有効性が認められた。最後に、構造業務分析と現地調査をもとに野菜の生産から加工、流通、販売、消費、廃棄までの経路を中心にモデリングし、フローダイアグラムとして表した。このフロー図により、野菜を中心とする生物企業システムが対象とする領域を明確にすることができた。

  • -山形県長井市における「レインボープラン」の実践過程を事例として-
    寺内 光宏
    2006 年 22 巻 1 号 p. 35-48
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2022/03/07
    ジャーナル フリー

    環境に負荷を及ぼすことなく、資源の浪費を抑制し、廃棄物の再資源化を図るような循環型社会経済システムの構築が叫ばれている。しかしながら、循環型社会の構築は、社会経済活動全般における人々の意識変化を必要とする。この意識変化は、人々の共通認識として形成されることを必要とする。地域内における有機性資源の再資源化に際しては、「農業」から排出される有機性資源の再資源化に留まらず、「一般家庭」から排出される有機性資源=家庭系食品廃棄物の有効活用に向けたシステムを如何に構築するかといった観点が重要となる。山形県長井市においては、1997(平成9)年以降、「台所と農業をつなぐながい計画ーレインボープラン」の名称で「一般家庭lと「農家」を結ぶ「有機性資源地域内循環システム」が展開されている。山形県長井市における「有機性資源地域内循環システム」は、住民相互の協力の下で、計画当初の安全な農産物の生産という視点に留まらず、地域内における資源循環の観点から「まちづくり」の基調として実践されている。長井市における「有機性資源地域内循環システム」は、「一般家庭」と「農家」の間に、2つの「有機性資源」が循環することにより成立している。「一方の有機性資源の流れ」が「生ごみによる有機性資源の再資源化の展開」であり、「もう一方の有機性資源の流れ」が「生ごみコンポストを利用した『域産域消』農業の展開」と位置づけられる。長井市における「有機性資源地域内循環システム」の実践は、「地域資源循環型まちづくり」に向けての「社会的波及効果」を実現している。さらにこうした「有機性資源地域内循環システム」構築に際しては、啓蒙活動等による「社会的手法」の充実・徹底化が有効である。

研究論文
  • 許 怡, 矢部 和弘, 杉本 隆重
    2006 年 22 巻 1 号 p. 49-57
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2016/06/30
    ジャーナル フリー
    中国・遼寧省は、吉林省、黒龍江省と並び中国の穀倉地帯として有名であり、日本、韓国などの近隣諸国へ食料を輸出するには極めて優位な地理状況にある。そこで本研究では、遼寧省の食料生産・消費の現状からシステムダイナミックス手法を用いて食料需給モデルの構築を行った。構築した食料需給モデルに1978年から2000年までのデータを用いてモデル値と実測値との検証を試みた結果、両者はよく一致した。次に、経済成長の状況を3レベル設定して、食料需給モデルに適用し、2010年までの食料生産量・消費量の関係を求め、食料の輸出可能な推定量を算出した。シミュレーションの結果、穀物、野菜ともに生産量、自給率が向上し、輸出可能量は2010年には2000年の約2倍にまで増加することが明らかとなった。
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