インドシナ半島内陸部に位置するラオスでは天水田や灌漑水田、焼き畑における稲作が広く行われている。メコン川平原を中心に灌漑開発が進められているが、コメ生産量の8 割は天水に依存している。南西モンスーンの影響を受け、5 月から10 月が雨期となり、この間に天水による稲作が行われるが、雨期の開始時期や降水量の年変動が大きく、旱ばつや洪水が生産を不安定化させる大きな要因になっている。そこでまず降水量の地域分布を把握するため、1991 年から2002年の5 月から10 月の日別降水量と緯度・経度情報を有する72 カ所の観測データを用いてそれぞれの月ごとにセミバリオグラムを反映したクリギングによる空間補間を行い、1km メッシュでの月別降水量分布図を作成した。推定された月別降水量を県別に集計し、主成分分析を行った結果、降水量の多寡と季節性を表す第1・第2 主成分が得られ、ラオス中部は多雨前期型、南部は多雨後期型、北部は少雨前期型、西部は少雨後期型に区分された。一方、1991~2002 年の統計データから抽出した雨期作水稲(天水田)・乾期作水稲(灌漑)・陸稲の生産量とそれぞれの対前年比平均値を変量とする主成分分析からはコメの栽培体系と生産の拡大傾向を示す地域区分がなされた。コメの生産量と時期別降水量との相関分析を行い、5・6 月降水量は水稲に対しては正、陸稲に対しては負の相関を示す場合が多い、水稲主産地では9・10 月降水量が多いほど収量は減少する、などの特徴を見出した。さらに、月別降水量から水稲の収穫面積を推定する重回帰式(自由度調整済みR
2=0.9470)を作成し、これを地図演算式として適用することにより、1991 年から2002 年の降雨条件から期待される一人あたりの収穫面積推定図を作成した。
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